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(上編)叔父さんの住む霊界

十二 霊界の学校

 叔父おじさんが霊界れいかい建築物けんちくぶつ見物けんぶつ出掛でかけたという物語ものがたりは、はしなくも前年ぜんねん物故ぶつこしたAという人物じんぶつ死後しご生活せいかつ状態じょうたいあきらかにする端緒たんちよひらきました。

 ワアド。叔父おじさん、あなたは霊界れいかいでそんなに多数たすう建築家けんちくかたち御交際ごこうさいをなさるなら建築家けんちくかのAというおとこにおいにはなられませんでしたか?』

 叔父。『こいつァ意外いがいじゃ! 別荘べっそうことについてわしのことを皮肉ひにくッたのはほかでもない、そのAというおとこじゃ……。』

 ワアド。『まァそうでございましたか。──近頃ちかごろAはんな塩梅あんばいらしてります?』

 叔父。『あのおとこ現在げんざいわし仲間なかまますよ。んでも最初さいしょ霊界こちらたときに半信仰者はんしんこうしゃ部類ぶるい編入へんにゅうされたのでたいへん不平ふへいで、ぼく立派りっぱ信者しんじゃだとって先生せんせいってかかったということじゃ。すると先生せんせいわれたそうじゃ。──

「あなたがしん信者しんじゃならここへははずじゃ。あなたは自分じぶんでは立派りっぱ信者しんじゃおもってたであろうが、しかし信仰しんこうというものはただ口頭くちしんずるのみではいけない。こころから信仰しんこうつかまねばならぬ。しあなたがしん信者しんじゃであったなら、地上ちじょうであんな生活せいかつおくはずがない。自分じぶん信者しんじゃおもってたもので現在げんざい地獄じごくちてるものは沢山たくさんある。しん信仰しんこう実行じっこううえ発揮はっきさるべきである。それでなければまことの信仰しんこうではない。これはかならずしもかみしんずるものつみおかさぬという意味いみではない。信仰しんこうあるものでもおかしたつみめにくるしむこともあるであろう。人間にんげんはいかなる思想しそう、いかなる行為こういたいしても責任せきにんがある。が、いずれにしてもまことの信仰しんこうっというとこが根本こんぽんである。霊界こちらではひとをあざむくことはできない。イヤ自分じぶん自身じしんをもあざむきない。あなたはなかしんじたからそれでこのきょうかれたのだ。すこしも信仰しんこうがなかったなら地獄じごくおくられたであろう。まァせつかく勉強べんきょうなさるがよい……。」

 これにはさすがのAも一ごんもなかったそうじゃ……。』

 ワアド。『いかがでございます、あのおとこ霊界れいかいける進歩しんぽは?』

 叔父。『あまりはやいともわれまいナ。おまえとおり、Aは何分なにぶんにも血気けっきざかりで、狩猟かりだの、さけだの、おんなだの、金儲かねもうけだのという物質的ぶっしってき快楽かいらくとらはれて最中さいちゅうんだものだから現世げんせ執着しゅうちゃくがなかなかれない。むろんあのおとこ地縛ちばく霊魂れいこんではない。地縛ちばく霊魂れいこんなら霊界ここにはられない。──が、ドーモ地上ちじょうがまだいしくてしょうがないようじゃ。ときどき学校がっこうをなまけて地上ちじょうりてって、むかしなじみのおんなやら料理屋りょうりややらをちょいちょいおとずれる模様もようがある。地縛ちばく堕落霊だらくれいみだらな真似まねをしたさに彷徨うろつきまわるのとは大分だいぶわけちがうが、ドーモ旧知きゅうち人物じんぶつ場所ばしょたいする一しゅ愛着あいちゃくのこっているらしい。けっしてるいおとこではないのだからはやくそんな真似まねさえせば進歩しんぽがずッとはやくなる。しかし当人とうにん自身じしんってるとおり、Aはすくなくも三十ねんばかりぬのが早過はやすぎたのかもれん。したがって三十年位ねんぐらい途中とちゅうでまごつかなければならんのじゃろう……。

かくAはおそろしくわかりのよくないおとこで、きわめて簡単かんたんなことでもなかなかめぬようじゃ。んだのはわしよりもずっとはやいがモーわしほうしてしまった。しかし元来がんらい面白おもしろ人物じんぶつなので教場外きょうじょうがいではたいへん人望じんぼうがある。もっともAは霊界れいかい戸外こがい遊戯ゆうぎがないのには余程よほどよわっているらしい。おかしなおとこでこのあいだるべくつまぬのがおくれるほうがいいというのじゃ。何故なぜかとその理由わけいてると、あとから女房にょうぼうされるとしゃくにさわるというのじゃ。

『イヤ今日きょうたいへんながあいだまえきとめた。あま長引ながびくと、おまえ霊界こちらのものにりになるとこまるからこのへんかえって もらうことにしよう……。』


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