霊界通信 小桜姫物語

七十三、参拝者の種類

 神社じんじゃ参拝者さんぱいしゃもうしましても、その種類しゅるいはなかなか沢山たくさんでございます。近年きんねん敬神けいしんねんうすらぎましたせいか、めっきり参拝者さんぱいしゃかずり、また熱心ねっしんさもうすらいだようにかんじられますが、むかしたいそう真剣しんけんかたおおかったものでございます。時勢じせい変化へんかはこちらからるとじつによくわかります。神霊しんれいるか、いかもあやふやな人達ひとたちから、たん形式的けいしきてきあたまげてもらいましても、ドーにも致方いたしかたがございませぬ。神詣かみまうでには矢張やは真心まごころひとつが資本もとででございます。たとえ神社じんじゃへは参詣さんけいせずとも、熱心ねっしんこころねんじてくだされば、ちゃんとこちらへつうずるのでございますから……。

 参拝者さんぱいしゃなかで一ばんにかずおおく、また一ばんにうつくしいのは、矢張やはなん註文ちゅうもんもなしに、御礼おれいらるる方々かたがたでございましょう。『毎日まいにち安泰あんたいくらさせていただきましてまこと難有ありがとうございます。何卒なにとぞ明日あす無事ぶじ息災そくさいすごせますよう……。』むかしはこんなあっさりしたのがたいそうおおかったものでございます。ことわたくしかみまつられました当座とうざは、海嘯つなみたすけられた御礼詣おれいまいりの人々ひとびとにぎわいました。無論むろんあの海嘯つなみ相当そうとう沢山たくさん人命じんめいほろびたのでございますが、心掛こころがけ遺族いぞくけっしてうらみがましいことをもうさず、ぬのもみな寿命じゅみょうであるとあきらめて、こころから御礼おれいべてくれるのでした。わたくしとしてれば、自分じぶんちからひとつでたすけたわけでもないのでございますから、そんなふう御礼おれいわれるとかえってどくでたまらず、一そうれてその人達ひとたち守護しゅごしてげたい気分きぶんになるのでした。

 った御礼おれいまいりにいでおおいのは病気びょうき平癒へいゆ祈願きがん就中なかんずく小供こども病気びょうき平癒へいゆ祈願きがんでございます。母性愛ぼせいあいばかりはこれはまったべつで、あれほどじゅんな、そしてあれほど力強ちからづよいものはめったにほか見当みあたりませぬ。それはじつによくわたくしほうつうじてまいります。――が、いかにたのまれましても人間にんげん寿命じゅみょうばかりはうにもなりませぬ。随分ずいぶん心不乱しんふらんになって神様かみさま御縋おすがりするのでございますが、ぬものは矢張やはんでしまいます。そうした場合ばあい平生へいぜい心懸こころがけのよいものは、『これも因縁いんねんだから致方いたしかたがございませぬ……。』とって、立派りっぱにあきらめてくれますが、なかには随分ずいぶん性質たちのよくないのがないわけでもございません。『あんな神様かみさま駄目だめだ……いくたのんだってっともきはしない……。』そんなことって挨拶あいさつにもないのです。それがまたよくこちらにつうじますので……。矢張やは人物じんぶつ善悪ぜんあくは、うまくった場合ばあいよりもまずった場合ばあいによくわかるようでございます。

 ぎに案外あんがいおおいのはわか男女だんじょ祈願きがん……つまりいた同志どうし是非ぜひわしてほしいとったような祈願きがんでございます。そんなのはとく産土神様うぶすなのかみさまうかがいまして、差支さしつかえのないものにはできるだけはなしまとまるようにほねってやりますが、ひょっとすると、妻子さいしのあるおとこと一しょになりたいとか、また人妻ひとづまはしてくれとか、随分ずいぶんみちならぬ、無理むり註文ちゅうもんもございます。無論むろんわたくしとしてはそんな祈願きがん受附うけつけないばかりか、次第しだいによれば神様かみさま申上もうしあげて懲戒みせしめくだしていただきもします。もぐりの流行神はやりがみなららぬこと、いやしくもただしいかみとしてんな祈願きがんみみかたむけるものは絶対ぜったいいとおもえばよろしいかとぞんじます。

 そのほかには事業じぎょう成功せいこう祈願きがん災難さいなんけの祈願きがんとういろいろございます。これはいずれの神社じんじゃでもおそらく同様どうようかとぞんじます。人間にんげんはどんなにえらくても随分ずいぶん隙間すきまだらけのものであり、また随分ずいぶんよわいものでもあり、平生へいぜいおおきなことをもうして威張いばってりましても、まさかの場合ばあいにはあしはしませぬ。無論むろんかみ援助たすけにもかぎりはありますが、しかしかみ援助たすけがあるのといのとでは、そこにたいへんな相違そういができます。もともと神霊界しんれいかいありての人間界にんげんかいなのでございますから、今更いまさら人間にんげん旋毛つむじげて神様かみさま無視むしするにもおよびますまい。神様かみさまほうではいつもチャーンとお膳立ぜんだてをしてってくださるのでございます。

 それからモーひと申上もうしあげてきたいのは、あの願掛がんがけ……つまり念入ねんいりの祈願きがんでございまして、これはたいていひと寝鎮ねしずまった真夜中まよなかのものとかぎってります。そうした場合ばあいには、むろんわたくしほうでもよく注意ちゅういしてきいてげ、夜中よなかであるからけないなどとはけっしてもうしませぬ。現世げんせでいうなら丁度ちょうど急病人きゅうびょうにんおこされるお医者様いしゃさまったところでございましょうか……。

 まだまだこまかくもうしたら際限さいげんもありませぬが、参拝者さんぱいしゃ種類しゅるいはざっと以上いじょうのようなところでございましょう、これからふたみつわたくしにかけた実例じつれいをおはなししてることにいたしますが、そのまえにちょっと申上もうしあげてきたいのは、それ祈願きがん場合ばあいわたくし気持きもちでございます。ただぼんやりしていたのではもらしがありますので、わたくしあさになればいつもふか統一とういつ状態じょうたいはいり、そしてそのまま御弊ごへいと一しょになってしまうのでございます。そのほう参拝者さんぱいしゃたちこころがずっとよくわかるからでございます。つまりわたくしの二百年間ねんかんのそのそのはいつも御弊ごへいと一たい夜分やぶん参拝者さんぱいしゃ杜絶とだえ時分じぶんになってはじめて自分じぶんかえって御弊ごへいからはなれるとった塩梅あんばいなのでございます。

 ではこれからお約束やくそく実例じつれいうつります……。


七十二、神社の
その日その日

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七十四、命乞い


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