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(上編)叔父さんの住む霊界

二十六 無理な注文

 叔父おじさんの病院びょういん視察談しさつだんおわったときに、ワアドきつづいてあたらしい質問しつもんはっしました。

 ワアド、『人間にんげん兎角とかくうたぐりぶかいもので、いくら死後しご世界せかいはなしなどをしてやっても容易ようい信用しんようしてくれません。それにはわたし霊界こちら会見かいけんしたPさん其他そのた身元証明書みもとしょうめいしょったようなものを発表はっぴょうしたらよかろうかとかんがえますが、御意見ごいけんはいかがでござります?』

 叔父。『それはよほどかんがえものじゃとおもうナ。なかには発表はっぴょうして差支さしつかえないのもあるが、また発表はっぴょうしてはかんのもある。Pさんなどのは発表はっぴょうのできないほうじゃ。いつまでも地上ちじょう接触せっしょくたもって通信つうしんをつづけるということはPさんにはむし迷惑めいわくはなしで、幾分いくぶん御当人ごとうにん修行しゅぎょう邪魔じゃまになる。

またPさんは生前せいぜん相当そうとうれているかたじゃったから、しあのかた通信つうしん全部ぜんぶ公表こうひょうするとなると、世間せけんには随分ずいぶん詮議立せんぎだてのきなくち八釜家やかましやおおいから、試験しけん目的もくてきでおまえのところへいろいろの問題もんだいかつむものが沢山たくさんあらわれるに相違そういない。そのさいしPさんがそれ問題もんだいこたえることを承諾しょうだくしたとなるとそれこそ大変たいへんで、すぐそのあとからゾロゾロ質問者しつもんしゃあらわれる。そうなるとPさんは間断かんだんなく質問者しつもんしゃきまわされどおしで、霊界れいかいるとはただばかり、まるきり地上ちじょう俗務ぞくむにかかりりになってらねばなるまい。地上ちじょう束縛そくばくから一はや脱却だっきゃくしたいと希望きぼうしてるものが、あべこべに地上ちじょう人間にんげんしばられてはとてもヤリれない。そのときしPさんが、モーこのうえ質問しつもんにはおうじないとでもおうものなら、世間せけんただちに詐術さじゅつであったとはやてるに相違そういない。──

「これ通信つうしんはPよりはっするものと自称じしょうされる。しかしかれ生時せいじかんする、これしきの簡単かんたんなる質問しつもんにもこたないところをればすこぶ眉唾物まゆつばものわねばなるまい……。」

 まァ大概たいがいこんなことをわれるものと覚悟かくごしてよかりそうじゃ。

大体だいたいわれわれ霊界れいかい居住者きょじゅうしゃにありては、しゅとして霊界れいかいかんする通信つうしんおくることが眼目がんもくで、それをしたからとてすこしも進歩しんぽ妨害ぼうがいにはならない。ところがふたた地上ちじょう逆戻ぎゃくもどりして、以前いぜん地上生活ちじょうせいかつ温習おさらいをやるというのはまったくお門違かどちがいで、そんなことは到底とうていただしい霊魂れいこん承認しょうにんかぎりでない。世間せけん人々ひとびとにこのことわからんのではなはこまる。

『さすがにおまえはよくわれわれを諒解りょうかいし、またわれわれを信用しんようして、やくにもたたぬ、くだらぬ質問しつもんをかけるようなことはせぬ。おまえ生前せいぜんまった未知みちであった人達ひとたち霊魂れいこん霊界れいかい会合かいごうし、それ人達ひとたちくちから直接ちょくせつその生死せいし年月日ねんがっぴやら生前せいぜん閲歴えつれきやらをきかされてうえに、Aさんからは一私事しじかんするMさんへの伝言でんごんさえもたのまれた。最初さいしょそれはなんのことやらおまえにもわからぬことであったが、Mさんにってそのことはなしてるとはじめて要領ようりょうられ、たしかにあれはAさんの霊魂れいこん相違そういないということが判然はっきり証明しょうめいされたのである。こんな次第しだいで、注文ちゅうもん無理むりでないかぎわしはPさんにたのんで、いくらでも証明しょうめいあたえるようにしてあげるが、ただあのかた経歴けいれきかんする一さい公表こうひょうしてくれとはドーしてもたのにくい。かくもそのことはモ一よくかんがえて、Kさんとも相談そうだんしてからにしてもらいたい。大体だいたいこれで事情じじょうはよくわかったとおもうが……。』

 ワアド、『よくわかりましたが、ただドーも残念ざんねんです。しPさんがこれに賛成さんせいして、んな質問しつもんたいしても徹底的てっていてきこたえてくださるということになれば、それッきりで人々ひとびとなやます人生じんせい大問題だいもんだい──死後しご個性こせい存続そんぞくするやいなやということが立派りっぱ解決かいけつされてしまいますのに……。』

 叔父。『イヤそんな必要ひつようまったくないとおもう。頑冥不霊がんめいふれい人物じんぶつなにをしてやっても到底とうてい駄目だめじゃ。けれどももの道理どうりわか人物じんぶつには、死後しご生命せいめい存続そんぞく証明しょうめいすべき材料ざいりょうがすでに十二ぶんおくられてる。私達わしたちおくった通信つうしんだけでも充分じゅうぶんじゃ。なかには多大ただい犠牲ぎせいはらってまでも、懐疑論者かいぎろんしゃ征服せいふくめに全力ぜんりょくげた篤志とくし霊魂れいこんさえもあった。霊界れいかい居住きょじゅうするものの進歩しんぽ阻害そがいすることなどはとんとおかまいなしに、ひッきりなしに無理むり注文ちゅうもんばかりするのは、人間にんげんほうでもとききけがさすぎるではなかろうか?

『イヤ実際じっさいのことをいうと、死後しご生命せいめい存続そんぞくしんずるものはなか案外あんがい多数たすうなのじゃ。しかししんじない人間にんげんなにをしてせても──縦令たとえ屍骸しがいなかからあがってせても矢張やはりしんじはせぬのじゃ。

『この問題もんだいはこれだけにしていて、おまえはモーかえらぬばならぬ。』

 ぎの瞬間しゅんかんにワアドまった意識いしきうしなってしまいました。


二十五 霊界の病院 (下)

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二十七 公園の道草


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