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(下編) 陸軍士官の地獄めぐり

一 死の前後

 ここに引続ひきつづいて紹介しょうかいすることになりますのは、読者どくしゃがすでにおなじみの無名陸軍士官むめいりくぐんしかんからしゅとして自動書記じどうしょきおくられた霊界通信れいかいつうしんであります。このひと閲歴えつれき大要だいよう上篇じょうへんだいしょう無名むめい陸軍士官りくぐんしかん』とだいするところにべてありますとおり、生前死後せいぜんしごともおもって悪事あくじたけをやりつくし、最後さいご地獄じごくのドンぞこへまでもちて人物じんぶつで、叔父おじさんの生活せいかつ平静高雅へいせいこうがなのにくらべてこれはまた惨絶毒絶さんぜつどくぜつ、一どく竦立よだつようなことばかりつづいてります。あらかじめその覚悟かくごでおみになられることを希望きぼうしておきます。

 最初さいしょ通信つうしんは一九一四ねんがつはじまり、同年どうねんがつ十二にちもって一と完結かんけついたします。書中しょちゅう吾輩わがはい』とあるのはみなこの無名陸軍士官むめいりくぐんしかんのことであると御承知ごしょうちねがいます。──

 

 吾輩わがはい劈頭へきとう肝要かんような二三の事実じじつにつきて説明せつめいくだし、いわゆる地獄じごくとはいかなる性質せいしつのものか、はっきり諸君しょくん諒解りょうかいいてもらいたいとおもいます。(と陸軍士官りくぐんしかんかたす。句調くちょう軍人式ぐんじんしきで、いつもブッキラぼうです)。

 地獄じごく居住きょじゅうする霊魂れいこん種類しゅるい大体だいたいの三種類しゅるいわかれる。

 (一)人間にんげんならび動物どうぶつ霊魂れいこん

 (二)一人体じんたい宿やどったことのない精霊せいれい

 (三)かいから霊魂れいこん

 みぎの三種類しゅるいうちだい二はさらの三つに小別しょうべつすることがきそうにおもう。

 (イ)妖精ようせい──性質たちいもの、わるいもの、ならび善悪両面ぜんあくりょうめんゆうするもの。

 (口)妖魔ようま──悪徳あくとく具象化ぐしょうかせるもの。

 (ハ)変化へんげ──ひと憎念ぞうねんそのより化生かしょうせるもの。

 ところでみぎ妖精ようせいというやつが一ばんおおく、就中なかんずく幽界ゆうかいにはそいつがたいへん跋扈ばっこしてる。大抵たいていみな資質たちがよくないと相場そうばをきめてかかれば間違まちがいはない。ほか化生けしょう活神いきがみとでもいうべきものがおくほうたかところる。それが人間にんげん霊魂れいこんなどと合併がっぺいしてしばしば人事上じんじじょう問題もんだい興味きょうみって大活動だいかつどうる。彼等かれらのあるものは一国民こくみん守護しゅごをつとめ、あるものはそれぞれの社会しゃかい、それぞれの地方ちほう守護しゅごをつとめる。

 あなたがたいくらかがついてられることとおもうが、たとえば英国えいこくを一の国民こくみんとしてかんがえたときにそれは一しゅ特別とくべつ風格ふうかくそなえていて、これ組織そしきするところの個人こじん個人こじん性格せいかくとはまるきり相違そういしてることを発見はっけんするでしょう。この一ても、英国えいこく守護しゅごするところの何者なにものかがべつ存在そんざいすることはたいてい想像そうぞうらるるではありませんか。

 ざっとこれだけのべてけば人間にんげん霊魂以外れいこんいがい霊界れいかい存在物そんざいぶつにつきて多少たしょう観念かんねんられるとおもう。吾輩わがはい現在げんざいかれて半信仰はんしんこう境涯きょうがいなどには格別珍かくべつめずらしいものは見受みうけられないが、うえほうくといろいろある。天使てんしだの、守護神しゅごじんだののなかには人間にんげん霊魂れいこん向上こうじょうしたのもあるが、そうでない別口べつくち沢山居たくさんいる。くち霊魂れいこんなどとっても容易ようい分類ぶんるいきるものではない。

 さてこれから約束通やくそくどお吾輩わがはい前後ぜんご物語ものがたりからはじめるとしましょう。吾輩わがはいがストランドがいをぶらついてときのことであった。一だい自動車じどうしゃ背後うしろからやってて、ひとのことをばしていておまけにからだうえいてった。なかなかねんってる。吾輩わがはい自動車位じどうしゃぐらいにやられるようなおとこではないのだが、そのときとウィスキイをぎてたのでね。ところでへんてこ[#「へんてこ」に傍点]なのはそれからだ。かれたあと吾輩わがはいはすぐむくむくあがった。頭脳あたまがちとへんだ。そのうちさかんなひとだかりがするので、いそいでそのって役場やくばむかった。れい専売品せんばいひん契約証書けいやくしょうしょ調印ちょういんする約束やくそく出来できたからです。

 役場やくば玄関げんかんくと同時どうじ吾輩わがはいをたたいて案内あんないもとめた。おどろいたことにはけて、さっぱりおとがしない。むろん何時いつまでっても返答へんじがない。仕方しかたがないから委細いさいかまわずけてやろうとすると、何時いつにやら自分じぶんからだがスーッと内部なかはいっている。

『オヤオヤオヤオヤ!』とおぼえず吾輩わがはいさけんだ。『今日きょう案外あんがいよいまわっている。んなときには仕事しごとばすほうがいいかもれん。』

 が、すぐまえ階段かいだんがあるので、かまわずそれをのぼって、事務室じむしつをたたいた。しかしここも矢張やはおなことで、からだ内部なかけてしまった。


(上編)叔父さんの住む霊界
「三十三 通信部の解散」

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