心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第四巻

◇天下の秋を知る

 △大平無事の夢を見て居る時代には兎角個人主義的傾向が流行はやる。他人は他人、自分は自分、おれが何をしようと黙って見て居れ。大きなお世話だ……。まァう言った調子である。

 △ところが周囲の風雲があやしくなると、気の弱いものよ、なんじの名は人間である。近年の日本はの方面を見ても極端な小党分立の世の中であったが、近頃そろそろ風向きが変りかけて来たようだ。

 △イの一番にあわて出しかけたのが銀行業者である。一流銀行までが休業の貼札はりふだをかかげた、財界の大波瀾に、小銀行の合同運動が彼方あちらにも此方こっちにも起りかけた。いわゆる一葉落ちて天下の秋を知るの類か。

 △つづいて眼を覚ましかけたのが政党者流である。門外漢には覚えきれないほど沢山の政党ができている中に、最近憲政会と政友本党とが兎も角も一つに固まった。これもそうなくてはならぬ天下の趨勢なのであろう。

 △他から堕落して居るとか、腐敗して居るとか、いろいろ罵声をあびせられつつあっても、さすがにきた実際の仕事に従事して居る連中のする仕事には何所どこやらに多少の甘味うまみを含んでいる。

 △其所そこへ行くと日本の宗教界又は霊術界の現状は何という時代錯誤であろう。いずれも大抵自分免許の独り天狗、てんでんばらばらの各個運動をして、お互にアクタレと手前味噌のきッくらをしてござる!

 △この状態は自覚せる国民の頭脳あたまに何事を印象せしめるか?、手前味噌やアクタレをきいて感心するものが六千万人中にはたして幾人かあろう。「豎子共に語るに足らず……」――そうした観念の誘発に終るなくんば倖である。(憑虚)


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第四巻第七号

発行: 1926(昭和2)年7月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年9月7日

※ 公開:新かな版    2008年9月10日


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