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ゴシツプ

浅野憑虚

 

□ 暗影

『オッカルト・レヴュー』誌の六月号を開いて見ると『暗影シャドウ』と題した一文がある。筆者はチエーラアと言って、霊智学徒セオソフィストであるらしく、霊智学徒通有の融通のきかない僻見 へきけんをならべて心霊研究に対向せんとするところは一向感心できないが、しかし現在の『狂的時代』に就きて憂慮して居る誠意を買ってやる値打ねうちがないでもありません。彼はう叫んでいます。――

『神々が人をほろぼそうと思えばこれを発狂させる、という古諺があるがそれはたしかに現代の時勢にあてはまる。現代人の趨向は極端から極端へと走る。就中 なかんずくその傾向は新らしい人々の間に著しい。中庸などということは黴くさい道徳であるとして、狂気の如くただ快楽を追いかける。眼をそばだたせる衣裳、気まぐれの流行、ジャズ音楽、三角派又は未来派の絵画、とりとめのない詩、んなところが一ばん平凡な毒の少ない標本である。あくどい刺戟と強烈な肉感とに向っての突撃振り、用もないのに目茶苦茶に疾駆したがる焦燥性、何所どこを見てもてッきりキ印の徴候である……。』

 西洋でも日本でも何やら一の世界的大勢と云ったようなものに司配しはいされ、国を挙げて見当の取れない、ある方向に突ッ走りつつあることは同様であるらしく見受けられます。

 が、この筆者で一ばん面白い点は自分の目撃した予言的霊象ヴィジョンを正直に記述して居ることで、ちょっとバイブルの中の霊象記事に類似して居て、すッかりも判らないがどこやら人を引きつける魅力があります。忠実に左に紹介しましょう。――

『私の眼下には陸地が……ヨーロッパがずっと拡がって居る。四方の隅には四人の人間が陣取って黒い布の隅をめいめい握っている。と、一陣の風が東洋方面から吹いて来て右の布をはげしく波打たせる。

「この布は一体何を意味するのです?」

 そう私が訊ねると、中の一人がそれに答えた。――

「これは、正に地球上に起らんとする事象の暗影であります。」

 やがて四人が右の布を下方に垂れたので、陸地全体はすッかり布で蔽われてしまった。

 そうする中に風は猛烈に吹き募り、ひどい動揺が起って、叫喚の声や騒擾の模様があらわれ、布は血汐でビショビショに濡れた。

 私は再び訊ねた。――

何故なぜこんな騒ぎをするのです?」

「それは、邪魔する物を取り除けるめであります。」

「その取り除けられる物というのは一体何ですか?」

「都合三つほどあります。最初の二つは第三のものによりて破壊せられ、右の第三のものも仕事が終れば是非改造の必要があります。」

 私は重ねて訊ねました。――

んな事は何時いつ頃起るのです?」

「あなたが只今御覧になっていられる陸地はすでに憎みの週期を通過して、今正に発狂の週期にのぞんで居るのです。ぎの週期は破壊の週期です。」

「現在の週期はいつまで続くのですか?」

「左様、後二ヶ年で終り、それから破壊の週期に入ります。それから九ヶ年で九つの国民の仕事が完成することになります。」

 やがて布は跡方もなく消散し、陸地の表面には荒廃の色が漲った。最初陸地を区劃くかくして居た線などはすッかり取り除かれ、すべての上に沈黙が司配しはいした。すると、その沈黙の中から一声の喇叭ラッパと智慧を説く一つの声とが聞えた。沈黙しているお蔭で右の声はすべての人々の耳に徹し、爾後 じご陸地にはしばらく平和が宿った。』

□ 暗影の原因


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第九号

発行: 1925(大正15)年9月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年2月20日

※ 公開:新かな版    2008年3月19日


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