心霊図書館 ≫「死後の世界」≫ 上編

(上編)叔父さんの住む霊界

八 叔父の臨終

『が、わし自分じぶん守護神しゅごじんのお姿すがたみとめた瞬間しゅんかんに』と自動じどう書記しょききつづけてります。『わしったへやも、またへやあつまった人達ひとたちたちまけてせるようにおもわれた。そして不図気ふときがついたときには自分じぶんなんともわれない、うつくしき景色けしきなかかれているではないか!

『イヤその景色けしきというのは一しゅ特別とくべつのものじゃった。自分じぶん生前せいぜんかつったことのある名所めいしょ旧蹟きゅうせきらしいところもあるが、同時どうじに一見物けんぶつしたことのないところもある。見渡みわたすかぎりくさしげった蜒々えんえんたる丘陵おかのつづきで、そこにはいろいろの動物どうぶつればまた蝴蝶こちょうなどもっている。あらゆる種類しゅるいはないている。それがただゴチャゴチャと乱雑らんざつならんでるのではなく、みょう調和ちょうわれて不釣合ふつりあいおもむきすこしもない。熱帯産ねったいさん椰子やし英国産えいこくさんかし──そんなものがしも地上ちじょうならんでえていたなら余程よほど不調和ふちょうわかんぜられるであろうが、ここではっとも可笑おかしくおもわれないのが不思議ふしぎじゃった。

『で、わしはここは一たい何所どこかしら? とこころいぶかった。すると、わし守護神しゅごじんはやくもわし意中いちゅうさ っしてわれるのであった。──ここ死後しご世界せかいである。なんじはここに樹木じゅもく動物どうぶつ存在そんざいすることを不思議ふしぎおもうであろうが、霊界れいかいというものはけっして無形むけい世界せかいではない。かつなんじむね宿やどった一さい思想しそうまたかつ地上ちじょう出現しゅっげんした一さい事物じぶつことごと形態けいたいもっ霊界れいかいあらわれてる。霊界れいかいなるものはそうしてつくられ、そうしてえる。今後こんごなんじまなぶべきものは無数むすうにある……。

『そうきいたわしは、はたして一さい思想しそう霊界れいかいあらわれてるかしら? とうたぐった。するとその瞬間しゅんかんいままでうつって全光景ぜんこうけいがぱッとわし眼底がんていからせ、そのかわりに千万せんばん無数むすう幻影げんえいが、東西南北とうざいなんぼくから、さながら悪夢あくむそのままに、ひしひしとわし身辺しんぺんかこんだ。イヤそのときおもさ! くるしさ! 一瞬間しゅんかん以前いぜんには蝴蝶こちょうごとかるかった自分じぶんからだが、たちまち幾千万貫いくせんまんがんともれぬ大重量だいじゅうりょうもと圧縮あっしゅくされるかのごとくにおもわれた。

わし今止いまやむことを幻影げんえいっておくが、当時とうじわし実感じつかんからいえばそれは立派りっぱ実体じったいであった。──わし過去かこ生涯しょうがい全部ぜんぶふたた自分じぶんまえ展開てんかいして実地じっちそのままの活動かつどうかえしつつあるところの一の活動かつどう写真しゃしんであった。

最初さいしょそれ光景こうけいにはまるきり順序じゅんじょがなかった。さながらゆめおなじく、すべてが一眼前がんぜん展開てんかいしたのであった。ああいままでわすれてた、過去かこのさまざまの行為こういふたたびありありとでた瞬間しゅんかんこころ苦痛くつう悔恨かいこん! しかもんな些細こまかなことでもただのひとつとしてはぶかれてぬではないか! せつけられるわしりては、そのあいだじつながながく、さながらいく百千ねんもそうしてかれるようにかんぜられたのであった。

『が、わし未熟みじゅくこころにも最後さいご天来てんらい福音ふくいんひらめいた。わしうまれてはじめてかみいのこころおこしたのである! このときばかりはわし真剣しんけんかみ祈願きがんをささげた。すると、不思議ふしぎなもので、いままでの混沌こんとんたる光景こうけい次第しだい次第しだい秩序ちつじょち、自然しぜん類別るいべつができてくようにえた。大体だいたいおいてそれは年代順ねんだいじゅん排列はいれつされ、たとえばすじ街道かいどうもはるかに何所どこまでもくような塩梅あんばいであった。おそらくその街道かいどうわしすすむにつれて永久えいきゅうきへきへと延長えんちょうし、最後さいごかみ審判さばきにわたっするのであろう。むろんみぎ光景こうけいなかにはわしつかったこころ多少たしょう慰安いあんあたえるものもまざっていた。──ほかでもないそれは、わしかつひとすくった親切しんせつ行為こういまた首尾しゅびよく誘惑ゆうわくしりぞけたときこころよろこびなどであった。かくわしうして、自分じぶんくべき位置いち霊界れいかいてられたのである。』


八 叔父の臨終 (上)

目  次

九 霊界より見た人間の肉体


心霊図書館: 連絡先