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(上編)叔父さんの住む霊界

二十八 霊界の動物

 ワアド霊界旅行れいかいりょこうはこの前後ぜんごからますますはっきりしたものになり、途中とちゅう光景こうけいまでもよく記憶きおくのこるようになってました。六がつにち霊夢れいむなどもそのひとつであります。

 同氏どうし自分じぶんからだうえにまいあがる。天井てんじょうきぬけて戸外こがいたらしいのに依然いぜんとして寝室しんしつえる。

 そのうちへやようやきりうちって、自分じぶん濛々もうもうたる雲霧うんむなかまえまえへと渦捲うずまきつつあがる。道中どうちゅうはなかなかながい。──やがてきりうみがそれぞれのかたちはじめる。最初さいしょみょう恰好かっこうのものばかりで、あるものは城郭じょうかくごとく、あるものは絶壁ぜっぺきごとく、あるいりゅうあるい、つづいて市街しがいやら、尖塔せんとうやら、円屋根まるやねやらがニョキニョキあらわれる。

 つづいてそれもまた消散しょうさんし、濃霧のうむれあがるととも脚底きゃくていには宏大こうだいなる山河さんがもはるかにあらわれる。最初さいしょはいったのが峨々ががたる連山れんざん不毛ふもう昿野こうや、そしてその前方ぜんぽうには際涯はてしもない一めんくろかべ

 ワアドからだみぎ黒壁くろかべからとおざかるとともに、山河さんが景色けしきやわら次第しだいくわわってて、もりえる、草原くさはらえる。つい日頃ひごろおなじみの、あの夕陽ゆうひにつつまれた風光明媚ふうこうめいび田園でんえんえる。

 そこで精神せいしん叔父おじ校舎こうしゃにそそぐとともに、にわかに速度そくどくわわって、ほとんど一しゅんあいだにそのはやくも叔父おじさんのへやはいってたのでした。

 二人ふたりあいだにはもなくれい問答もんどう開始かいしされました。──

 ワアド。今日きょう動物どうぶつのことにいてうかがいたいとぞんじます。一たいとりなどは生前せいぜんただえさをあさることを仕事しごとにしていますが、霊界こちらてからはなにをしてるのです? 仕事しごとがなくてこまるだろうとおもいますが……。』

 叔父。『さァたいていの動物どうぶつ幽界ゆうかいときにはしきりにまだえさをあさってる。が、しまいにはすこしづつあきれてくるようじゃ。いくらってもってもすべてがかげたいなものでおいしくもなんともない。またべつ必要ひつようもない。この理窟りくつわかってるとたいていの動物どうぶつ霊界れいかいほううつってる。ただドーも肉食動物にくしょくどうぶつほうはいつまでってもこの道理どうりがさっぱりのみめないようじゃ。そして永久えいきゅうとらえることのできぬうさぎ鹿しかあといかけながら、いつまでもいつまでも幽界ゆうかいのこる……。』

 ワアド。人間にんげんなかにもとらえることのできない動物どうぶつをつかまえようとする狩猟狂かりきちがいりはしませんか?』

 叔父。『そりャります。しかしこいつもしまいには莫迦ばか莫迦ばかしくなってしてしまうらしい。もっと生前せいぜん猟夫りょうしであったものは幽界ゆうかいるとあべこべに動物どうぶつからいかけられる。』

 ワアド。『それはまたどういうわけです?』

 叔父。幽界ゆうかいだい一の武器ぶき意志いしよりほかにない。動物どうぶつ撃退げきたいするのにも意志いしちから撃退げきたいするのじゃ。ところが猟夫りょうしなどというものはただ武器ぶきにばかりたよくせがついている。鉄砲てっぽうたない猟夫りょうしほど動物どうぶつ邂逅でくわしたときに意久地いくじのないものはない。ところがあいにく幽界ゆうかいでは猟夫りょうし生前せいぜん自分じぶんころした動物どうぶつときっと邂逅でくわ仕掛しかけに出来できあがっている……。

『ところで霊界れいかい動物どうぶつじゃが、彼等かれら霊界れいかいるのはつまり食慾しょくよく以外いがいなにかの興味きょうみつようになったせいじゃ。しかしながあいだくせ容易よういにぬけきれないもので、モリィなどもときどきほねしくなるようじゃ。丁度ちょうどわしがときどき烟管パイプがこいしくなるようなものでナ……。』

 そうってうちにもモリィは安楽椅子ソファしたからとびしてて、なつかしそうにりながら旧主人きゅうしゅじんのところへちかづきました。


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