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(上編)叔父さんの住む霊界

十五 犬の霊魂

 ワアド。『それはそうと叔父おじさん、はなはだつかぬことをうかがいますが、動物どうぶつ霊界れいかいるという以上いじょう、こちらで自家うちのモリイをお見懸みかけになったことはございませんか?』

 モリイはワアド夫妻ふさい愛犬あいけんであったのです。

 叔父。『モリイならちょいちょいわしもとへやってます。わしほかにはここでだれっているものがないとえてね……。それ其所そこた。』

 ワアド。何所どこです? わしにはえませんが……。』

 叔父。『モーじきえる。』

 そうっているうちに、モリイはすぐそばちいさいもりなかからしてました。んだ当座とうざよりかいくらかわかうつくしく、傴僂せむしがすっかりなおってるのをのぞけば、ほかもととおりでした。しばらく叔父おじさんの周囲しゅういにジャれまわ ったあとで、ワアドちかづき、いて昂奮こうふん状態じょうたいでワンワンえました。ワアド生前せいぜんやらせたように後肢あとあしってあるかせたりなんかしました。

 ワアド。しも動物どうぶつがこの状態じょうたい霊界れいかいきてるものとすれば、いよいよ霊界れいかい頂点てっぺんまでのぼりったときには彼等かれらうなるでしょう? 動物どうぶつ矢張やはだいかいはいるのでしょうか?』

 叔父。『それはわし目下もくか研究中けんきゅうちゅうでPさんにも調査ちょうさたのんである。──そのPさんだが、あのひともおまえからだりて自動じどう書記しょきをやりたいとってるからそのうちはじめることにしましょう。』

 ワアド。『あなたはうしてPさんとお知合しりあいになられたのです?』

 叔父。『それはうじゃ。わしねての希望きぼうどおり、しきりに霊界れいかい各境かくきょうこといて研究けんきゅうをすすめてると、あるとき突然とつぜんわしところたずねてたのがPさんであった。Pさんはういうのじゃ。──

わたし伝道でんどう暫時ざんじ地獄じごくってりましたから、地獄じごく事情じじょうならすこしはあなたにおはなしすることがきます……」

『いかにもこちらの思惑おもわくどおりのはなしであるからわしたいへんよろこんだ。だんだんはなしをきいてると、Pさんは地獄じごく学校がっこう先生せんせいとして特派とくはされてたもので、地獄じごくおくほうのことはすこしもらないが、学校がっこうでは随分ずいぶんいろいろの人間にんげんせっしてるのであった。Pさんはくわえた。──

しあなたが、地獄じごく内幕ないまくりたいと思召おぼしめすなら、わたし知人ちじん丁度ちょうどあつらきの人物じんぶつがあります。もと陸軍りくぐん出身しゅっしんで、地獄じごく学校がっこうわたしおしえた生徒せいとですが、モーッつけ霊界こちらあがってまいります。わたしはその監督かんとくめいぜられた関係かんけいがありますから、わたし吩附いいつけならよくきいてくれます。同人どうにんじつおどろくべくつよ人格じんかく所有者しょゆうしゃで、したがってその進歩しんぽ迅速じんそくであります。ちょっと御覧ごらんになるとなりに堕落だらくした悪漢わるもののようにもえますが、中身なかみたいへんよくなってります。はじめてわたし学校がっこうはいって当座とうざ全校中ぜんこうちゅう最不良さいふりょう生徒せいとで、何故なぜんなものが入学にふがくゆるされたかとうたがわれるくらいでしたが、そのズンズン生徒達せいとたちしてきました。」

「してると地獄じごくにも霊界ここおなじように学校がっこうがあるとえますね。」とわしたずねた。

「あることはありますがほとんど比較ひかくにはなりません。地上ちじょうまおせば感化院かんかいん大学だいがくくらい相違そういであります。イヤもっと段違だんちがいかもれません。地獄じごくにはほか幼児達こどもたち学校がっこうもうけてありますが、それはつまり地上ちじょう幼稚園よううちえん相当そうとういたします。もちろん学科がくかちがいますが……。」

『こんな塩梅あんばいにPさんはいろいろのことをわしおしえてくれ、わしからまたまえにそれを通信つうしんしてたのじゃが、そのPさんは御自分ごじぶん守護神しゅごじん何所どこか へれてかれてしまった。んでもうえほうへのぼるめの準備じゅんびにかかったのであるそうな。しかし今後こんごもある程度ていど材料ざいりょうおくってくれるように懇々こんこんたのんで、その手筈てはずにはなってる。

わし目下もくか大学だいがくで、同一どういつ目的もくてき学生達がくせいたちと一しょにせっせと霊界れいかいのある方面ほうめん調査ちょうさをしてるが、ッつけみなまえ通信つうしんしてあげる。──今回こんかいはこれでとくさりつける。なにわしちからりたいこと出来できたらわしことおもって祈願きがんしてもらいたい。わしはコーえてもモー勝手かってべるようになった。』

 おわって叔父おじさんはプイと空中くうちゅうあがり、湖水こすいうえ横断おうだんして姿すがたしてしまった。ワアドはいささかけむりにまかれたていで、湖面こめんむる夕陽ゆうひひかりつめつつただ茫然ぼうぜんとしてさびしく其所そこただづんだのでした。


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