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(上編)叔父さんの住む霊界

十五 犬の霊魂

 二がつ二十三にちばんにワアド霊夢れいむ叔父おじのLにいましたが、その場所ばしょ風光ふうこう絶佳ぜつかなる一つの湖水こすいほとりでした。

 ワアド。叔父おじさん、あなたがた矢張やは家屋かおく内部なかんでられるのですか?』

 叔父。『そりャそうじゃ。──わし目下いま大学だいがく構内こうないんでいる。』

 ワアド。霊界れいかい大学だいがくというのは、地上ちじょう大学だいがくりますか?』

 叔父。わしはいっている大学だいがく校舎こうしゃ牛津オクスフォードのクインス・カレジのもと建物たてものであるらしい。つまり現在げんざい古典式こてんしき建物たてものよりも以前いぜんのものじゃ。』

 ワアド。とき叔父おじさん、わたしちちはあなたの葬式そうしきのあった当日とうじつに、あなたの供養くよういたしましたが、それは霊界れいかいまでつうじましたか?』

 叔父。『ああよくつうました。が、ドーもわしにはそれが葬式そうしき当日とうじつとはおもえなかった。なにやらそのすこ以前いぜんらしくかんじられた。イヤその供養くようほうが、葬式そうしきよりもれだけわしりて難有ありがたいものであったかれない。いやしくもキリスト教徒きょうとたるものが、たん遺骸いがいのみを鄭重ていちよう取扱とりあつかうのははなはだそのない。遺骸いがい何所どこまでってもようするにただの遺骸いがいじゃ。なにをされても無神経むしんけいである。これはんして霊魂れいこんどほしである。かみたすけなしには一こくうかばれない。この霊魂れいこんててくべき理由りゆう何所どこにも見出みいだされない。

『あの時分じぶんわしれいおそろしい呵責かしゃく──。生前せいぜん行為こういが一々自分じぶん眼前がんぜん展開てんかいする、あのおそろしい光景こうけいくるしみぬいている最中さいちゅうであった。その呵責かしゃく現在いまでもまったくないではない。その刑罰けいばつのおかげわしからうじて悔悟かいごみちることがきるのであるが、かくあの時分じぶんわし精神せいしん苦悩なやみは一ととおりではなかった。無論むろん学校がっこうなどへはとてもけない。もだえにもだえ、なやみになやみ、きどころがいのであった。──と、その真最中まっさいちゅうに、一じょう赫灼かくしゃくたる光明こうみょうが、わしなやます夢魔的むまてき幻影げんえいを一消散しょうさんせしめた。そしてみぎ幻影げんえいかわりに髣髴はうふつとしてあらわれたのは一つの寺院じいんではないか。聖壇せいだんうえには蝋燭ろうそくと十字架じかとがせてあり、そのまえには一人ひとりそうる。それがりもなおさずおまえちちで、おけにおまえまでが其所そこひざまづいている。人間にんげんほう二人ふたりぎりじゃが、人間にんげんほかひざまづいてるものも沢山たくさんる……。それが何者なにものであるかはわしにもわからない。が、かく寺院てらに一ぱい、側方そくはう礼拝堂れいはいどうまでも、霊界れいかい参拝者さんぱいしゃでぎッしりつまってたのである。

『この光景こうけいせっしたときわしこころのうれしさ! それはとてもふで言葉ことばあらはしかぎりでない。かずある地上ちじょう人類じんるいなかすくなくともその幾人いくたりかがしんかみしんじてわしめに祈願きがんをささげてくれるのである。その祈祷きとう言葉ことばがどれだけわしむね平和へいわ安息あんそくとをめぐんでくれたことか……。

『が、それよりも一そうわしこころ甚深しんじん感激かんげきあたえたのは、わし先立さきだちて霊界れいかいはいりたるこれいく百の霊魂れいこんたちが、わしめに熱心ねっしん祈祷きとうをささげてくれたことであった。おもうに彼等かれらまたわしのように霊界れいかい険路けんろんで、自己じこ行為こうい幻影げんえいなやまされたにが経験けいけんから、わしの一前進ぜんしんたいしてこころから同情どうじょうせてくれてるのであろう。ああ英国えいこく矛盾みじゆんだらけの不思議ふしぎ国教こくきょう、その裏面りめんにはなんといううつくしいものがひそんでるのであろう! われわれの詩聖しせいテニスンが「アーサーの」をいたときに、かれはたしかに霊界れいかいからのインスピレーションにれてたに相違そういない。「わがたまめにいのれ。」──かれはマロリをしてそうさけばしめてる。』


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