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(上編)叔父さんの住む霊界

十三 自分の葬式に参列

 自動じどう書記しょきはこれからますます佳境かきょうすすみつつあります。──

じつをいうとわしはせっかく自分じぶん葬式そうしきのぞむことはのぞんだが、ただ人々ひとびと邪魔じゃまをしにるようにかんじられてならなかった。こんなくだらないものを見物けんぶつしてるよりは、学校がっこう勉強べんきょうしてほうがよッぽどましだ。──わしはそんなことをかんがえた。するとわし守護神しゅごじんはやくもわし意中いちゅうさっしてぎのようにわしをたしなめられた。──

「いよいよ遺骸いがい土中どちゅううずめられるときには、霊魂れいこんとしてその地上ちじょう生活せいかつ侶伴ともであった肉体にくたい訣別わかれげることが規約おきてになってる。それには相当そうとう理由りゆうがある。たん肉体にくたいたいする執着しゅうちゃく──丁度ちょうど飼犬かいいぬすこぐらいひどわされてもその主人あるじしたうにたる執着しゅうちゃく──のほかに、ぎのような理由りゆうがある。屍体したい周囲しゅういにはつねにさまざまの悪霊あくれいどもがってたかって、なにやらこれにもとめるところがあるものじゃ。屍体したい附着ふちゃくする煩悩ぼんのう名残なごり──悪霊あくれいというものはそれをぎつけてまいるのじゃ。

ときとすれば彼等かれら屍体したいなかから一しゅ物質的ぶっしってき原料げんりょうしにかかり、ひょっとするとそれに成功せいこうする。彼等かれらはその原料げんりょう自己達おのれたち裸体らたいつつむのじゃ。が、それはただ邪悪じゃあく生活せいかつおくった人々ひとびと屍体したいかぎるので、なんじ屍体したいにそんな心配しんぱいがあるのではない。しかしわれわれはそれ悪魔あくま近寄ちかよらぬよう、って監督かんとくをせねばならぬ。

また情誼じょうぎうえからっても、あれほどながらく共同きょうどう生活せいかつおくった侶伴ともを、その安息あんそく場所ばしょおくりとどけるのはただしいみちじゃ。

最後さいごにモ一つ、なんじてた現世げんせい生活せいかつるにらぬこと、またあらたにはいりたる霊界れいかい生活せいかつたのしいこと、──葬式そうしきによりてそれをなんじさとらせたいのである。」

守護神しゅごじんからそういいきかされたので、わしふたた自分じぶんへやもどって遺骸いがいそばすわっていると、もなくおまえがそこにはいってた。おまえはナプキンをけて、しきりにわし死顔しにがおていたがじつ真実ほんとうわしはおまえ正面しょうめんってたのじゃ。わしはおまえたいへんしおれているのをてむしろ意外いがいかんじ、このとお自分じぶん元気げんきにしてるから心配しんぱいしてくれるナ。このわしわからないのかとしきりにんでたのじゃ。

『そのこえがおまえみみはいったのではないかしらと一わしよろこんだ。おまえは一瞬間しゅんかんわしかお直視ちょくししてるかのごとえたからじゃ。が、矢張やはりきこえてはいなかったとえて、おまえはナプキンやらシートやらをもととおりになおして、彼方むこういてへやってしまった。

もなく葬儀屋そうぎや人足にんそくはいってて、かんふためて階下かいかはこんでった。わし行列ぎょうれつあとについて寺院てらった。

かん墓中ぼちゅうおさまり、会葬者かいそうしゃがすっかりってからもわし其所そこにとどまって、墓穴はかあなめらるるのを最後さいごまでった。無論むろんつちがかぶってからもわしにはかつわし容器いれものであった大理石だいりせきだいりせきぞう──自分じぶん屍骸したいがよくえた。わしはモ一それを凝視ぎょうしした。それから守護神しゅごじんほういて、さァおいとましましょうかとった。

『その言葉ことばおわるかおわらぬうちわし自分じぶん学校がっこうもどってたが、そのときわしおぼえず安心あんしん長太息といきをもらしたのである。わし守護神しゅごじんはとおもってぐるりとたがモーかげかたちもない。こんなえば最初さいしょはびッくりしたものだが、この時分じぶんわしはすでにその神変しんぺん不可思議ふかしぎ出入しゆっにう往来おうらいにはれてた。

『すると先生せんせいがやさしく言葉ことばをかけてくれた。──

せきにおきなさい。いま丁度ちょうど質問しつもんが一じゅんんだところです。」

エーッ 質問が一じゅんんだところ………。」わしはそれをきいてあきかえってしまった。「わたし何時間なんじかん地上ちじょうってったようにかんじます。ほど霊界れいかい現界げんかいとの時間じかんには関係かんけいがありませんな!」

「あなたにも霊界れいかい時間じかんのないことがわかりかけたでしょうが……。」

わしふただ同級どうきゅう生徒達せいとたちまわしたが、このときはじめて地上ちじょう人達ひとたちのいかにちいさく、いかに発育はついく不完全ふかんぜんであるかをわし痛感つうかんしたのであった。わし同級生どうきゅうせいかく少年しょうねん姿すがたをしてた。しかるに地上ちじょう人間にんげん大部分だいぶぶんよくよくのあかぼう──ことによるとまだうまれないものさえもあった。ことなにがしだの、なにがしだのの霊魂れいこん姿すがたときてはまこと幼弱ようじゃくきわまるもので、滑稽こっけいであると同時どうじまたどくばんでもあった。かくわしはお前達まえたちったときに、灰色はいいろがかったお前達まえたち肉体にくたいとうしてお前達まえたち霊魂れいこん姿すがた目撃もくげきしたのじゃが、ややもすれば、一ばんおおきな、そして一ばんうるわしい肉体にくたいが一ばんちいさい、一ばん恰好かっこうのわるい霊体れいたいつつんでいるのにはおどろいた。

なにもあれ、わしはお前達まえたち人生じんせいとか浮世うきよとかってから威張いばりをしているところからのがでてしん意義いぎある霊界れいかい学校がっこう生活せいかつもどったときこころ満足まんぞくいまでもわすない。が、同時どうじあたらしい希望きぼうわし胸裡きようりでた。ほかでもない、それはこの事実じじつをおまえをはじめ、人類じんるい全体ぜんたいあまねくらせてやりたいという希望きぼうであった。──これで三十分間ぷんかん休憩きゅうけい……。』


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