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(上編)叔父さんの住む霊界

二十三 霊界からの伝言

 叔父おじ言葉ことば杜絶とぎれたときにワアドたずねました。──

叔父おじさん、このぎには何所どこへおれくださいます?』

 叔父。わし書斎しょさいれてっておまえをAさんに紹介しょうかいしようとおもうのじゃ。んでもAさんはおまえからだりてMさんに通信つうしんしたいことがあるというのじゃ。それがむと今度こんどれい陸軍士官りくぐんしかんはなしをきかねばならない。いよいよ地獄じごく実地じっち経験譚けいけんだんをするそうナ……。』

 ワアド。『しかし叔父おじさん、わたし霊界れいかい随分ずいぶん永居ながいをしたようです。そろそろ自分じぶんからだもどらないとカアリィがましてわたし気絶きぜつしてるところをつけでもしますと大変たいへんです。』

 叔父。『ナニそんな心配しんぱいは一さい無用むようじゃ。おまえ長時間ちょうじかん霊界れいかいるようにかんがえているかもれないが、地上ちじょう時間じかん霊界れいかい時間じかんとのあいだには何等なんら実際じっさい関係かんけいはない。地上ちじょう時間じかんにすれば、おまえからだけてからまだやっと三十分間ぷんかんにしかならない。ゆっくりうようにかえしてあげるから安心あんしんしてるがい。』

 二人ふたり大学だいがくもんるとみぎれ、とあるアーチをくぐって階段かいだんのぼってきました。それからひとつのへやはいりましたが、それは普通ふつう大学だいがく校舎こうしゃによくるのとおなじようなもので、ただ暖炉だんろ設備せつびのないだけがちがっていました。

 ワアド。みょうなことをうかがいますが、あなたがた矢張やはへや掃除そうじなどをなさいますか。しするなら下僕しもべないとおこまりでございましょう。』

 叔父。霊界ここには塵芥ごみもなければまた人工的じんこうてき暖房だんぼう装置そうちもない。縦令たとえさむいとおもうことがあっても暖炉だんろ使つかわれない。それは霊界れいかい寒暖かんだん無論むろん精神的せいしんてきのものであって物質的ぶっしつてきのものではないからじゃ。したがってここには下男げなん必要ひつようはない。掃除そうじをすべき塵芥ごみもなければ、調理ちょうりすべき食物しょくもつもない。おけにわれわれはねむりもしない。一さい雑務雑用ざつむざつようはわれわれの肉体にくたいともみな消滅しょうめつしてしまっとる。──オオAさんがおでじゃ。おまえ紹介しょうかいしてあげる。』

 ワアドきわめてちっぱけな少年しょうねんはいってたのをてびッくりしました。ただしそのかたには成人おとなあたまだけがのッかってるのです。もっと一寸法師いっすんぼうしのように頭部あたまだけ不釣合ふつりあいおおきいのではなく、ただひげえたり、ませ顔容かおつきをしたりしてるのでした。かお赤味あかみがかった丸顔まるがおで、はな末端はしところ少々しょうしょうあつぼッたく、頭髪かみ茶褐色ちゃかっしょくび、からだ不恰好ぶかっこうなほどでもないが余程よほど肥満ひまんしてほうでした。

 ワアド初対面しょたいめんではあるが、かねて叔父おじつうじてこのひと風評うわさをきいてたので、双方そうほう心置こころおきなくはなみました。

じつは』とAさんがいました。『少々しょうしょうMに伝言でんごんしたいことがありますので、是非ぜひあなたにおにかかりたいとLさんまで申入もうしいれていたのですが……』

『イヤおやす御用ごようで』とワアド愛想あいそうよく『わたしにできることならんなことでもいたします。それはそうとひと霊界れいかいけるあなたの御近況ごきんきょううかがおうではございませんか?』

『ぼつぼつってますがうも進歩しんぽおそいのでよわってます。御承知ごしょうちとお生前せいぜんわたし精神的方面せいしんてきほうめんのことをそッちのけにして、物質的ぶっしつてき享楽きょうらくにばかり一しょう懸命けんめいふけってたものです。それからいろいろの婦人関係ふじんかんけい──あんなこともあまり効益ためにもなっていませんでしたね。』

 んな軽口かるくちをたたいたあとでAはワアドにある一の秘密ひみつ要件ようけんたのんだのですが、むろんそれは徳義上とくぎじょう内容ないよう発表はっぴょうすることはきません。用談ようだんむとAはただちに二人ふたりわかれをげてりました。

 Aの姿すがたえると同時どうじにワアド叔父おじさんにむかっていました。──

『Aさんはかおだけ成人おとなからだはまるで小供こどもございますね。これは精神的方面せいしんてきほうめん全然ぜんぜん閑却かんきゃくしてせいでしょう。』

 叔父。『そうじゃ。──すでにおまえ説明せつめいしてきかせてあるとおりわれわれの霊体れいたい次第しだい次第しだい発達はったつするものじゃ。しそれを地上生活中ちじょうせいかつちゅう発達はったつさせてかないと霊界れいかいてから発達はったつさせねばならない。』

 ワアド。『そうしますと、わたし霊界こちらときには矢張やはわたし霊体れいたいるのでしょうか?』

 叔父。『むろんそうじゃ。』

 ワアド。『そうしますとわたしおおきさはんなものでございます? 非常ひじょうちいさいのですか?』

 叔父。『イヤなかなか発達はったつしてるよ。すッかり成人おとなびて丁年ていねんぐらいのおおきさになってるよ。ずそこいらが丁度ちょうどいいところじゃろうナ。がいして霊体れいたい発達はったつ肉体にくたい発達はったつよりもおそいもので、ドーかするとまるきり発達はったつせぬのもあるナ。──オー陸軍士官りくぐんしかんえた。舞台ぶたいかわって今度こんど地獄じごく物語がたりじゃ……。』

 この陸軍士官りくぐんしかん物語ものがたりべつまとめて発表はっぴょうされてります。


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