心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第三巻

権兵衛と烏

□『権兵衛が種子きゃからすがほじくる。』――建設と破壊、積極と消極、肯定と否定と何をするにも免れないのが世の中の通り相場だ。ここ へらに微妙な天の配剤と言ったようなものが働いているのかも知れない。

□近代式心霊研究が始まってここに五十年、権兵衛が躍起となって面白い霊的現象や霊媒を拾いあつめて種子蒔にかかると、無数の烏がとび出して来て片 ッぱしからほじくりにかかる。権兵衛さんも汗みづくだが烏も大車輪だ。

□烏にもいろいろの種類がある。欧米で一ばん獰猛な烏はいわゆる正教派の僧侶と一部の科学者のようである。日本でもっとも勇敢な烏は恐らく一切空を叫ぶ陰気な烏と変態心理を唱えるハイカラな烏らしい。

□種子蒔きも職業なら、ほじくり方も亦職業だ。どちらも神聖、どちらも必要、双方互にしのぎを削って進む中に権兵衛は権兵衛らしい智慧を出し、烏は烏らしい工夫を凝らす。権兵衛全盛の時代も容易に来ないが、さりとて烏ばかりが横行濶歩の世の中もめったに現われない。

□が、双方の主張のいかん、努力いかんにかかわらず、自然界には依然として心霊現象、心霊事実の種子が尽きない。滾々として後から後からいくらでも湧いて出る。権兵衛も烏もその点だけはず安心してよかりそうだ。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第四号

発行: 1925(大正15)年5月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ 入力:いさお      2007年12月18日

※ 公開:新かな版    2008年1月24日


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