霊界通信 小桜姫物語

四十五、龍神の修行場

 天狗てんぐかい探検たんけんきつづいて、わたくし指導役しどうやくのおじいさんから、龍神りゅうじん修行場しゅぎょうば探検たんけんめいぜられました。――

『いつかは龍宮界りゅうぐうかいへのみちすがら、ちょっと龍神りゅうじん修行場しゅぎょうばをのぞかしたこともあるが、あれではあまりにあっけなかった。もう一そち彼所かしこれてくとしょう。あの修行場しゅぎょうばには一人ひとり老練ろうれん監督者かんとくしゃるから、不審ふしんてんなになりとそれにたずねるがよい。』

『そのおかた矢張やは龍神りゅうじんさんでございますか……。』

無論むろんそうじゃ。が、わし同様どうよう人間にんげん面会めんかいするとき人間にんげん姿すがたばけけてる……。』

 一ったことのある境地ところでございますから、道中どうちゅう見物けんぶつ一切いっさいヌキにして、私達わたくしたちおもいに、あのものすごい龍神りゅうじん湖水こすいほとりしまいました。こちらの世界せかいではおそあるくも、はやあるくも、すべて自分じぶん勝手かってで、そこはまことに便利べんりでございます。

 とると、水辺すいえんの、とある巨大おおきいわうえには六十前後ぜんごゆる、一人ひとり老人ろうじんが、たたずんで私達わたくしたちるのをってりました。服装みなりそのほか大体だいたいわたくし案内役あんないやくのおじいさんにたりったり、ただいくらか肉附にくづきがよく、年輩ねんぱいも二つ三つわかいようにえました。それが監督かんとく龍神りゅうじんさんであることはここにことわるまでもありますまい。

 一おう簡単かんたん挨拶あいさつませてから、わたくし早速さっそくみぎ監督かんとくのおじいさんにはなしかけました。――

修行場しゅぎょうば模様もようはいつか拝見はいけんさせていただきましたので、今日きょうはむしろ龍神りゅうじんさんの生活せいかつにつきて、いろいろちかねるてんうかがいたいのでございますが……。』

なになりとたずねてもらいます。研究けんきゅうめとあれば、わしほうでもそのつもりで、差支さしつかえなきかぎなにけてはなすことにしましょう。龍神りゅうじん世界せかい人間界にんげんかいとは大分だいぶ勝手かってちがうから、訊くほうでもるべくまごつかぬように……。』

 あっさりとさばけた態度たいどで、そうわれましたので、わたくしほうでもすっかり安心あんしんして、おもうかぶまま無遠慮ぶえんりょにいろいろなことをおききしました、そのとき問答もんどう全部ぜんぶをここでおつたえするわけにもまいりねますが、ただあなたがた御参考ごさんこうになりそうな個所ところは、るべくもれなくひろしましょう。

問『龍神りゅうじん子供こども現在げんざいでも矢張やはうまれているのでございますか?』

答『人間にんげん世界せかい子供こどもうまれるように、こちらでもズンズンえます……。』

問『うまれたてのわか龍神りゅうじんからだはどんなからだでございますか?』

答『べつかわったからだでもないが、しかし人間にんげんからいえばつまり一の幽体ゆうたい、もちろん肉眼にくがんることはできぬ。おおきさは普通ふつうじゃくもあろうか……しかし伸縮しんしゅく自由じゆう自在じざいであるから、わばおおきさがっていようなものじゃ……。』

問『へびとはちがいますか?』

答『へびはもともと地上ちじょう下級かきゅう動物どうぶつかたちも、性質せいしつも、資格しかく龍神りゅうじんとはまった別物べつものじゃ。へびがいかに功労こうろうたところで龍神りゅうじんになれるわけのものでない……。』

問『龍神りゅうじんさんは矢張やは人間にんげん御先祖ごせんぞなのでございますか?』

答『左様さよう先祖せんぞといえば先祖せんぞであるが、むし人間にんげん遠祖えんそ人間にんげん創造者つくりぬしったがよいであろう。つまり龍神りゅうじんがそのまま人間にんげん変化へんげしたのではない。龍神りゅうじんがその分霊ぶんれい地上ちじょうくだして、ここに人類じんるいという、ひとつのあたらしい生物いきものつくしたのじゃ。』

問『只今ただいまでも龍神りゅうじんさんはそうったお仕事しごとをなさいますか?』

答『イヤこれは最初さいしょ人類じんるい創造つくときの、ごくとお大古たいこ神業かみわざであって、今日こんにちでは最早もはやその必要ひつようはなくなった。そなたもるとおり人間にんげん男女だんじょ立派りっぱ人間にんげんんでるであろうが……。』

 そうっておじいさんはにっこりともせず、正面しょうめんからわたくしするど一瞥いちべつあたえられました。


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