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(上編)叔父さんの住む霊界

三十 幽界見物

 ワアドたちまつよ力量ちからにつかまれて、グイと虚空こくうきあげられたとおももなく、自分じぶん寝室しんしつもどってました。平常いつもならばそれッきり無意識状態むいしきじょうたいおちいるのですが、このときなにやら勝手かってがちがい、いままでよりもはるかに実質じっしつあるからだつつまれたようながしました。そのくせ自分じぶん肉体にくたい依然いぜんとして寝台しんだいなかねむってるのでした。

 と、すぐ背後うしろ叔父おじさんのこえがするのでかえってますと、はたして叔父おじさんがてはいましたが、ただいつも見慣みなれた叔父おじさんの姿すがたではなく、大変たいへんけてるのが目立めだちました。霊界れいかいとき叔父おじさんは地上ちじょうときよりもずッと若々わかわかしくなってた。ところが今見いまみ叔父おじさんは達者たっしゃらしくはあるが、しかし格別かくべつわかくもない。のいろいろのてんおいてもちょいちょいちがってはいるが、さて何所どことつかまえどころもないのでした。

 叔父おじさんはほほえみながら説明せつめいしました。──

じつはこれがわし本当ほんとう幽体ゆうたいではない。わし幽体ゆうたいは、まえにもったとおり、んでもなく分解ぶんかいしてしまった。仕方しかたがないからわしはフワフワびまわって幽界ゆうかい物質ぶっしつをかきあつめて一わせのからだつくりあげたのじゃ。これでも生前せいぜん姿すがたおもしてるべくたものにしたつもりじゃ。──どりャ一しょ出掛でかけよう。』

 そうって叔父おじさんはワアドり、虚空こくう突破とっぱして、やがてくらくもなく、またあかるくもない、一しゅゆめのような世界せかいあしとどめたのでした。

『ここが幽界ゆうかい夢幻境むげんきょうじゃ。そのうちゆめ地上ちじょう連中れんちゅうがボツボツやってるじゃろう。』

 ワアドはしきりに四周あたり見廻みまわしましたが何時いつまでっても、附近ふきん景色けしきはぼんやりと灰色はいいろきりにとざされて判然はっきりしない。そしてやまだの、たにだの、しろだの、もりだの、湖水こすいだのの所在ありかだけがかろうじてえるにぎない。

 ワアド。随分ずいぶんぼんやりしたところございますね。いつも此所ここうなのですか?』

 叔父。『イヤ此所ここけっしてぼんやりしてわけではない。おまえ霊界れいかいあかりにれっこになってしまったので、ここで調子ちょうしれないのじゃ。あかるいところをらないものにはんなところでもなかなかうつくしくえる。

『一たいこの夢幻境むげんきょうというのは物質界ぶっしつかい非物質界ひぶっしつかいとの中間地帯ちゅうかんちたいで、何方どちら居住者きょじゅうしゃりても、いくらか非実体的ひじったいてきな、物足ものたりないかんじをあたえる。夢幻境むげんきょう組織そしきするところ原質げんしつ非常ひじょう変化性へんかせいびてて、其所そこ出入でいりするものの意志次第いししだい気分次第きぶんしだい勝手かってにいろいろの形態かたちる。永遠不朽えいえんふきゅうかたちみな霊界れいかいほううつり、ここにかたち極度きょくどまぐれな、一時的じてきのものばかりじゃ。──イヤしかしむかうをるがよい。地上ちじょうからのおきゃくさんたちすこした。』

 ほどそういうにも霊魂れいこんむれ此方こちらをさしてただようてる。あとからあとから矢継早やつぎばやにさっさとわき素通すどおりにしてく。なかにはむれさずに一人ひとり二人ふたりぐらいでバラバラになってるのもある。

 ゆめなかにここへ出掛でかけて地上ちじょう霊魂れいこんほかに、折々おりおり本物ほんもの幽界居住者ゆうかいきょじゅうしゃまざってましたが、れば両者りょうしゃ区別くべつはすぐわかるのでした。両者りょうしゃの一ばんいちじるしい相違点そういてんは、地上ちじょうきているものの霊魂れいこんかぎいずれも背後うしろひかりいと引張ひっぱってることで、それいと物質ぶっしつ出来できいととはちがって、いかにまざってももつれるということがない。平気へいきいとをつきぬけてくのでした。

 モひと奇妙きみょう特徴とくちょう彼等かれらおおくがみなをつぶって、夢遊病者むゆうびょうしゃのように自分じぶんまえ両手りょうてしてあるいてることでした。もっとなかにはそんなのばかりもなく、両眼りょうがんをかッと見開みひらき、キョロキョロだれかをさが風情ふぜいのもありました。ときにはまた至極呑気しごくのんきかおをして不思議ふしぎ景色けしきなかをうろつきながら、おりふしあしをとどめて凝乎じっ景色けしきとれるような連中れんちゅうました。

 じつにそれは雑駁ざっぱくをきわめた群衆ぐんしゅうで、おとこあり、おんなあり、老人ろうじんあり、小供こどもあり、また動物どうぶつさえもるのでした。一とう猟犬りょうけんなどはうさぎかげつけると同時どうじ韋駄天いだてんごとくにそのあといかけました。


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