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(上編)叔父さんの住む霊界

二十 インスピレーション

 三がつ三十にちワアド恍惚こうこつ状態じょうたいおい霊界れいかい叔父おじさんをたずねました。二人ふたりてる場所ばしょはとあるたかおかうえで、眼下がんか叔父おじ校 舎こうしゃとうだの屋根やねだのがえるのでした。

 叔父。うじゃ、今日きょうはおまえ学校がっこう見物けんぶつをさせようとおもうが……。』

 ワアド。至極結構しごくけっこうございますね。』

 二人ふたりおもむろにおか傾斜面けいしゃめんりつつありました。

 ワアド。叔父おじさん、今日きょうわたしカアリィからの伝言ことづてをもってるのです。いままでのあなたのおはなしはすこし堅過かたすぎるから、なん霊界れいかい事情じじょうのあっさりした方面ほうめん──たとえばあなたがたのやってられる道楽どうらく遊芸ゆうげいったような事柄ことがらしらべてもらいたいという注文ちゅうもんなのですが、いかがなものでございましょう? まさかあなたがたとて勉強べんきょうばかりやってらッしゃるわけでもございますまい。』

 叔父。るほどそれもそうじゃ。それなら今日きょうはそちらのほう問題もんだいかたづけることにしよう。もっとあま沢山たくさんありぎて、ホンの一局部きょくぶ瞥見べっけんするだけのことしかできまいがね……。』

 やがて二人ふたり校舎こうしゃもんをくぐり、ひとつの大広間おおひろまはいってきました。

 叔父。『これはわしはいっている倶楽部くらぶたいなところじゃ……。』

 成程なるほど其所そこには多数たすう人達ひとたちあつまって、そのなか幾人いくにんかがしきりに将棋チェスたたかわしてました。

 ワアド。『なかなかドーもさかんですナ。──彼所あそこかたたいへんうまいしますナ。』

 叔父。『あれがラスカァじゃ。おまえおなじように、まだきているくせに、毎晩まいばんここまで出掛でかけて勝負しょうぶっている。』

 ワアド。あまりあのかた腕前うでまえがとびはなれてすぐれてるので、わたしにはとてもおぼれません。霊界ここてさえのみめないくらいですから地上ちじょうもどったら尚更なおさらわすれてしまいそうです。』

 叔父。べつおぼえて必要ひつようすこしもない。霊界れいかい将棋しょうぎってるという事実じじつおぼえてってもらえばそれでよい。』

 もなく二人ふたり其所そこもんをくぐりました。

 叔父。わしにはまだほかにも道楽どうらくがあるから、それをせてあげよう。』

 そうって叔父おじさんはまちとおって、とある街廓スクエーアたが、それは文芸復興期ぶんげいふっこうき様式ようしき出来できているものでした。とあるいえはいして内部なかはいると、其所そこ建築けんちく事務所じむしょで、地上ちじょうのそれのようにすこしもみだしたところがなく、そして図案ずあんよりもむし模型品もけいひん沢山たくさんならんでいました。

 叔父。『これはわしがある一人ひとり人物じんぶつ共同きょうどう経営けいえいして仕事しごとじゃが、生憎あいにく相手あいて目下もっかあるあたらしい研究けんきゅう出張中しゅっちょうちゅうでおまえ紹介しょうかいすることがきない。そのひとは十六世紀せいきすえから十七世紀せいき初期しょきにかけてこのきていたフランスじんでイタリィにもってたことがあるので、文芸復興期ぶんげいふっこうき建築けんちくにかけてはなかなか通暁あかるひとじゃ。ただ排水はいすい工事こうじその近代的きんだいてき設備せつび知識ちしきにとぼしいので、わしがそれてん補充ほじゅうしてやっている。ひとくちにいうとわし相棒あいぼう図案ずあん装飾等そうしょくとう専門せんもんで、わしほう実用じつよう方面ほうめん受持うけもちじゃ。

大体だいたいおい霊界れいかいはあらゆる美術びじゅつ地上ちじょうのもののゆめにもかんがおよばぬほど進歩しんぽしている。とても比較ひかくになりはしない。』

 ワアド。『それにしても、なん目的もくてきんな図案ずあんなどをおつくりになるのです? 霊界れいかいでも建築けんちくるのでございますか?』

 叔父。『ときどきは建築けんちくをせんこともない。しかしおおくの場合ばあいおいてわれわれは地上ちじょう人間にんげんにわれわれの思想しそううつし、物質的ぶっしつてき材料ざいりょう使つかって建築けんちくらせるのじゃ。インスピレーションの本源ほんげんことごと霊界れいかいる。天才てんさい作品さくひんというものはつまりその人物じんぶつ霊媒的れいばいてき能力のうりょく活用かつようして霊界れいかいのものが操縦そうじゅうする結果けっかである。天才てんさい兎角とかくまぐれがおおく、道徳的どうとくてき欠陥けっかんんでるものだが、ようするにそれは彼等かれら霊媒れいばいであるからじゃ。れい感応かんおうすると同時どうじまたわるれい影響えいきょうをもやすい……。』


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