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(上編)叔父さんの住む霊界

二十九 幽界と霊界

 六がつ十五にち月曜げつよう霊夢れいむもなかなか奇抜きばつ有意義ゆういぎなものでした。

 ワアドれいによりて無限むげん空間くうかん通過つうかし、地上ちじょう山川さんせんがやがて霊界れいかいのそれにうつくのをありありとみとめました。

 会見かいけん場所ばしょはいつもの叔父おじさんのへやでした。

 ワアド。幽界ゆうかい居住者きょじゅうしゃ霊界れいかいのそれとのあいだには一たいいかなる区別くわけがありますか? はっきりしたところをうかがございますが……。』

 叔父。『アーおまえいの意味いみはよくわかっている。──幽界ゆうかいではわれわれはある程度迄ていどまで物質的ぶっしつてきで、わば一のきわめて稀薄きはくなる物質的肉体ぶっしつてきにくたいってるのじゃ。むろんそれは地上ちじょうの、あの粗末そまつ原子げんしなどとはだんちがいに精妙霊活せいみょうれいかつ極微ごくび分子ぶんしあつまりじゃが、しかし矢張やはり一の物質ぶっしつには相違そういない。地上ちじょう物質界ぶっしつかい幽界ゆうかいとの関係かんけい固形体こけいたい瓦斯体がすたいとの関係かんけいのようなものじゃ。

みぎ幽体ゆうたいたいへんに稀薄霊妙きはくれいみょうなものであるから、したがって無論むろん善悪ぜんあくともに精神せいしん司配しはいやすい。これはひと人間にんげん幽体ゆうたいかぎらず、家屋かおくでも風景ふうけいでもみなそのとおりじゃ。

しかるに霊界れいかいとなるとモー物質ぶっしつ徹頭徹尾てっとうてつび存在そんざいせぬ。われわれの霊魂れいこんつつむものはただわれわれの「かたち」だけじゃ。現在げんざいまええいずる風景ふうけいなり、建物たてものなりもかつ地上ちじょう存在そんざいしたものの「かたち」にぎない。

したがって地上ちじょう霊視能力れいしのうりょくつものに姿すがたせようとおもえばわれわれは通例つうれい臨時りんじに一の幽体ゆうたいもってわれわれをつつまねばならぬ。同様どうよう普通人ふつうじん肉眼にくがん姿すがたせるには、臨時りんじ物質的肉体ぶっしつてきにくたいつくげ、所謂いわゆるかの物質化現象ぶっしつかげんしょうというやつをおこさねばならない。ここでひと注意ちゅういしてくが世間せけん霊視能力者れいしのうりょくしゃなかには私達わしたち居住きょじゅうするだいかいまで透視とうしるものもある。おまえなどもその一人ひとりじゃ。──が、大概たいがい霊視能力者れいしのうりょくしゃにはこれがきない。きるにしてもわれわれの姿すがた幽体ゆうたいつつんだときほう良好りょうこう成績せいせきげられる。』

 ワアド。ゆめとき私達わたしたち幽界ゆうかいくのですか? それとも霊界れいかいほうですか? それともまたあちこち往来おうらいするのですか?』

 叔父。『イヤゆめほど種類しゅるいおおいものはない。ゆめたん人間にんげん頭脳あたま産物さんぶつぎない。昼間ひるまかんがえたととを夜中よなかにこねかえしたり、またもない空中楼閣くうちゅうろうかく勝手かってきずげたりする。大体だいたい物質的ぶっしつてき出来上できあがった人間にんげんんな性質せいしつゆめたがるが、それははなはくだらない。けっしてそんなゆめいかぶってはけない。

『ところが、ゆめたようにかんがえてながら、そのじつ幽界ゆうかいはいってくものが案外あんがい沢山たくさんある。なかには霊界れいかいまではいってくものもないではない。おまえなどもそのきわめて少数しょうすうなものの一人ひとりじゃが、それができるのはおまえ霊媒的素質れいばいてきそしつってるというだけではない。それより肝要かんようなのはわし霊界れいかいへおまえぶことじゃ。大概たいがいひとにはこの特権とっけんがない。よし霊界れいかいるものがあっても、おまえのようにはっきりした記憶きおくをもたらしてかえるものはほとんどまったい。それがきるのは私達わしたちがおまえたすけるからじゃ。──もっと霊界れいかい経験けいけんもっぱ霊魂れいこん作用さようぞくすることなので、幽界ゆうかい経験けいけんよりも一そう明瞭めいりょうこころやすくはある。幽界ゆうかいというものは地上ちじょう物質界ぶっしつかいと一そう類似るいじして関係上かんけいじょう幽体ゆうたい肉体にくたいとが結合けつごうしたときにごッちゃになってわけわからなくなる。兎角とかく人間にんげん頭脳あたま幽界ゆうかい諸現象しょげんしょう物理的ぶつりてき説明せつめいしようとするのでかえって失策しくじるが、霊界れいかいことになると、あまはなぎて、最初さいしょからさじげてしまって説明せつめいこころみようとしない。

『で、大概たいがい人間にんげん睡眠中すいみんちゅう幽界旅行ゆうかいりょこうをやるものとおもえばよい。そんな場合ばあい幽体ゆうたい半分はんぶん寝呆ねとぼけた恰好かっこうをして幽界ゆうかいへりをぶらぶろうろつきまわる。が、からだむすびつけられてるので、ドーも接触せっしょくする幽界ゆうかい状況じょうきょう本当ほんとうにはまぬらしい。

あまりに物質ぶっしつかぶれのしたものの幽体ゆうたい往々おうおう肉体にくたいかられない。けるにしてもあま遠方えんぽうまでは出掛でかない。

『しかしんな理窟りくつならべてるよりも、実地じっち幽界ゆうかい出掛でかけてって地上ちじょうから出掛でかけてるお客様きゃくさまったほう面白おもしろかろう。』

 ワアド。是非ぜひ見物けんぶつきとうございますね。』

 叔父。『それなら早速さっそく出掛でかけることにしよう。が、幽界ゆうかいくのにはわし姿すがた幽体ゆうたいつつ必要ひつようがある。』

 ワアド。『あなたはそれでよろしいでしょうが、わたしいたしましょう? わたし幽体ゆうたい入用いりようではないでしょうか?』

 叔父。『むろん入用いりようじゃ。一たいおまえ幽体ゆうたい何所どこいてたのじゃ?』

 ワアド。わたしにはわかりませんナ。わたしからだと一しょではないでしょうか?』

 叔父。『こんなことは守護神しゅごじんさまにたずねるにかぎる。』

 そういもおわらず、一じょう光線こうせん叔父おじさんの背後うしろあらわれ、それがだんだんつよくなってくらまんばかり、やがてお馴致なじみ光明赫灼こうみょうかくしゃくたる天使てんし姿すがたになりました。

 ぎん喇叭らっぱたるえた音声おんせいがやがてひびきました。──

地上ちじょうもどってなんじ幽体ゆうたいたずさえてまいれ!』


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