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(上編)叔父さんの住む霊界

三十二 戦端開始

 一九一四ねんがつあらわれた叔父おじさんからの通信つうしん。──

私達わしたちできだけ迅速じんそくにこの通信事業つうしんじぎょう完結かんけつすべき必要ひつようせまられている。おまえ病気びょうきめに時日じじつ空費くうひしたことは殘念ざんねんであるが、そのあいだ幽界ゆうかい方面ほうめん多少たしょう秩序ちつじょ回復かいふくしたのはせめてものこころやりじゃ。──とって幽界ゆうかい当分とうぶんまだ混沌状態こんとんじょうたいだっしない。その反動はんどう霊界れいかい方面ほうめんまでもひびいてている。

『いうまでもなく戦争せんそうめにたおれたものの大部分だいぶぶん血気盛けっきさかりの若者わかものであるから、そのちつくきはみな幽界ゆうかいじゃ。目下もっか幽界ゆうかいはいって霊魂れいこんかず雲霞うんかごとく、しかも大抵たいてい急死きゅうしげてるので、いずれもみな憎悪ぞうあくねんゆるものばかり、そのものすごい状態じょうたいじつ想像そうぞうあまりある。おおくのもの自分じぶん自覚じかくさえもなく、周囲しゅうい状況じょうきょう変化へんかしてるのをて、負傷ふしょうめに一頭脳あたまくるってるのだ、くらいかんがえている。

『が、霊界れいかいがこの戦争せんそうめにくる影響えいきょう直接ちょくせつではない。あらたにんだ人達ひとたちすくうべく、力量ちからのあるものがそれぞれ召集令しょうしゅうれいけて幽界ゆうかい方面ほうめん出動しゅつどうすることがこちらの仕事しごとじゃ。すでに無数むすう義勇軍ぎゆうぐん幽界ゆうかいけて進発しんぱつした。目下もっかはその大部分だいぶぶん霊界れいかいうえの二きょうからのみ選抜せんばつされているが、やがて私達わしたち境涯きょうがいからもくに相違そういない。

わしなどはまだまだこのしゅ任務にんむ遂行すいこうする力量ちからとぼしいが、しかし召集令しょうしゅうれいさえくだったら無論むろん出掛でかけてかねばならぬ。しかしんな平和へいわ生活せいかつおくったあとふたた幽界ゆうかい戦禍せんかうちうずもれるのはあま感心かんしんしたことともおもわれない。

『が、戦争せんそうはなしはこれきりにしてくとしよう。私達わしたち全力ぜんりょくげてこの通信つうしん遂行すいこうせねばならぬ。おまえほうでも多分たぶんできるだけ迅速じんそくにその発表はっぴょう着手ちゃくしゅすることとおもう。むろんいますぐにともくまいが、しかしそのうち時期じき到来とうらいするに相違そういない。』

 叔父おじさんからのみぎ通信つうしんうちに、召集令しょうしゅうれいさえかかったら無論むろん幽界ゆうかい出掛でかけてくとありますが、その召集令しょうしゅうれいやくねんのちにかかりました。一九一六ねんがつ初旬しょじゅん、ワアド実弟じっていレックス中尉ちゅうい戦死せんしげるとともに、ワアドただちに霊界れいかい叔父おじさんを訪問ほうもんしてみぎ事実じじつ物語ものがたりました。叔父おじさんはただちに奮起ふんきして幽界ゆうかいおもむき、爾来じらい百方ひゃくほうレックスをたすけてさら精細無比せいさいむひ幽界探検ゆうかいたんけん遂行すいこうすることになるのでありますが、それは別巻べつかんまとめられてこころある人士じんし讃歎さんたんまととなってります。


三十一 欧州の戦雲

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三十三 通信部の解散


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