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(上編)叔父さんの住む霊界

二十一 霊界の美術と建築

 叔父。『これからモすこほか方面ほうめんのことをおまえ紹介しょうかいしてあげよう。』と叔父おじ言葉ことばをつづけました。『霊界れいかいにはいろいろの美術びじゅつさかえ、また科学かがく発達はったつしてるが、むろんその標準ひょうじゅん地上ちじょうよりもはるかにたかい。絵画かいがから紹介しょうかいすることにしよう。』

 二人ふたり極度きょくど荘厳そうごんな、文芸復興期ぶんげいふっこうきふう建物たてものまえちましたが、それは従来じゅうらいいまかつ地上ちじょう出現しゅつげんしたためしのないものでした。

 叔父。『この建物たてものわし共同きょうどう経営けいえいっているフランスじん設計せっけいしたものじゃ。んな精巧せいこうをきわめたものはとても地上ちじょうてることはきないので、霊界ここてることになったのじゃ。無論むろん人間にんげんりゅうのこぎりかんな使つかってつくったものではない。それは思想しそうそのままのかたち換言かんげんすればかれ自身じしん精神こころ原料げんりょうつくったものなのじゃ。そのてんはモすこきへってからくわしく説明せつめいすることにしよう。』

 二人ふたり建物たてもの内部なかあゆはいりましたが、それは地上ちじょう所謂いわゆる展覧会てんらんかい相当そうとうするもので、ただその配列法はいれつほう地上ちじょうのよりははるかに行届ゆきとどいてりました。

 ワアド。絵画かいが展覧会てんらんかいがあるくらいなら、もちろん博物館はくぶつかんなどもございましょうナ?』

 叔父。『ないこともないがおまえ期待きたいするほど沢山たくさんはない。霊界れいかいでは古代こだい物品ぶっぴんるべくもと建物たてものなかおさめることにしてある。たとえばエジプトの椅子いすならエジプトの宮殿きうでんえつけ、また宝石類ほうせきるいならそのもとの所有者もちぬしまた製作人せいさくにんけさせるのるいじゃ。

霊界れいかいつくった美術品びじゅつひん通常つうじょうその製作者せいさくしゃ所有ものになるが、ただ一美術品びじゅつひん最初さいしょからそれを公開こうかいする目的もくてき製作せいさくにかかる。それがツマリ博物館はくぶつかんおさまるのじゃ。また古代こだい物品ぶっぴんで、品物しなものこわれたがそれをしまってあった建物たてものがまだ地上ちじょう残存ざんぞんしてるのがある。そんな場合ばあいにはみぎ品物しなもの陳列ちんれつするめの小博物館しょうはくぶつかん霊界れいかいもうけられる。

『ともかくもよくこれるがよい。んな高邁こうまい思想しそうはとても地上ちじょう美術家びじゅつか頭脳あたまにはうつらんので霊界れいかいいてあるのじゃ。が、それはむし例外れいがい霊界れいかい美術家びじゅつか大部分だいぶぶん自分じぶん思想しそう地上ちじょう美術家びじゅつかつたえようとしてほねっている。』

 叔父おじさんからそうわれてワアド絵画かいがほう注意ちゅういけることになりましたが、ほど地上ちじょうのものとはまったせんことにし、なんとも名状めいじょうないところが沢山たくさんありました。だい色彩しきさいがとびはなれてうつくしく、しかもそれがすてきによく調和ちょうわれてて、おけにそのなかから一しゅ光線こうせん放散はうさんするのでした。またえがかれた人物じんぶつ容貌ようぼう態度たいど画面がめんからたように活々いきいきしてり、遠近えんきんのけじめもくっきりとして実景じっけいそのまま、しそれ空気くうきいろかたなどの巧妙こうみょう加減かげんときてはしんにふるいつきたいくらい。題材だいざいまたきわめて豊富ほうふで、風景ふうけい肖像しょうぞう劇画等げきがとうなんでもそろっている。──が、就中なかんずくもっと興味きょうみある傑作けっさくは、適当てきとう用語ようごがないから、しばらく『じょう高鳴たかなり』とでもいうべきものを取扱とりあつかったものでした。

 たとえば其所そこに『かみあい』とだいしたひとつの傑作けっさくがありました。ただ一人ひとり天使てんし──それがじつあってたけからず、正義せいぎ同時どうじ慈悲じひをつつめる、にもおどろくべき表情ひょうじょうたたえて、足下あしもと人類じんるいむれ凝乎じっつめてました。ここに不可思議ふかしぎなるはみぎ人類じんるい表現法ひょうげんほうで、それは二種類しゅるいえがけられてました。すなわこう肉体にくたいつつまれた地上ちじょう人々ひとびとおつ肉体にくたいてた幽界ゆうかい人々ひとびとで、そのあいだ区別くべつがいかにもくッきりとしてり、しかも一人ひとり一人ひとり容貌ようぼうが、きてひと同様どうようにそれぞれ特色とくしょくってるのでした。

 が、なにうつくしいとっても、この絵画かいがなかしんおどろくべきは中心ちゅうしん大天使だいてんしで、いかにも『かみあい』という標題ひょうだいにふさわしき空気くうきがその一てんかくなか瀰漫びまんしきっているようにえるのでした。

 二人ふたりはしばらくそれを見物けんぶつしてからやがて会場かいじょうし、とある公園こうえん通過つうかして、展覧会てんらんかいへとはいりました。

 叔父。『ここは彫刻ちょうこく展覧会場てんらんかいじょうじゃ。絵画かいが建築けんちくおなじく、たいていの連中れんちゅう地上ちじょう人間にんげん自分じぶん思想しそうむようにしてるが、一のものはそんなことをせずに自分じぶん作品さくひん此所ここ陳列ちんれつする……。』

 ワアド。『これ人物像じんぶつぞう真実ほんもの大理石だいりせき出来できるのですか? 何所どこからんなものをってるのでしょう?』

 叔父。『イヤまえにもうとおり霊界れいかいでは自分じぶん精神こころ原料げんりょうですべてをつくるのじゃ。大理石だいりせきであろうが、青銅せいどうであろうがのぞどおりのものが勝手かって出来できる。はやはなしがこの銀像ぎんぞうでも、製作者せいさくしゃぎんが一ばん適当てきとうであるとかんがえたので、このとお銀像ぎんぞうになったのじゃ。』

 これ神品しんぴんばかりあつめてある展覧会てんらんかいいくつもいくつも見物けんぶつしてから最後さいごはいってったのは一の公園こうえんでありました。それがまた彫刻物ちょうこくぶつ陳列ちんれつめにもうけられたもので、林間りんかんたくみに配置はいちされた紀念碑きねんひるい細径さいけいおく沸々ふつふつ珠玉しゅぎょくかす噴泉ふんせん数々かずかずとおながめ、なめらかな草原くさばら千態万状せんたいばんじょうくさはな、さてはみずながれ、なんともはや美事みごとなもので、就中なかんずくみずたくみな応用おうようときては素的すてきなもので、それが全体ぜんたい風致ふうち幾段いくだんたせてりました。


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