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ゴシップ

浅野憑虚

□近頃のヴァリアンティン

 ジョルジ・ヴァリアンティンが直接談話の霊媒として現在英米間の人気を集めつつあることは皆さまが先刻御承知の通りでありますが、近着の「オッカルト・レヴュー」を繙いて見るとジェーキン氏の実験記事が載せてありますので、それを抄訳してお目にかけます。

 ヴァリアンティンが紐育ニューヨークのキアノン判事の宅で実験会を催したのは昨年末のことでしたところが空中から列席者の誰にも判らぬ言葉を喋り出したので、ワイマント博士を呼んで右の言葉の鑑定をして貰うことになった。ワイマント博士は有名な東洋語学者で三十ヶ国の言語に通じ、各所の大学で日本語や支那語の講師に依まれて居る人なのです。

 最初の実験に空中から喋り出したのはイタリア語であったが、やがて数分間の休止の後に俄然として支那語が聞え出した。それは普通の支那語でなく、頗る古典的の優雅高尚なものであったので博士も事の意外なるに驚き右の声に向って、「あなたはどなたか?」と訊ねると「自分は孔子である」との答、それから数回にわたりて孔子との問答が交換され、詩経の難解の文句につきて孔子の霊からくわしく説明をきかされるというような破天荒の現象が起ったのでした。ジェーキン氏は右につきて斯く附記して居る。

「私はヴァリアンティンを熟知して居るが彼は顕在意識的にも又潜在意識的にも古代支那語の知識は絶無である。彼の実験会の席上では空中から支那語の外にポルトガル語、バスク語、日本語、アラビア語、インド語、スペーン語、ドイツ語、ロシア語等も聞えるが、ヴァリアンティン自身はそれ等の国語の只一つをも読むことも語ることもできない。若しもこれが潜在意識の結果であるというなら、潜在意識というものは要するに霊魂の世界と同一義で、あらねばならぬ。何となれば其所そこには活きた記憶が残り、又活きた思考力と個性とが残って居るから……。詭弁や想像で何と解釈を加えて見たところが事実は依然として残って居る。空中から世界各国の死者の声が聞こえるという事実は何と言っても取り消せない。」

 以上はすでに本誌読者も周知の事柄で別に耳新らしいことではありませんが、近頃のヴァリアンティンには他の心霊現象が伴い、死者の霊魂がときどき品物を携えて来たり、又直接作画を試みたりするそうで、これは一段の進歩と言わねばなりません。後者の実験記事を紹介すると、「やがてわれわれの背後の卓子の上で其所そこに置いてある紙片がガサガサ音を立て始めた。無論それはヴァリアンティンの仕業ではない、彼の位置はわれわれの前面にあるので、若し卓子に手を延ばそうとすればすくなくとも二人の列席者の中間に割り込む必要があるのである。やがて鉛筆で卓子をトンと突く音が聞え、それから二三分間の沈黙が続いた後で紙が引裂かるる音が聞え、何やら重いものがドシンと床上に落下したのであった。やがて実験会を閉じ、電灯をつけて見ると、床上に落ちて居るのは電話用の剥取帖で、その一枚が剥ぎ取られ、それにはすてきに見事な東洋美人の絵が描いてあった。その美人はドーやら日本人らしかった……」。

 おロンドンでは、ヴァリアンティンの実験室内に微音器マイクルフォーンを据えつけ、それを電話線でコロムビア蓄音機会社に連結し、拡声器を用いて、空中から起った談話を音譜に収めることに成功したそうです。これに類した事はゴライヤー嬢の実験に際しかつてクローフォード博士によりても試みられましたが、当時に比して機械の方が進歩して居る丈一層面白い成績を挙げ得たことでしょう。

□近頃の瀧川君

(三、六、四)


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第五巻第七号

発行: 1927(昭和3)年7月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 入力:いさお      2009年4月12日

※ 公開:新かな版    2009年5月20日


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