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ゴシップ

浅野憑虚

□ 臨終の幻像

 故ウイリアム・バアレット卿の遺著『臨終の幻像デスベット、ヴイジョンス』が先般ロンドンで出版されました。未完の小冊子ではあるがさすがに正確味と真剣味とに富み、有力な参考資料たるを失いません。同書の中にバアレット夫人の面白い体験譚がありますから左に紹介します。――

 夫人の親しい友人がある時重態に陥り、クラプトンの『マザァース・ホスピタル』病院に入院して居ましたが、そのうち病勢が悪化して臨終が近づきました。病人は、心細がって、是非ぜひそばを離れずに居てくれと夫人にたのんだりしました。

 しばらくすると、病人はにわかに満面に笑みを湛え、凝乎じっと一点を見つめながら叫びました。『んてまァ美しい……。』

『何がそんなに美しいのです?』

と側に居た医者の問に、病人は次のように答えました。――

『私の眼に見えるものが美しいのです。んてまァきらきらした、不思議な人達でしょう! 私もうしちゃ居られない。――あらッおとうさんが居られるぢゃありませんか! ヴィダも居るわ……。』

 ヴィダというのは最近に死んだ妹の名ですが、病体にさわってはけないというのでその死は絶対に彼女には秘密にしてあったのでした。

 彼女はそれから約一時間の後に気息いきを引きとりました。

 物語は斯く簡単なものですが、しかしその内容には深く考えさせられるところがあります。患者は全然その妹の死を聞いていなのであるから、幽界に妹が居ることを予期する筈がない。又この現象を精神感応の結果であると説明することも無理である。何となればその場に居合わせた医師達は彼女の認めた二人の死に就きて何の知識もなかったからであります。

 バアレット卿は序文に言っています――この種の臨終の幻像、特に死んだことが判っていない人々の幻像は恐らく死後の生存の証明としてもっとも有力ではあるまいかと。容易に霊魂の存在を認めようとして居ないフランスのリシエ教授でさえもが、この種の現象の説明としては霊魂説が一ばん妥当で、自分はこれにはいささか往生すると自白して居ります。

□ 生者の心霊写真

□ アメリカ印度人の交霊術

□ 南北戦争と霊魂説


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第十号

発行: 1925(大正15)年10月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年2月29日

※ 公開:新かな版    2008年3月31日


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