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(上編)叔父さんの住む霊界

三十 幽界見物

『この連中れんちゅうなんゆめるか、よく注意ちゅういしてるがよい。』

 そう叔父おじさんに注意ちゅういされたので、ワアド早速さっそく一人ひとり婦人ふじん状態じょうたい注視ちゅうししました。

 みぎ婦人ふじん前面ぜんめんには一人ひとり小児こども幻影げんえいただよってましたが、それがきへきへとげるので婦人ふじんわさめざめときながら何所どこまでもいかけました。と、にわかに小児こどもしん幽体ゆうたいあらわれ、同時どうじきの幻影げんえいはめちゃめちゃにこわれました。母親ははおや歓喜かんきこえをあげて両手りょうてひろげてわが愛児あいじ幽体ゆうたいをかきいだき、そのにベタベタとすわんで、なにやらものうさまは地上ちじょうるのとすこしのかわりもありません。みぎ小児こどもおよそ六さいばかりのおとこなのでした。

 ワアド。んだわがゆめってるのでございますね。可哀かわいそうに……。』

 叔父。『それがんだら今度こんど此方こちらのをるがよい。』

 ふたた叔父おじさんにうながされてワアド他方たほうてんずると、そこには三十さい前後ぜんご男子だんし見張みはりてひとるのをっているらしい様子ようす、やがて一人ひとりわかおんなちかづいてまいりました。

『一たいこの連中れんちゅうなんございますか?』とワアドたずねました。『二人ふたりともきて人間にんげんではありませんか?』

 叔父。『この二人ふたりんであるかはわしにもわからない。しかしこのおとこおんなとがふか因縁者いんねんものであることはたしかなものじゃ。二人ふたり地上ちじょうではまだわずにただ幽界ゆうかいだけでっている。二人ふたりはたして地上ちじょうえるものかドーかはわからぬが、是非ぜひこんなのはわしてやりたいものじゃ。──そちらにも一つい男女だんじょる。』

 ワアドてんじてわれた方向ほうこうますと、ここにもわか男女だんじょがうれしそうに双方そうほうからあゆりましたが、ただおんな附近ふきんには一人ひとり老人ろうじん幻影げんえいがフワフワただようてるのです。

 ワアド。『あの老人ろうじんは、あれはたしかに猶太人ジューらしいが、なんめにおんなまとってるのでございましょう?』

 叔父。『あの老人ろうじん金子かねちからであの女子おなご結婚けっこんしたのじゃ。わかおとこおんな実際じっさい恋人こいびとであったが、猶太人ジュー結婚けっこんするにつけておんなほうから拒絶きょぜつしてしまった。』

 まだほかにもいろいろの人達ひとたちがそのへん通過つうかしました。が、一ばんワアドおどろかしたのは同氏どうしちち突如とつじょとしてこのゆめ世界せかいあらわれたことでした。

 ワアド。『やあ、あれは自家うちちちです! んなところへて一たいなにをしてるのでしょう?』

 叔父。『おまえのおとうさんじゃとてここるのになん不思議ふしぎはあるまい。ほか人々ひとびと同様どうようげんゆめ最中さいちゅうなのじゃ。ことによるとおまえることにがつくかもれない。』

 が、先方せんぽうは一しんだれかをさがして様子ようすきもしません。すぐそば通過つうかするときをつけてるとワアド祖父そふ幻影げんえいちち前面ぜんめんただようてるのでした。

 ワアド。ちちはお祖父じいさんのことをかんがえてるのですね。いかがでしょう、何所どこかでえるでしょうか?』

 叔父。『まず駄目だめじゃろうナ。おまえのお祖父じいさんは実務じつむ信仰しんこうとのともなわない境涯きょうがいおさまりかえってるから、めったにここまで出掛でかけてはしまいよ。』

 ワアドちちもなく群衆ぐんしゅうあいだってしまいました。


三十 幽界見物 (一)

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