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(上編)叔父さんの住む霊界

十六 星と花

 二がつ二十六にちにはワアド愛嬢あいじょう(ブランシ)がまたもやお祖父じいさんの姿すがたました。時刻じこく午後ごご時頃じごろで、彼女かのじょ母親ははおやのカアリィととも客間きゃくまたのですが、不図ふと窓側まどぎわってくらがりの室内しつないからそら見上みあげると同時どうじさけびました。──

『アレ! お祖父じいさまがそらとおる! っている蝋燭ろうそくひかりほしたいにきらきらする……。ったりたりしていらっしゃる……。モーおへやへもどって御本ごほんにもって勉強べんきょうしていなさる……。』

 それからすぐにまた

『アラお祖父じいさまがまたこちらへいてるわ! アラ背後うしろからちいさいがついてる。ベッティたいだがかみあかいわ。人形にんぎょうってるわ。お祖父じいさまはあのってなんとかっていらっしゃる……。』

 ベッティというのは彼女かのじょ従姉いとこで、そのときさいだったそうです。

 七四十五分頃ふんごろ彼女かのじょははにわったが、そのときまたさけびました。

『ホラあそこにお祖父じいさまがえるでしょう。お祖父じいさまはほしんで花束はなたばたいなものにしていらっしゃるが、きっとほしはなとを間違まちがいてるのだワ……。アラ! あのほし花瓶かびんしてる!』

 するとそれからえて数日すうじつ、三がつばんにワアド霊夢れいむ状態じょうたいおい叔父おじさんとなが会話かいわをまじえました。愛嬢あいじょうほし風評うわさはそのとき自然しぜん話題わだいのぼりました。

 ワアド。『ブランシは先般せんぱんあなたがほしんでるのをたといいますが、そんなことがあったのですか?』

 叔父。わしはなならみますが、ほしみませんよ。──さっするところ霊界れいかいはなほしのようにキラキラひかっているからブランシはそれをほし見違みちがいたに相違そういない。いくらか肉眼にくがん手伝てつだったものとえる……。』

 ワアド。あかかみというのは御存ごぞんじでございますか?』

 叔父。『あれは近頃ちかごろ霊界れいかいたばかりのじゃ。たッた一人ひとりでさびしそうにしてるのがどくでツイ面倒めんどうてやるになってネ。──近頃ちかごろはこちらの女学校じょがっこうかよっている。』

 ワアド。『では霊界れいかいでは男女だんじょ合併がっぺい教育きょういくはせぬのでございますか?』

 叔父。『そういうわけでもない。ある小供達こどもたち合併がっぺいでやっている。るいるいもっあつまるのるいでナ……。』

 ワアド。『あなたは霊界れいかい多数おおぜい婦人ふじんにおいでしたか?』

 叔父。『まだ多数おおぜいにはいません。さきへけばもッと沢山たくさん婦人ふじんわれます。』

 ワアド。『ときに叔父おじさん、霊界れいかいはなってもれはしませんか?』

 叔父。れません。──れるはずがありません。霊界れいかいはなはただかたちじゃ。いかにんでもかたちのこります。つまりえだからってわしうつすまでのはなしじゃ。いてろうが、花瓶かびんしてあろうが、枯死こしするきづかいはまったくありません。』

 ワアド。『めちゃめちゃにきちぎったられるでしょうか?』

 叔父。私達わしたちはそんな乱暴らんぼうなまねはしません。はなはな権能けんのうってます。が、いかにちぎってもくだいてもはな矢張やはりれません。そしてやがてまた結合けつごうします。』

 ワアド。『こいつはカアリィからたのまれた質問しつもんですが、あなたは衣類きものいでほか衣類きものかえることがおできなさいますか? わたし言葉ことば意味いみがおわかりでしょうナ?』

 叔父。『もちろんわかってる。一たいわし衣服きものみなわし意思いしつくったのじゃ。で、わし生前せいぜん姿すがたになって地上ちじょうあらわれようとすれば、すぐに衣服きものはそうかわるのじゃ。生前せいぜんのように衣服きものいでかえるというような面倒めんどう真似まね絶対ぜったいにせぬ。無論むろん私達わしたち衣服きもの何時いつまでってもりきれるうれいはない。自分じぶんでこのままでよいとおもえば何時いつまでもそのままでる。かえようとおもえば即座そくざにかわる。新調しんちょう衣服きもののぞ次第しだい、いつでも出来できる……。』

 ワアド。たいへんどうも都合つごうがよいものですナ。カアリィがきいたらさぞうらやましくおもいましょう。』


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