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機運

 △機運というものは何によりて発生するか、詮議立ての好きな科学者間にもまだその定説は見つからないようだが、しかしその存在の事実丈は疑われない。一番目立つのは経済界の消長盛衰、所謂いわゆる景気不景気というやつであろう。首尾よくこれに乗じたものは何所どこまでもはねをのし、まかり間違ってこれを踏みはずしたものは谷底に落ち込む。

 △私の観るところによると、この機運なるものは心霊現象の発生にもまたあきらかに存在するようだ。鯱鋒しゃちほこ立ちになってあせって見たところで、こんな現象が出ない時にはさっぱり出ない。これに反して一たんしおがさして来たと見ると、只坐って見て居ても雨後の筍のようにぞろぞろ出る。

 △想い起せば早や十年の昔となる。大正五年、六年頃は日本で心霊現象発生の機運が少しばかり萌して来た時であった。私の心霊上の実験は不完全ながらもその時に獲られた。それが病みつきでとうとう心霊研究が止められないことになってしまった。

 △が、今から考えると、当時の心霊現象は概して不純で、浅薄で、つ断片的であり、そしていつの間にやら次第に下火になってしまった。んな下火時代の心霊研究家は全く目も当てられない。いかに焦燥あせって見てもうにもしょうがない。止むなく、過去の事実をしらべて理論の整理でも試みるより外に道がなかった。

 △が、世の中はそんなに心配したものではない。機運というものは黙っていても自然に循って来るから難有ありがたい。冷静に考察して見るに、どうも昨今霊界の活動が又ボツボツ起りかけて来た模様がある。しかも十年前の活動振りとはちがって何所どこやらに根強いところ、何所どこやらに落付いたところがありそうだ。

 △もちろんまだ活動のホンの端緒で、うっかりしたことも言われないが、多分あまり遠き未来でなしに日本の精神運動史上に痕跡を残すべき心霊事実が発生するのではないかと思われてならない。苦節十年も使いふるされた文句だが、私にはいささかそんな感が起らんでもない。(憑虚)


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第四巻第八号

発行: 1926(昭和2)年8月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 入力:いさお      2008年9月30日

※ 公開:新かな版    2008年10月4日


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