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心霊現象と宗教

――江原小弥太氏の説を読みて――

憑虚生

 江原小弥太氏の個人雑誌八月号に『心霊現象と宗教』と題して江原氏一流の言説が載せられている。歯切れのよい、キビキビした書きッぷりはいつもながら敬服させられるが、その論旨には遺憾ながら賛成し兼ねるところが多い。失礼ながらドーも着実な研究というよりは、むしろ面白い気焔という感じを与える。

 霊媒者の霊媒現象には二つの相異があると江原氏は述べて居られるがそれは事実でない。私に言わせるとまだ沢山ある。即ち――

 (一)被術者が術者の暗示によって言語動作する場合(江原氏のいう通り)

 (二)霊媒者が実験者の潜在観念から暗示を受ける場合(同上)

 (三)霊媒者が自己暗示で動く場合(多くは自称生神様式のもので、自家推薦式臭味に富む)

 (四)死者(稀には生者)の霊魂によりて司配しはいされ、真の人格転換をる場合(正真正銘の霊界通信として証拠事実にとめるもので、本誌に沢山実例が載せてあるのみならず、優れた霊媒を以ていくらでも実験ができる)

等を挙げることができる。

 江原氏はんな現象は『心理学上から言って変態心理現象と種すべきである』などと言われて居るが、私からいうと大不賛成だ。『変態』だの『超自然』だのとは誰がいうのだ! 宇宙間に起る事象はことごとく自然的であり、常態である。霊媒現象のすべては起るべき必然の道理があるから起るので、それを究めて、これ司配しはいする裏面の法則を発見しようとする所にあたらしき科学者の神聖なる任務があるのである。空間に電気が起るのはあれは変態だ、などと言って電気を敬遠して居たら今日の世の中はんなにつまらない世の中であったらう!

 江原氏は又『心霊的波動を理論上において認めているが、一般心霊学派の人々が認める心霊現象をこの心霊的波動作用であるとは認めない』などと言われている。認める、認めぬ、は各人の勝手であろうが、そう言った丈では腑に落ちかねる。思想伝達現象は実験上否定し難い事実であるが、その際一の思想の波を仮定することなしに、ドーシてこれを合理的に説明し得るか? その他卓子浮揚現象でも、幽霊写真でも、但しは正しき霊界通信でもことごとく然らざるはない。むろんまだ現在の人智ではその心霊的波動を捕え得ないことは引力を捕え得ざると同様で、その点において学術的仮説の域を脱しないことは確かである。

 心霊現象は宇宙間に起るところの立派な天然現象の一つであるからそれ丈で科学的考察の価値がある。宗教家がドーこれを利用するか悪用するかは全然別問題である。……江原氏は大乗仏教の謳歌者であるらしく、有無を超越した大源の状態にあくがれ、心霊現象ばかりでなく一切の差別界を一の迷妄として破却することを歓ぶお方のように見受けられるが、真実にそれができたら誠に結構なことだろうと私は羨望の念を懐きながら大急ぎて引きさがる。

 (一五、七、三一)


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第九号

発行: 1925(大正15)年9月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年2月20日

※ 公開:新かな版    2008年3月25日


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