心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第五巻

ゴシップ

淺野 憑虚

◇写真の鑑定

 北米心霊研究協会の審査係ハアリィ・プライス氏の近頃の活動は素晴らしいもので欧州全土を股にかけ、さかんに実験や講演を行って居ますが、この人の取扱った霊媒の中にフランスのラプラス嬢というのがあります。まだ二十台の処女ですが、彼女の婚約者が前年戦死してからゆくりなくも一種の霊能を発揮しついにオスティ博士によりて推薦さるるに至りました。プライス氏の実験も同博士の客間で行われれのでした。

 詳しい話はすべて省いて、ラプラス嬢が一人の少女の写真を手掛りに、その身上判断を試みたこと丈紹介します。右の写真はプライス氏がその日たまたま懐中して居たもので、撮影したのは彼女が十七歳の時でしたが、写っている姿はそのよりも若く、せいぜい十五歳位にしか見えませんでした。勿論むろん霊媒の方では少女の住所も姓名も何もかも一切知らず、ただ右の半身像を見つめた丈であります。

 しばらくして霊媒の下した鑑定は左のごときものでした。――

 (一) この写真の本人と貴下(プライス氏)とは非常な仲好しです。あるいは親類関係があるかも知れません。兎に角あなたはこの方に大きな愛情をって居られます。

 (二) この方は特に音楽の才能があります

 (三) 素晴らしい体格をして居まして、顔は桃色、眼の色が特に美しい。頭髪は黄金色です。

 (四) 小供こどもの時代には弱い方でした。

 (五) 性質は神経質ですが、いざという場合にはよく落付いて居り、非常によく調和の取れた心を有って居ます。決断は迅い……。

 (六) 直覚的で非常に元気がよい。同情心にも富み、他から可愛がられ、又読書が好きです。彼女に逢ったものは誰でも懐しい少女だと思います。人に対して不親切だの、無慈悲だのはとてもきない資質たちで、何人にも優さしい言葉を掛け、傷けられてもすぐにその罪を恕します。

 (七) この方は旅行が好きで広く世界を歩かるるでしょう。何やらは Ralf-Walton-Walter という名を感じます。

 (八) 趣味は美術的で静かなる場所が好きです。快活な性質で可愛らしいが、しかししっかりして居ます。

 (九) 四肢は挫き易い方で、くろぶしが弱い。

 (十) この方は取りわけお父様の秘蔵兒です。

 (十一) この方はイギリス人ですか、名前は Mary です、アレ、モ一つMで始まった別の名を有りて居ります。年齢は只今二十一歳です。

 (十二) この方の将来は幸福です。

 (十三) この方は田舎に住んで居ります。近頃お住居をかえました。

 (十四) お父様に何か近頃心配事がありました。

 (十五) Clark という名が感じます。

 (十六) 私の眼には所中 Mary 又は Marguelite という名が映ります。

 (十七) 私の眼には一人の霊魂の姿が見えます。その名は何やら 又は "Ness" という音を含んで居ます。近頃死んだ方で始絡この方に附いて居ます。

 (十八) 家庭から離れた学校で教育されました。

 (十九) 一九二八年はこの人に取って結構な年です。

 (二十) この方は特に犬がお好きです。

 鑑定はざっとう言ったものですが、ブライス氏はこれにつきて、番号順に註釈を施してありますからそれを左に記します。――

 (一) 正確に的中した。私と彼女の家との間に親類関係はないが、ほとんど自分の家同様に懇意な間柄である。

 (二) 彼女は特に音楽家としての教養はないが、音楽は大好きである。家にはいろいろの楽器が一ぱいである。

 (三) 正格な人相書であるが、しかしこれは写真を見て居るから割引の要がある。

 (四) これは当らない。格別小供こどもの時に弱い方ではなかった。

 (五) 実によく彼女の性格を現わして居るが、ただ自分達は彼女を神経質とは考えて居ない。

 (六) すっかり的中して居るが、現代の教養ある少女達は大抵その式の資格を有っているから、さまで有力な手懸りとは言われない[#行末]。

 (七)旅行好きは当っているが、Rolf-Walton-Walter という名は現在では格別の意味がない。勿論むろんそう言った名前の人達を知っては居るが……。

 (八) 彼女が美術と関係深いことは事実で'現に彼女の父はある美術印刷会社の社長である。その他も当って居る。

 (九) 踝が弱いのは事実で、これは後日きいた時に初めて判った。

 (十) 非常によく言い当てて居る。並大体の秘蔵兒ではない。

 (十一) 全部美事に的中、試験材料としてこの項は特に有力である。実は彼女は平生は Mollie と呼ばれ、その洗礼名 Mary. であることは当時の私は知らなかった。彼女の年齢は嚴密にいうと二十一歳三ヶ月であった。

 (十二) 将来は判らぬが、現状から察すれば幸福と推定される。

 (十三) これも全部的中、住居は八ヶ月以前に変えた。

 (十四) 当時の私はその的否を知らなかった。イギリスヘ帰って彼女に訊いて見てもそんな事はない筈だと答えた。が、父親にきいて見ると、彼は近頃心臓病だと医師から宣告され家族にはそれを秘密にして居ることが判った。ず的中と称してよい。

 (十五) Clark. というのは家族の顧問医である。

 (十六) Mary は当って居るが、Marguerite は当らない。

 (十七) 帰英後訊いて見て初めてそれが昨年死んだ彼女の祖母を指して居ることが判った。その姓は Steinitz と言った。最後の Nitz を Nets 又は Ness と聞き誤り又は見誤ったらしい。兎に角祖母は非常に彼女を愛して居たのは事実である。

 (十八) 事実彼女は家から数哩隔った学校で教育された。

 (十九) 一九二八年が彼女に取って結構な年であって欲しい。世界大戦乱の勃発と否とに係らず。

 (二十) 彼女はほとんど犬狂いと言ってよい位に犬が好きだ。

 以上の註釈を見るとラプラス嬢の霊能――精神測定能力はなかなか優秀であることが判ります。当らぬ点よりは当って居る点の方が遙かに多い。就中同霊媒が質問者のプライス氏又はモリィ嬢自身が全然知らないことを二つも三つも指摘して居るのははなはだ面白い点であります。霊能否定論者はよく精神伝達説をかつぎ出したがりますが、こんな事実の前にはそんなものは一向役に立ちません。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第五巻第一号

発行: 1927(昭和3)年1月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 入力:いさお      2009年2月11日

※ 公開:新かな版    2009年2月11日


心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第五巻

心霊図書館: 連絡先