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思想壇

「心霊研究と新宗教」を読む

静響生

 本書はず物質文明の由って来るところより、その弊害の及ぶところを論じ、これに代るにはどうしても精神文明を以てせねばならぬことをあきらかにせんとした。その精神文明は是非とも宗教によるにあらざれば到達し得ベからざることを示し、その宗教は在来既成の宗教が心霊に無開心であるごときものでは到底駄目であるから、ず以て心霊に眼ざめなければならぬとし、強くそれを主張せるは、極めて適切な見解たるを失わない。しかして心霊の一端に触れたほどの人士ならば、恐らく何人にも異存ないところであろう。

 続いて心霊の如何なるものであるかをあきらかにするため、所謂心霊なるものについての実験記録を一と通り採録して、その超物理的現象が物質論者が迷信と妄断するごときものにあらざることを力説して居るのも、また首肯さるベき事である。但し、心霊なるものに始めて直面せる士が、本書採録の心霊事実のみを以てはたして能くそれを納得し得る程度に達し得るや否やは疑問である。もっとも心霊事実に接せざるものに、単に文字上の智識のみを以て諒解せしめんとするは難事であるベきが故に、本書の目的からは、その一と通りの採録を以て足れりとして置くのも強ち不可なる所以ゆえんとはならぬであろう

 既成宗教なるものは、一霊媒たる教祖の霊的通信が、無上の権威として渇仰されるところより起る。故にそのいずれもが必ず一方に偏するものとなることは免れ得ざる数となる。我日本には外来の宗教を除けば、所謂教祖なるものが無ぐ、従って経典様のものなきことはむしろ当然の真理であるのだが、宗教には教祖が附き物の如くなったことは、確かにその堕落の一歩であらねばならない。本書においこれを指摘し居ることは、その卓見たることを見るに足る。

 既成宗教の弊害について、本書の指摘するところは首肯するに足る。しかして新宗教は神辺であるベきことを提唱せるはなりとするも、神道は動もすれば祓ひ玉へ清め玉へより外なきものと誤解せらるる憂がある。祓ひ玉へ清め玉への神道は、蓋し伊邪那岐命の禊祓より出発するものであるが、禊祓以前において我古典には宇宙の大原則が啓示されてあるから、所謂神道ではそれに触れ得ないものとなる。で、私は別に宗教などということを止めて、心霊学そのままなる、我古典を、宗教、攻治、道徳一切の基本原則とするの可なるを覚ゆるものである。宗教だ政治だ、道徳だと区別するところに、全一としての欠陥が生ずることになる。宗教をいわずして宗教其中そのうちに在り、攻治をいわずして政治その裡に存し、道徳をいわずして道徳その内に含まるるものでなければならない。それについて我古典程妙味を存するものはないと思う。我古典については別の攻究によることとするも、その無規約的の規約は各人相応の理解を妨げず、深き者には益々深く、浅き者には浅くて済む程の記載となって居るから、宗教なる名称が動もすれば誤解を招き易いのを避けて、これを一般に推奨することにしてはどうかと思う。

 神官僧侶などと称するものは、一面においては霊媒的行為を為し得るものでなくてはならない。神官僧侶が神人交通の媒介を為し得ずしてその職に在るは、外国語を知らずして通弁を業とせんとするにも等しき行為となる。この意味からしても、現在の神官僧侶の大多数は無意義の存在となることであろう。本書において神官僧侶の存在の意義について言及せられたることは、如上の意味からではなかったが、亦以またもって傾聴するに足るものがある

 それから之はホンの一些事であるが、「東洋においては君子はその独を慎むなど云うて、独善主義が道徳に合するものの如くに思惟せられて居るが云々」とあるは、恐らく何等かの誤解であろうと思う。その独を慎むとは、他の目睹もくとせざるところでもいやしくもせずという意味で、それには心霊の見通し、神の照覧ということが言外に含まれて居るにあらざれば、到底行わるベくもない。しかるに教義の性質上心霊と神とを直言せずに、独を慎めと教えたものであって、決して独善主義からではないということを弁じて置くのも、強ち無用でもあるまい。

 これを要するに、心霊の実在を基礎として立つにあらざれば、如何なる宗教も、学問も、政治も、道徳も、その他一切のもの尽く沙上楼閣となり、何時まで経ってもたおれては起り、起りては復仆またたおるるという愚を繰り返し、人類を紛乱迷没の裡に彷徨せしむるより外はないであろう。人類が心霊に眼ざめること一日早ければ一日の徳あることは、最早断じて疑を挾むの余地がない程になった。その第一の警鐘として、本書を世に薦めても、少しの不安を感じないものであること丈は請合われる。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第五巻第二号

発行: 1927(昭和3)年2月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 入力:いさお      2009年3月1日

※ 公開:新かな版    2009年3月3日


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