心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第四巻

ゴシップ

浅野憑虚

□占星学者の予言

 私自身は西洋の占星学アストロロジィの研究者でもなければ、又もちろんその信者でもない。つまりまるきりの門外漢なのでありますが、私の友人のN氏と云のはなかなかの占星学通で、その研究を始めてからすでに十幾年になるといいます。

 N氏の説によると――この人は御座なりの嘘や出鱈目は絶対に言わない、立派な紳士で某大会社の専務を勤めて居る人ですが――この占星学というものはなかなか莫迦ばかにならない正確味をった、立派な科学で、現に往年の欧州戦争の時にも、その起る数年前からほぼ確実に予言して過まらなかったというのであります。

 私はある日座談の折にN氏に向って占星学の問題を持ちかけました。――

『西洋の占星学者は、世界の将来に就いて何か予言じみたことでも言って居るのですか?』

『イヤさかんに言ってますよ。』とN氏は微笑しながら答えた。『いやしくも世界の占星学者でこの問題に触れて居ないものは一人も無いと言ってもいいでしょう。』

『そして各自の意見はほぼ一致して居るのですか?』

『さァ枝葉の点に就いていえばかならずしも一致しませんが、要点だけは違わんようですナ。いずれも極めて近き将来に世界に大々的禍乱が勃発するようなことを言って居ますよ……。』

『そいつァうも物騒きわまる。実は心霊家の間にもしきりにそんなことを言って極端な杞憂を懐いて居るものがあります。例の、御存じのコナン・ドイルなどがその一人で……。』

『矢張りこりャ現世界の声なのかも知れませんよ。こんな事は門外漢から見れば、雲をつかむような話としか思われぬかも知れませんが、しかし実地にその道に入って見ると莫迦にならぬことが沢山あるものですからね。――現に私などは欧州戦争中商売のめにニュー・ヨルクに行っていましたが、占星学のお蔭で少なからざる恩沢に預かったような次第で……。』

 私はN氏の言葉に相当興味をそそられました。――

『そうすると、あなたは占星学のお蔭でお金儲ができたのですね………。』

『私のことだから大したこともできませんでしたが、しかしいつ頃になれば欧州戦争が終るという、大体の見当がついて居たものですから、品物の仕入れに少なからざる便宜を得たことは事実です。大概の人達は今にもすぐ戦争が集結でもするように考えて、そわそわして居ましたが、私丈はどんな報道に接しても、多寡を括って、泰然自若として居ましたね。人間は何かたよるところがあると、割合に度胸が定まるもので、私は肝玉きもたまの据わった人間というものは、取りも直さず将来の推移変遷に関する察知能力が優れている人間ではないかと思いますね。一部の論者は予言とか予測とかいうと、大へん毛嫌いして、そんなものはいたずらに人心を動揺せしめるからるいなどといいますが、それは山師の宣伝する出鱈目の予言がるいので、純学問的態度で、真剣に試みる予言ならば決してるくはないと思いますね。すくなくとも政治、外交実業等に実地にたずさわる中心人物には、一年や三年先きの目標丈は立って居ってしかるべきだと思われますね。一寸先きは闇の世の中、万事は行き当りばったりのその日ぐらしに限る、などというは、私に言わせると無責任極まる話で、何等の定見なき愚物どもの負惜みの囈語たわごとに過ぎないと思います……。

『イヤうも、大した気焔で………。それはそうと欧州の占星学者達はあの欧州大戦の起る前に、一体どんな予測を下して居たのですか? お手元に当時の雑誌でもおちですか?』

『すッかり揃えてありまします。ぢゃア一つお目に懸けることにしましょう……。』

 そう言って氏は書斎の本箱から、相当古色を帯びた、十数年前の雑誌の合本を持ち出して、丹念に朱線を引いてある要所要所を私に見せて呉ました。

 私がこれから紹介しようとするのはその際N氏によりて提供せられた資料中のホンの一部分であります。

□過去の命中率

□近き将来

□印度西蔵の神秘家


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第四巻第四号

発行: 1926(昭和2)年4月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年5月13日

※ 公開:新かな版    2008年6月27日


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