心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第四巻

ゴシップ

浅野憑虚

□神秘家の観る世界の将来

 近頃アメリカで『今後の世界の変動』と題せる小冊子が出版されました。著者は神秘派のカアティス博士夫妻で、断乎として世界の将来の趨向につきて極言して居るところはたしかに気の弱い常識的目前主義者を気死せしむるに足ります。――

『世界大戦が済んでからの世界には政治的にも宗教的にも、一切の束縛に対する反抗が起りかける。それは極端から極端に走る時代である。猛烈な自己中心主義の勃発する時代である。見よ、各方面に現われつつある無茶苦茶な自由行動の跳躍を。ロシアに起ったボルシェヴィック運動はその顕著なる実例の一に過ぎない。物質的の戦争として発現した同一の火がつづいて精神的心霊的の学闘として再び世界を一掃する。この時代に一切の精神運動は暗雲に蔽われる。余程しッかりと神的実在の磐石の信念の上に立脚し、それを新らしい環境にシッくりはまった言葉で言い表わすものでないとかならず自滅の運命を辿りて他のあたらしきものに己れの位置を奪われる……』

 この辺まではお手やわらかであるが、進んで地球の人類を襲わんとする天体の変動を描き出すに至りては正に言語同断の感がある。

 著者の意見では世界の人類は正に第五期を終りて第六期の新時代に進入せんとしつつ、過渡時代の苦難を嘗めつつあるのだというのです。

『第六期に入らんとする過途時代には地球の表面に素的な災厄、――即ち大小種々の戦争、地震、旋風、火山の爆発、洪水、等、が続発する。とどのつまりに清浄な新大陸が水中から出現して、その上に第六期の基本的人類が生息することになる……。』

 うなると少々現代ばなれがし過ぎて、一篇の伝奇小説でも読む気分がして来ます。と言って、地震だの、気象上の変災だのが近来世界各地に頻繁に起るところを見れば、強ち一片の囈語たわごととのみ貶しつけてしまうこともできないようにも思われないでもない。著者の方でも懐疑論者から横槍が這入はいりそうなことは充分気がついて居るらしく、特に一章を天体変動の哲理と云ったようなものにささげ、人類の思想行為と天然現象との間に密接な関係の存在することを、神秘論者の立場から百方論述しているところは相当面白くないでもない。――

『自然の力は一種律動的週期的法則を守って働くもので、春から夏、秋から冬と寸分の錯いなく大きな時計仕掛で動く。此等これらの変化はすらすらと立派な調和を取るのが普通で、雪は静かに地面を白の毛布で裏んで植物の種子が厳寒のめに枯死するのを防ぎ、同時にぎの時節に対して水分の貯蔵の役目を引受ける。雨はしとしとと土地を潤おして生物を養い、風は気象の状況に応じてあるいは強く、あるいは弱く吹きて大気を浄化せしめる。すべてが平和、すべてが協調、決して相犯し相争うことがない。一旦不調和なる精神的磁力がむらむらと人類間に黒雲のように発生するに当りてはその力は天然力を通じて出路を求めその結果天然界の律動的諧調を破りて日頃建設的の作用を営む自然力が俄かに破壊的の作用を発揮することになるのである。』

 ちようと鼻元思案で考えると何やら荒唐無稽の空論じみて居て、昔の支那の儒生の口吻でも連想したくなりますが、最新科学の発達は一面にこの説を裏書きするような趣がないでもありません。大陽の光球内に起る所の黒点と言ったような遠方のものがよく地球の磁気の平衡を破りて、顕著なる気候の変動を惹き起す力あることは、最早科学界の承認するところとなっています。眼に見えない人間の思念が凝集的に放射されるとそれが写真の乾板の上に歴然たる印象を与えることはパリのバラダック博士その他の科学者達の数百千回の実験によりて確定されたる事実であります。して見ると幾千幾億の多数に上る人類の憎念怨念等が蓄積された時にそれが自然界の磁力の平調を破りて 暴風雨 あらしや地震等を起さしめないとは何人が断言し得ましょう

 兎に角天然界と人間界とを全然引き離して宇宙内部を切売式に取扱おうとする浅薄な考は二十世紀の進歩した学者思想家の間にはそろそろ通用しなくなりつつあります。打てば響くエーテルの微妙な働きはラジオ一つを捕えて考えて見ても明瞭であります。

□思念の放送


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第四巻第二号

発行: 1926(昭和2)年2月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年5月13日

※ 公開:新かな版    2008年5月6日


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