心霊図書館 ≫「死後の世界」≫ 上編

(上編)叔父さんの住む霊界

二十 インスピレーション

 叔父おじさんのところにはなかなか油断ゆだんのならぬ深味ふかみがあるとったワアド熱心ねっしん追究ついきゅうしました。──

 ワアド。『あなたはいまインスピレーションの本源ほんげん霊界れいかいにあるとッしゃいましたが、それはただ文芸ぶんげい方面ほうめんのものにかぎるのですか? それとも立派りっぱ大発明だいはつめいなどもみな霊界れいかいからるのでしょうか?』

 叔父。『むろん文学ぶんがく美術びじゅつ音楽等おんがくとうかぎらず、機械類きかいるい発明はつめいなども大概たいがい霊界れいかいからるのじゃ。人間にんげんほう受持うけもつものはホンの一小部分しょうぶぶんで、わば霊界れいかい偉大いだいなる思想しそう地上ちじょう生活せいかつにうまく応用おうようするだけ工夫くふうぎない。わし偉大いだいなる思想しそう絶対ぜったい地上ちじょうおい発生はっせいせぬとは断言だんげんしまい。しかしわしはそんな実例じつれいにはひとつもせっしない。とにかくめったにないものとおもえばよかりそうじゃ。

『一たい人間にんげん頭脳あたまなりにぶくてこまるのじゃ。霊界れいかいからいかに卓絶たくぜつした思想しそうおくってても、どうかすると一ばん肝要かんよう部分ぶぶんがさっぱり人間にんげん頭脳あたまみなかったり、またんでもない勘違かんちがいをされたりしてしまう。霊界れいかい最高さいこう大思想だいしそうがそのめにポンチし、オモチャする場合ばあいだけあるかれぬ。こと人間にんげん年齢としをとると物質的ぶっしつてきになりやすく、金満家かねもちになるとそれが一そうひどい。その結果けっか月並つきなみな、くだらない作品さくひんばかりが地上ちじょうえてくのじゃ。

『ドーじゃこの寺院じいん模型もけいるがよい。じつ見事みごとなものではないか! 様式ようしき文芸復興期ぶんげいふっこうきのものであるが、従来じゅうらい地上ちじょうあらわれたいずれの寺院じいんよりも立派りっぱじゃろうがナ。ただわし相棒あいぼう暖房だんぼうだの点灯てんとうだのの観念かんねんとぼしいのでわし目下もっかそれ個所かしょ修正中しゅうせいちゅうじゃ。いずれにしても地上ちじょうではとてもこの真似まねきそうにもない。現代げんだいはいかにも俗悪ぞくあくきわまる時代じだいなので霊界れいかい思想しそう容易よういにそれにつうじない。よし何人だれかの頭脳あたまつうじてたところで実行じっこう機会きかいはめったにない。美術家びじゅつか頭脳あたまくらべると金銭かね連中れんちゅう頭脳あたまは一そう俗悪ぞくあくじゃからナ………。中世ちゅうせい時代じだい立派りっぱ建築物けんちくぶつその出現しゅつげんした所以ゆえんもここにある。中世ちゅうせい人間にんげんほう余程よほど物質ぶっしつかぶれがせず、したがって霊界れいかいのインスピレーションにたいしてはるかに感受性かんじゅせいってたからである。』

 ワアド。『すると地上ちじょう人間にんげん割合わりあいにつまらないことになりますナ。偉大いだいなる思想しそうことごと偉大いだいなる霊魂れいこんからの受売うけうりぎませんから……。』

 叔父。『ところがそれと正反対せいはんたいに、地上ちじょう人間にんげん価値かちかえってそこにある。偉大いだいなる霊感れいかんせっることは、つまりそのひと能力のうりょくが、文芸ぶんげいまた機械きかい方面ほうめんおいて、異常いじょう高邁こうまいであり、優秀ゆうしゅうであることの証拠しょうこである。それはけっして軽視けいしすべきことではない。ここに一人ひとり不道徳ふどうとくで、そしてだらしのない人物じんぶつがあって、大概たいがいことにかけては物質的ぶっしつてきであるようにえても、しそのひとなにひとつでも霊界れいかいからのインスピレーションにれてそれを具体化ぐたいかすることができるとすれば、そのひとはある程度ていどまで霊能れいのう発達はったつしているものと見做みなさればなるまい。』

 ワアド。『しかし思想しそうそのものが人間にんげん頭脳あたま産物さんぶつでなく、霊界れいかい居住者きょじゅうしゃからるのでありますからあなたがたがさっぱりその名誉めいよあずからないというのはいささか不都合ふつごうだとおおもいなさいませんか?』

 叔父。『イヤすこしもそうはおもわん。嫉妬しっとだのんだのという娑婆しゃばくさいかんがえ地獄じごく入口いりぐちいててあって、われわれのあいだにはそんなものは全然ぜんぜん存在そんざいしない。私達わしたちはただ道楽どうらく仕事しごとをするので、財産ざいさんしくなければ名誉めいよらない。自分じぶんちからでこんな立派りっぱなものをつくたということですっかり満足まんぞくしてる。ほかにモひとつの希望のぞみがありとすれば、それは地上ちじょう人達ひとたち手伝てつだいがしてやりたいくらいのものじゃ……。』


二十 インスピレーション (上)

目  次

二十一 霊界の美術と建築


心霊図書館: 連絡先