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ゴシツプ

浅野憑虚

□ 多数催眠術ではないか?

 ジョン・デイル・ロス氏はシンガポールで印度人の奇術を目撃して余程感心したらしく、これが所謂いわゆる『多数催眠術』というものではないかと言って二三の実見譚を一九二五年四月発行の『チェムバアス・ジャーナル』誌上に載せて居ります。

 第一の奇術はシンガポール港に碇泊して居る一運送船上での催しで、一人の印度人が婦人の助手を使って試みたものでした。

『東西! ここもと御覧に達しまする印度国伝来の大魔術、真剣しんけん籃差かごさしの芸当げいとう、よッくお眼をとめられて御見物を願いあげ奉りまする……。』

 口上並に身振宜しくあって、老奇術師は右の婦人をらい目の網の中に入れてギュツと締めあげ、グルグル巻きにして、小型の長方形のバスケットの中に押し込み、お負けにそれを両足で踏みつけてバスケットの中に一ぱいに詰めてしまいました。

 それかしッくり合ったふたをした上で、皎々こうこうたる大長刀おおだんびらを抜くより早く、所嫌わずグザリグザリと右のバスケットを突き刺したからたまりません、唐紅からくれないの鮮血が四辺あたりに迸り出ました。

 が、老奇術師は落付き払って、刀の血汐を拭いつつ、徐ろにバスケットの蓋をけたのであります。と、内部なかには空っぽの網があるばかり、そして刺された筈の婦人の助手は平気な顔をして見物の水夫達の背後からチョコチョコと歩み出ました!

 その翌日ロス氏は右の奇術師を自宅に招きて同一魔術を繰りかえさせましたが、その日も矢張同じように巧妙にやってのけ、どうしても手品の種子らしいものは発見されなかったといいます。

 第二の奇術は更にそれよりも奇抜な位であります。

 シンガポール市内の一友人の家でロス氏その他数人が昼餐の御馳走に預かって居る際に、二人の印度奇術師が這入って来てんなことを申しました。――

『御当家には蛇が沢山棲んで居りますから、私どもにそれをらしていただきたい……。』

 主人はそれをきくとむッとして、この家に蛇などは一疋も棲んで居ないと申しましたが、奇術師達は、若しも蛇が居なかったら謝礼は戴きませんと主張するので、兎も角も慰み半分にそれをらせることになりました。

 二人は二個のゴムの大きな袋をゆかに拡げ、それから一人があぐらをかいて笛を吹き始めました。

 と、たちま何所どこからともなく一疋の蛇がぬたくり出す。つづいて一疋又一疋、ものの二分間と経たない中に堂内は無数の蛇で充満してしまいました。それ等を二人は両手で掬いあげて袋の中に詰め込むのであります。

 仕方がないので主人は謝礼の金子を渡しますと、二人はめいめい蛇で脹れ上った袋を肩にして辞し去りましたが、それは随分と無気味な光景だったといいます。

『不思議なことには』とロス氏は附記して居ります。『右の魔術師が現われる前にも後にも蛇はただの一度もこの家で姿を見せたことがありません。』

 

□ 恐ろしく正しい運命判断

□ コナン・ドイルの発表せる大々的警告

□ オリバー・ロッヂ博士の堅き信念


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第七号

発行: 1925(大正15)年7月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、章毎にページを分け、箇条書きに改行を加え、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2008年2月15日

※ 公開:新かな版    2008年3月5日


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