心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第四巻

ゴシップ

浅野憑虚

□ 実体と影

 多くの読者の中には、私が昨年九月号のゴシップで紹介したチェーフア氏の『暗影』と題せる霊象の記事を今でも記憶せらるる方もあるかと存じます。あの一文ははなはだ簡単な、そして何やら不透明なものでありましたが、あれでなかなか英国内の識者の注意を惹いたらしく、賛否両様の批評がしきりにあちこちに現われました。

 中には随分見当ちがいの攻撃を加えたものもあったので、筆者は半ば弁解のめに一文を今回又々『オッカルトレヴュー』誌に寄せました。中にちょいちょい面白い点もありますので、私も行きがかり上、その要点を再び紹介することに致しましょう。――

『私が暗影を書いたのは現代の霊的、道徳的、物質的の実際生活につきて世人の注意を喚起せんがめであった。つまり吾々の周囲並に吾々の内部に働きつつある力の何であるかを示し、不可抗力を以て吾々の頭上に落下しつつある、重大運命に対して準備させたいとの婆心に外ならなかった。暗影は私の内的意識に現われた、ある繪画の記録である。言わば一の心霊的知識に過ぎない従ってあれは読者の霊魂に訴えたもので決して読者の頭脳理性に訴えたものでない。一部の批許家が試みたように、事実だの、数字だの、論理だのという猟犬を放って、いかにこの霊の小兎を捕えようとしたところで、とても捉えられるものでない。

『われわれは影などに用事はない。実体がしい……。いくら批評家達がそんなことを叫んだところでお生憎さまと言はざるを得ない。私に言わせるとあれが即ち実体なのである。但し、あれは未来の実体である。批評家達に取りて過去は記憶として存在し、現在は事実として存在する。しかしながらお気の毒さま、未来は彼等に取りて非存在物である

『われわれが「期待するところの実体」換言すれば未来の事物、を把握することのできるのは霊魂のお蔭である。幸にして未来の事物を一の実体と見做みなし得るのは天下に私一人ではないようである。が、多くの現代の批評家達は憐むべく微妙な感受性に欠けている。全力を事物に就きて知ることのみに棒げ事物それ自身を知ろうとしはしない事物それ自身を知ることは四次元的であって三次元的ではない四次元的であるから未来に突入し未来を把握し未来の事物を感知することもできるのである

『私の暗影は、むろん三次元式の人達のめに書いたものでなく、すくなくとも第四次元的予覚の匂のある諸友のめに書いたものである……。由来 いずれの時代にも警報がかりの寝ず番が居る。そしてそれ等の人はいずれの時代にも不人望である。睡れる者は通例その気楽な夢を破らるることを好まない。そんな事があってはたまらない。そんな事は起らぬ方が宜しい……。そうした利己心から、何とか理窟をつけて警報がかりを攻撃する。が、困ったことには宇宙の事象は人間の造った汽車や自動車と異って、停車せしめることもできなければ、又、側へ外らすこともできない。

『一方に警報家が現われると同時に、他方において魔睡剤師がかならず現われるということは何たる皮肉であろう。後者はその常套手段として口に平和を唱え、天帝の慈悲を称えて、成るべく宇宙進化の時間表―― 一分一厘 ぐることのできない鉄則を無視して、一時の逸眠に耽らせるよう全力をそそぐ……。

『正に接近しつつある世界的大変動……。その証拠は各方面において日毎に増加しつつあるが、その真相を正しく理解しようと思えばわれわれは少くとも物質の奥の世界幽界で現在何事が起りつつあるかを知らねばならぬ。ここでその詳細を伝えることは到底できないが、せめて一端なりと漏らして置けば、心ある人達をしてハテな、と考えさせることはできるかと思う。』

 ここまでの所では、チェーラア氏は大体三次元の世界において筆を執って居りますが、ここからきは所謂いわゆる四次元の世界のことに属しますから、読者において左様御承知を願いたい。外形の問題にあらずして実体の問題です。論理の結果でなくして直覚の産物です。――

『かの長い長い天界の戦争、闇と光の不断の戦争は今回いよいよ勝敗の数が定まった。換言すれば、人類に対する終局の目標がついた。丁度ちょうど欧州大戦において、マルヌとエーヌの戦を以て勝敗の数が決まったように……。

『右の結果天界の戦争は最近において根本的変動を受けた。光の軍隊の位置は正にウォータールーの英軍のそれと同様である。全線進撃! の号令がすでに発せられたのである。

『地球の物質的実体の周囲には幽的物体アストラルマタアが存在して、それが一の霊衣オーラを形づくり、以て地球を太陽系その他の天体の直接影響の外に置く。右の霊衣の界がとりも直さず、霊智学徒の所謂幽界アストラル、プレエーンであり、霊魂学者の所謂辺境界ポルタア、ランドである。ここに居住するものは大部分人類に対して害毒を与えるものばかりであると思えばよい。幽界居住者に取りて普通であり、正当であると思わるることが人類に取りて有害であり、不利益であるのだからいかんともし難いのである。

『ところで、この幽界の居住者は性質上皆四次元的存在物である。人間とても本来四次元的なのであるが、三次元的脳髄をもつているので、兎角それに捕われて、他の一つを意識的に働かすことを知ちない。その必然の結果として人類の悩みの四分の三は其所そこから起る人間が何等心身の修養訓練を経ずしてうッかり幽界との交通でも始めると、それこそ危険千万で、間断なく四次元的意識を運用する幽界居住者のめに翻弄されてしま う。他方において幽界の居住者は、若しも物質世界で活動の手がかりを得ることになれば、さかんにその自由意識を運用して人間をオモチャにすることに全力をあげる。真の神秘学者はこの事をよく理解して居るが、単なる実験に耽るところの霊魂研究者は 余りこの危険を自覚していない。

『ここまで述ぶれば人類が現在いかなる位置にあるか、大体の見当がついたことと思う。地球の各界にわたりて大整理執行の時期が正に近づいた。進め! の号令がすでにこの特殊の任務に従事する天軍に向って発せられた。前進はすでに開始された。罪深く毒強き幽界居住者の大軍は正に下界――地界に向って驀地に駆逐されつつある最中である。地界に逐い下さるる魔の群は間断なしに殖える一方である。幾代かにわたりて人間が大空に向って放った矢は正に自己の頭上に落下しつつある。彼等は人間の肉体の内に喰い入りつつある。利己、情慾、天律無視の凝塊かたまりであるところの現代人心の肉体は、此等これら幽界の落武者たる悪霊に取りて誠に絶好の巣窟なのである。

『これが現在人類を威嚇しつつある所の恐怖である。悪霊は胎児にも初生児にも憑依すると同時に、弱きもの、淫蕩なもの、調子はずれなもの……、苟くも隙間のある男でも女でも手当り次第に襲 う。道義心ヌキのヘタな霊術家などは実に彼等に取りて絶好のいものである

この大危険は単に民衆の方でよく現在の境遇を自覚し霊的並に精神的の正しき態度を確立することによりてのみ避けられる。冷淡と懐疑と事実の無視とは致命傷を与えずには措かぬ。人類の真の敵は心霊的警報家であるか? それとも一時のがれの魔睡剤供給者であるか? 胸に手を当てて考えて見たら判るであろう。男も女も、若しもぎの時代に生き残り、ぎの時代を建設しようと思うなら、しッかりした指導者の傘下に集まらなければ可 けない。今でも立派に逃げ路がないではないそれはこれれをつかむことを知っている有縁者にのみ与えられる

『これから近き将来に地上に起らんとする大変動――戦争、革命及び滅亡等は現在幽界において行われつつある大整理、大清潔法執行の結果として起るものに過ぎない。幽界の基礎若くは模型が破壊さるれば、物質界の複写物も従って壊滅するのが天則である。であるからこの地上で、いろいろの組織もくだける、政府も亡びる。難攻不落を誇る強国も根抵から覆る。地上の各国民の将来はどこまでこの真理を自愛しどこまでこれに基きて行動するかによりて決定する。』

 私はチェーラア氏の言辞に対して何事も言わずに置きましょう。私はむしろ読者の方でこれを読んで何とお考えになるか、それを伺いたく存じます。

□ 火葬に限る


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第四巻第三号

発行: 1926(昭和2)年3月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年5月13日

※ 公開:新かな版    2008年6月12日


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