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(上編)叔父さんの住む霊界

六 霊界の分野

 叔父おじさんの霊界れいかい説明せつめい中世期ちゅうせいき時代じだい西洋せいよう思想しそう──たとえばダンテのいたところなどを引合ひきあいにしてりますが、これは仏教ぶっきょう思想しそう対照たいしょうしてても大差たいさはないようであります。地獄じごく浄土じょうど極楽ごくらく──その概念がいねんみぎ説明せつめいでほぼ明白めいはくになるかとぞんじます。

 叔父おじさんは言葉ことばをつづけ諄々じゅんじゅんとして地獄じごく意義いぎそのにつきて叔父おじさん一りゅう説明せつめいこころみました。──

わし先刻さっき地獄じごくということば使つかったが、その意義いぎ誤解ごかいされるとこまる。わしはただ「未信者みしんじゃ居住所きょじゅうしょ」いう意味いみにそれをもちいてる。其所そこ霊魂れいこんりて一ばん難所なんしょには相違そういないが、一たんそれをしてしまえば、それからきは坂路さかみちゆるくなる。また煉獄れんごくということば誤解ごかいせぬようにしてもらいたい。煉獄れんごくというのはわれわれの霊魂れいこん附着ふちゃくせる浮世うきよあかのぞ場所ばしょで、苦痛くつうもあるが、同時どうじにまた進歩しんぽするにつれて幸福こうふくともなってる。

 『ところで、ういうとお前達まえたちがびっくりするかもれぬが、じつはわれわれとて矢張やは堕落だらくするおそれ充分じゅうぶんあるのじゃ。すくなくともまえすすむかわりにあと退さがおそれがある。煉獄れんごくというものはけっして安息あんそく逸眠いつみん場所ばしょではない。私達わしたちうえのぼるべき努力どりょくのためにつね忙殺ぼうさつされる。ただしわれわれにはもう色慾しきよく誘惑ゆうわくだけはない。そんなものはすっかりおとしてしまった。よくよくあわれなる地獄じごく居住者きょじゅうしゃのみがその誘惑ゆうわくにかかり、依然いぜんとして煩悩ぼんのう奴隷どれいとなる……。いずくわしいはなしあとべるが……。

『それからおまえに一こと注意ちゅういしておくが、ときとするとおまえはこの霊界れいかい通信つうしん仕事しごといて、つまらないとおもうことがあるかもれぬ。が、こればかりはどうか中止ちゅうしせずにつづけてもらいたい。この仕事しごとわしりてもなかなか一ととおりの骨折ほねおりではない。しかしわし生前せいぜん怠慢たいまんつみつぐのうべくすすんでそれをってる。霊界れいかい通信つうしんはただおまえ利益ためになるばかりではない。世間せけん方々かたがたまたこれによりて多少たしょうまなるところがあろうとおもう。

以上いじょうべたところで、大体だいたいわし目算もくろみわかったとおもうが、かくわし通信つうしんまれるものは、るべく最後さいご結論けつろん後廻あとま わしにして、是非ぜひ種々いろいろ条項くだり比較ひかく対照たいしょうしていただきたい。とくわし通信中つうしんちゅうなにいてないからというので、わしがその事実じじつ否定ひていするのであると早合点はやがてんされては迷惑めいわくである。くち霊界れいかいといっても広大こうだい無辺むへん境域きょういきであるから、いかなる霊魂れいこんにも其中そのなかのホンの一しょう部分ぶぶんよりしかわかりはせぬのじゃ。──今日きょうはこれでおおよそいつくしたつもりじゃが、それともなにかまだ質問しつもんがあるかしら……。』

 ワアド。霊界れいかいひかりだのやみだのがあるものですか?』

 叔父。『おまえおもっているようなひかりだのやみだのはいナ。霊界れいかい物質界ぶっしつかいではないのであるから、したがって物質的ぶっしつてきひかり存在そんざいすべきはずがない。が、一しゅこころやみというようなやみはある。地獄じごく信仰しんこう境地ところであるから、したがって真暗まっくらである。わし境地ところはおまえいま実地じっちせるから、けてるがよい!』

 そうわれると同時どうじに、ワアドには一しゅおだやかな夕陽ゆうひいろうつったのでした。

 叔父。『これがわし世界せかいひかりじゃ。われわれはまった信仰しんこうはいったものごと判然はっきりものることはきない。ただ一すすめばすすむにつれてひかりはだんだんつよくなる。ひかり──しそれをひかりるならば──はすべて自身じしん内部うちにある。今日きょうはこれでわかれる……。』

 叔父おじ姿すがた次第しだいにワアド眼底がんていからえて、やがてただ一人ひとりあとのこされました。


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