心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第四巻

◇鬼門の説

静響生

 

 鬼門とは邪悪妖気の気が侵襲し来る門戸という意味であろう。その門戸はこれを方位にすれば東北と西南、時刻にすれば午前三時と午後三時の丑寅と未申とである。で、何故に丑寅と未申とが悪鬼の襲来する所なり時なりとなるのか。左に私見を述べよう。

 地球は三百六十五日余を以て太陽の周囲を一周するが、天候の関係を除けば、昨日も今日も明日も、大抵似たり寄ったりの日柄であると言い得る。しかるにこれを春夏秋冬の四季に分てば、夏の気は春と異なり、秋は夏にあらず、冬また秋とその趣を異にする等、四季各異なれる気象を有することは、何人でも看取し得るところのものである。

 次に四季を陰陽の二気に分てば、春と夏とが陽にして、秋と冬とが陰なること、是亦これまた一般に認められて居る気象である。しかるときは陽の気の最も旺なるは春と夏との中間、陰の気の最も盛なるは秋と冬との中間に位することが数理的に言い得る筈である。そしてそれを暦月にて示せば五、六月、十一、十二のと交なる。

 更に一日の陽陰を考えるに、大体において昼は陽、夜は陰であることが言い得られる。しかるにその陰陽の気は必ずしも日出日没に伴うものとするは当らない。何となれば暁天日未だ出でざるに既に陽気の萌すを感じ、日お高き所謂いわゆる七つ下りにおいては、既に陰気の催おすを覚うるからである。しかるときはこの陰陽の気はいずれかで高潮し、いずれかで転換し、そしてそれが自然に推移するものでなくてはならぬ。そして陽気の最高潮が正午以前であり、従って陰気の最盛期が正子以前に在るべきことは大体推定し得られる。

 地球が太陽の周囲を一周する一年には冬至と夏至とがあり、地球が自転して生ずる一日には正子と正午とがある。各相反せる対象をして冬至に相当するは正子、夏至に相当するは正午であるべきことが想像し得られる。このくて一年一日の陰陽その他の相当は次のごときものとなる。

   月  時 方位 陰陽の比例
一月 午前○時 正北 陰九陽三
二月 二時 北々東 陰七陽五
 艮 立春 三時 北東 陰六陽六
三月 四時 東々北 陰五陽七
四月 六時 正東 陰三陽九
五月 八時 東々南 陰一陽十一
 巽 立夏 九時 東南 陰○陽十二
六月 十時 南々東 陽十一陰一
七月 午後○時 正南 陽九陰三
八月 二時 南々西 陽七陰五
 坤 立秋 三時 南西 陽六陰六
九月 四時 西々南 陽五陰七
十月 六時 正西 陽三陰九
十一月 八時 西々北 陽一陰十一
 乾 立冬 九時 西北 陽〇陰十二
十二月 十時 北々西 陰十一陽一

 注 上表中冬至は十二月なるも、その中旬以後なるところより、これを一月の部に配せり。若しこれを十二月とするを至当とするものあらば、子を十二月とし、順に繰り下ぐるもなり。

 是に由って観れば陽気の最も旺なる五六月の交は辰巳、午前八時十時の間、東々南及南々東の間たる東南であり、陰気の最も盛なるは十一月十二月の戌亥、午後八時十時の間、西々北及北々西の間たる西北であることが知られる。そして陽気の陰気に転換する境界が未申、八月九月の間、午後二時四時の間、南々西及西々南の間たる西南であり、陰気の陽気に転換する境界が丑寅、二月三月の間、午前二時四時の間、北々東及東々北の間たる東北であることが知られる。

 およそ物が連続的に進行する所には乗ずべき間隙を生じないが、進が退となり、右が左となり、陽が陰となるごとき転換が行わるるときは、かならず何等かの間隙を生じない訳には行かない。間隙あるが故に何物かがこれに乗じ得るのである。左顧右眄さこうべんするとき思想乱れ、進退踟蹰ちちゅうするところに破滅生ずるが如く、陰陽変転せんとするに際して妖邪これに乗ずる機を得る。これを方位にしては艮と坤との鬼門となる。

 陰陽の気は勿論むろん無形のものなるも、有無は表裏の如くにかならず相伴なう。故に無形に備えんとして人は有形に鬼門を閉塞するに至るのである。これを鬼門の説とするお陽はその気壮に陰はその気沈むが故に、陽中の陰が発達して陰気の勝たんとする坤は妖邪進んで人を侵すの気比較的少なく、陰中の陽が発達して陽気の勝たんとする艮は魔鬼その勢を逞うすべきことも窺知される。れ艮を表の鬼門坤を裏の鬼門と称する所以ゆえんであろう。

ちなみに言う。辰巳と戊亥は陽気と陰気との最盛期にして、妖邪の気あるも以て乗ずべき間隙を存じない。故に人はその方位に門や井戸等を設けても差支さしつかえ無しとするに至ったものであろう。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第四巻第十二号

発行: 1926(昭和2)年12月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年10月09日

※ 公開:新かな版    2008年01月28日


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