心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第五巻

「人は死なぬ」(その四)

――フロレンスマリアット女史の記録から――

粕川 章子

シャワーズ嬢とその守護霊

 霊媒シャワーズ嬢によって亡友ジョンポールスと自分との親交が再びこの世で暖められる様になった事は、既にポールズの話しの中で説いたが、其後そのごシ嬢と自分との間が段々接近するに連れて彼女の守護霊連とも親しくなり、彼等が自分を信頼するの結果、彼女の開く交霊会の成績が自分の出席如何いかによって大差を生ずる迄になった、即ち自分の居る場所で彼女の霊能は強められるのであった。しかして二人一緒に居る時には白昼の交霊意志も持たぬ時でさえ種々の心霊現家が起って驚かされたものである。

 二人並んで御茶を飲んで居る時など不意に二人の間に人の手が現われて手を握ったり足を打ったり、目の前に置かれた菓子皿の上に指丈見えたと思うと、急に皿の中の菓子が消えたり、悪戯のひどい時は、口許まで運ばれた茶碗を傾けて中味を膝の上に零された事もあった。

 シ嬢の守護霊の一人ピーターは自分を霊の仲間扱いにし自分が彼女と一所にキャビネットに留る事を承知する迄になった。

 ある交霊会の時であった、ピーターの云う通りに食堂の一隅に急造した大きな食器戸棚のキャビネットに二人も這入はいった。彼女は椅子にかけ自分はその足許に座して手を彼女の膝の上に置いた。何処からともなく二人の姿が現れて私達の側に立った。床から上る処も天井から下る処も見えなかった、つまり忽然と現われた訳である。この二人は彼女の守護霊のピーターとフロレンス(私の霊児とはどう名異人)であったこの時シャワーズ嬢は失神状態に陥らなかったので私は彼女と此間このあいだ絶えず話しを続けて居たのである。

 やがてピーターはフロレンスを会衆の面前に送り出した幕外で人々に話しかけるフロレンスの声と会衆の問答は手に取る様に聞えて来た。しかしピーターは外へ出様ともせず其侭そのまま私達の処に留って、外側の有様を批評しながら私達のリボンを附換えて見るとか、髪からピンを抜くとか、他愛のない動作をしていたが彼の姿は薄暗闇の中には判然と見る事が出来たのである。其中そのうちにフロレンスが霊力補充のため一寸キャビネット内に戻って来たが、其時そのときなどはこの二人の霊は仝時どうじに私達に語りつ戯むれるのであった。

 ある夕ハイデパーク街のラキシモーア家でシ嬢の交霊会を催した。其時そのとき出現したこのフロレンスの活躍は目覚しいものであった。彼女は可成かなり長い間明るい客室内で会衆の間を歩き廻った後、ピアノの前に座して霊界の言葉で綴られた歌を弾きながら唄って一同に聴かせたが、彼女の様子が霊媒にあまりよく似通っているので、二三の人々がそうした批評をした。この事が気に懸ったのか彼女はランプを取寄せてそのれを私に渡し自分に随って霊媒を見に来よとの事であった。

 フロレンスに続いてキャビネットとなっていた客間の後室に入って肱掛椅子に座したシ嬢の姿を見た時私は愕然とした彼女は服装を換え霊の姿を装ふて人の前に出るという疑念を挟まれざる様自分では着るに困難な、身体にキチッとあった背中合せの黒いビロードの服に沢山のボタンで締め上げた長靴を穿いて居たが、その身体は一見ほとんど平常の半ば程の大さに縮少しその巾狭な着物さえダブダブに垂れ下って居ったのである。両腕が失くなった様に思われたので手を入れて探った処があたかも小見の腕の如く細く小さく成って居た事を発見した丁度肘の辺へ指先が来て仕舞ったのだ。おなじく足先も縮少して長靴の下半は空となって居た。失神中異常な生理的変化を受けた彼女は丁度この時五六才の小児の大きさに成っていた。手足は氷の如くひややかであるのにその額は火の様に燃え乾き脈搏は高調し顎からは水か汗が滴って胸から下をグッショリと濡していたのであった。呆然としていた私の耳にフロレンスは囁いた

「あなたは今見たままを人達に話して下さるでしょうね」

 其後そのごこのシ嬢の守護霊フロレンスが再びキャビネット内において霊媒の肉体が異常に小さくなった処を私に示した時以下のごとき説明を与えた、

「ローシーの体は今平常の半分程の大きさに減ってます、私は自分のこの体をローシーから借りたこの半分の体力と会衆の人達から借集める力とで造り上げるのです。ですから若し貴女が私を捕えれば、それは即ちローシーの半分を掴んだと云う事にもなるのです、それ故若し私が誰れかにシッカリ捕えられた結果、ローシーに借りた力を完全に戻す事が出来なければ、ローシーの命を奪う事になるのです、従って私達物質化して現れた霊体に激動を受けた場合にも霊媒の肉体に大傷害が起るのみでない、それを狂者とする事もありますよ、霊が使った霊媒の身体や脳の分子が元の処に戻る前に傷ついてしまう時は、これは当然の結果です」

 霊媒フロレンス・クック嬢の守霊ケーテー・キングが出現中無思慮な人達のために暴力で捕えられた時、其人達そのひとたちは霊肉共に重傷を負うたクック嬢を抑附けていた事になったという事はよく人の知る処であるこれがためケーテー・キングの真偽を疑う人もあるが、その理由は今フロレンスの云うた通りで、例令、どう一人を捕えている結果に成ろうとも、霊媒とその守霊には全く別人であるので、ケーテー・キングに就ては其人そのひとと失神中のクック嬢を間にして相対した経験を持つ私は絶対にその存在を信じて疑わない者である。


ジョン・ポールス

(捜索中の資料あり)

目  次

ウィリアム・エグリントン氏の霊能


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第五巻第七号

発行: 1927(昭和3)年7月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 訳者・粕川章子氏の著作権は残存していますが、当サイトは御遺族の許可を得て公開しています。

※ 入力:いさお      2009年1月24日

※ 公開:新かな版    2009年6月21日


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