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心霊学を研究するに至った動機

吉田作弥

 わたし幼少ようしょうころからキリストきょうまなんだのでわたしこころうちにはキリストの教旨きょうしふか刻印こくいんせられていた。そのゆえもあろうがわたし真神しんじん存在そんざいおよ霊魂れいこん不滅ふめつとにいては以前いぜんから可成かなりにつよ信念しんねんっていた。が、段々だんだん成長せいちょうするにしたがって種々しゅじゅ学理がくり思想しそうせっするにおよび、基督きりすときょう教義きょうぎ疑義ぎぎしょうずるようになった。しかながらそれにもかかわらず、キリストの根本的こんぽんてき教理きょうりおいては、すこしもこれうたがわず、しんそく真神しんじん信念しんねんにはかわりがなかったのである。また基督きりすときょう卓絶たくぜつ高尚こうしょうなる教旨きょうし心服しんぷくしてました。またひとにはかなら霊魂れいこんうものがありて永劫不滅えいごうふめつのものと確信かくしんしていたのである。

 ところわたしは、一ねんばかりまえに、米国べいこくの、ヒスロップ教授きょうじゅひとあらわした「他界たかいとの接触せっしょく」とれいかんする著述ちょじゅつんで、非常ひじょう面白おもしろかんじた。れが現時げんじ心霊学しんれいがく研究けんきゅうするの階梯かいていったのである。いよいよ研究けんきゅうすすむるにしたがって一そう興味きょうみづけられ、そそられたのである。或時あるとき書舗しょほ丸善まるぜん売子うりこが「レーモンド」とほん此頃このごろ非常ひじょう評判ひょうばんでよくれます、とうので、それはいまあるのか、とたずねると、生憎あひにく品切しなぎれですが、とのことであったが。其後そのごもなくわたし知人ちじんからそのほんりることが出来できたが、これまた非常ひじょう面白おもしろいものである。英国えいこく有名ゆうめいなる物理ぶつり学者がくしゃでバーミンガム大学だいがく総長そうちょうをしている、サー、オリバー、ロッジュあらわしたのであるが、神霊しんれいかんする有名ゆうめい著書ちょしょ興味きょうみぶかし ょである。

 戦争せんそうんだレーモンド、ロッジュと青年せいねんが、のこった父親ちちおやたずねてはなしをする、ちち有名ゆうめいなる心霊学しんれいがく研究家けんきゅうかなれば、それをうまくけておたがいに、れい世界せかい実世界じっせかいとの交通こうつうをするのである。なおそれにいて非常ひじょう面白おもしろはなし沢山たくさんかれてある。つまり霊媒れいばいる「思想しそう交換こうかん」で、人間にんげん死後しごける霊魂れいこん不滅ふめつ目前もくぜん実証じっしょうするのである。

 近頃ちかごろ心霊学しんれいがく新科学しんかがくとして、研究けんきゅう方法ほうほう立証りっしょう方法ほうほう科学かがく比較ひかくしていささかもおとるところがない。心霊学しんれいがくは、世間せけんかんがえているようれいかんすることであるからとて一がいに、軽侮けいぶ無視むしすることの出来できないものである。

 心霊学しんれいがく新科学しんかがくは、まえにもったように、大凡おおよそキリストきょうしゅなる教理きょうりと一している。また世界せかいしゅなる宗教しゅうきょうとも一している。この新科学しんかがく宇宙うちゅう支配しはいする真神しんじん観念かんねんけつして背馳はいちするものでない。かみ存在そんざいじつ人間性にんげんせいもとむるところであって、

人間にんげん感情上かんじょうじょう必要ひつえう要求えうきうで、またべての出発点しゅっぱってんとならなければいけない。

 つぎ霊魂れいこん存在そんざいうことにいて、唯物説ゆいぶつせつでは人間にんげんれい独立どくりつ存在そんざい否認ひにんして、れいもの作用さよう身体しんたいとも死滅しめつするとうているが、それにはうしても賛成さんせいすることが出来できない。人間にんげんれいもの集合しゅうごうによりておこるものとはおもわれぬ。ものものれいれいであって、唯物説ゆいぶつせつ主張しゅちょうようれい否認ひにんらるべきものではない。すなわち世界せかい万物ばんぶつ大神霊だいしんれい顕現けんげん(Manifestation)である。すなわちひとれい不滅ふめつである。樹木じゅもくい、動物どうぶつい、みなもの集合しゅうごうして成立せいりつするものである。そしてその物質ぶっしつ分散ぶんさんすれば樹木じゅもく枯死こし動物どうぶつ死亡しぼうとなりその本元ほんげんかえるが、その原子げんしいたっては消滅しょうめつするものではない。物質ぶっしつ不滅ふめつ自然しぜん科学かがくってすで証明しょうめいされているが、霊魂れいこんまた不滅ふめつのものである。それは新科学しんかがくに依って証明しょうめいせられてある。

 一物質ぶっしつりて存在そんざいしたれいは、人体じんたい死亡しぼうするに及んでは霊体れいたいびて永久えいきゅう存在そんざいするものである。すなわち物質ぶっしつ霊魂れいこんとも不滅ふめつである。

 

 わたくしは、その丸善まるぜんれいかんしたほんほとんどつくして、英国えいこく注文ちゅうもんしたほん到来とうらいまっているが、れいかんした研究けんきゅうは、英米えいべいもっとすすんでいるようである。ドイツにもフランスにも相当そうとう研究けんきゅうんでいるが、英米えいべいほどではないようだ。英国えいこくには、「英国えいこく神霊学しんれいがく研究会けんきゅうかい」とうものがあって沢山たくさん学者達がくしゃたちが、各々おのおのその研究けんきゅう発表はっぴょうって、新科学しんかがくため非常ひじょう努力どりょくしている。

 斯如かくのごと新科学しんかがくは、自然しぜん科学かがく精神せいしん科学かがくとも今後こんご世界せかいに一般的ぱんてき敷衍ふえんせらるべき性質せいしつのもので、またそうなるであろう。

(評釈)

 足堂いわく、吉田兄は、四十年前よりの知友である。兄は永く大使として、海外に居られたので、其後そのごう機会が少なかったが、此頃このごろ突然電話をかけて、『今度心霊学の研究に興味を持って来たが、君はこの方面に先輩であると聞いたから、一つ会って語りい』と云うので、久々にあって旧事を語ったり、又心霊学の事にて相談し、『丁度ちょうど兄は今閑散の身の上らしいから、是非ぜひ日本において、この研究者の大家に成ってくれたまえ、僕は今日の日本に其人そのひとの出ん事を望んで居る。君の様な学殖をもっその研究に従事して下さるならば、望んでもない幸である』と云々其後そのご互に語らって居るのであるが、『今はまだまだ僕の研究は発表出来ぬ』と云うのを、強いて頼んで、記者を走せて其緒言を得たのが之である。

 


底本 道会・機関誌 「道」 大正十三年二月号(No.188) 

発行 警醒社書店 1923(大正13)年2月1日

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準じて、底本の旧字表記をあらためました。

※ 入力:いさお      2007年04月28日
※ 公開:新かな版    2007年12月19日


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