心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第三巻

品川氏と好田青年

――本会最近の実験――

△霊媒と人格

『近頃何か面白い実験がありますか?』『日本には余りたいした霊媒はないのですか?』――私はよくこの種の質問を受けます。

 私はこの数年来日本に於ける心霊現象の捜査と実験とには微力の限りを尽して居るつもりで、その間において相当刮目すべき事件にも遭遇して居ない訳ではありません。一々それを発表して居た日にはんな四十八頁ばかりの小冊子はいつでもぎッしり満員になってしまいます。――が、御承知の通り、心霊研究というものは、極度に微妙な性質の研究で、確実に真相をつきとめ、真価を把握するという事は容易な仕事ではありません。

『かりそめにも自他の迷惑を惹き起すような事があってはならない。モすこしゆッくり調べた上で………。』

 私はいつもそうした臆病な態度を執るようになっています。たッた一と目で真偽を看破するなどという事は私にはとてもきません。在来の私の経験からいうと、一つの現象に対してざッとつきとめるのに平均両三年位はかかると思います。

 今更いまさら申上ぐる迄もありませんが、どんな心霊現象でも之に関与せる霊媒の人格を考慮の中に入れぬ訳には行きません。どんな悪徳漢でも半年や一年は君子の仮面をかぶり得ます。又人間というものは一時緊張した場合には案外びッくりするほどの能力を発揮します。そんな際にうッかり買い被って、世間に発表でもしますと後日飛んだ目に逢います。

 つまり霊媒ヌキの心霊現象というものは絶無でありますから其所そこに大きな困難が伴うのであります。不正直な霊媒に伴う心霊現象は概して不正直、無責任な霊媒に伴う心霊現象は矢張無責任、全く油断はなりません。

 ですから理想的に言えば霊媒は最初から人格的に養成すべきであります。『あの男は人間としては約束を無視したり何かしてはなはだ下らないが、背後に立派な神様が控えて居る。』とか、『品行は品行、霊覚は霊覚、素人は混線して困る。』とか云ったような言葉は大体において誤謬であります。それは世間をたぶらかすめの遁辞というもので、すくなくともその種の霊媒は基礎工事の出来ていない未製品であります。現在のところでは多くの未製品の中から掘出物を見附けようとする状態で、これは日本ばかりでなく、欧米各国でもまだ幾分その境涯を脱出するところまで進歩していません。

 完全なる心霊研究所の設立――年来私はその事の実行さるる日を指折り数えて待っていますが、これは天下の有識の士のことごとく賛成さるる事柄と存じます。古来の霊術志望者は山林に籠って断食をしたり、水行をしたりする事ばかりやって居ましたが、それでは不完全であります。心霊科学で註文する霊媒は学問の神聖と人生の真義とに目覚めたるいわゆる自覚せる霊媒でなければなりません換言すれば悪魔の使徒たる自由行動式霊術屋にあらずして神の使徒たる規律整然たる人格的霊媒でなければなりません

 宇宙の内奥はこれを探れば探るに従って益々深く、これきわむればきわむるに従っていよいよ微妙であります。近代科学の進歩は異常ですが、人類はこれしきの知識、これしきの研究を以て満足するようなことでは駄目です。小成に安んずる事は真の文化人の禁物であります。西を見ても東を見ても判ったことはすくなくて、判らない事ばかり転がっているではありませんか! 『このきは何を目標として進めばよいか?』――大小種々の案件につきての不安はほとんど何人の胸にも充ち充ちているではありませんか!

『判らないのが人生だ。』――中にはんなことをいう人間があるように見受けますが、これははなはだしき自暴自棄のいやしむべき態度と存じます。

『無智だから判らないのだ。判るべく努力するのが人生だ。』――私はそう言いたいのであります。物質科学であれ、精神科学であれ、ってってり抜いて、一つづつ宇宙の謎を解いて行くところに人類の使命があり、同時に又幸福があるのです。

 兎に角不安の現代世相を幾分づつでも軽減して行くことが現代人の責任であり、心霊科学研究の重要なる目標の一つもたしかにその点に存ずるものと愚考しますが、御同様この際日本に立派な霊媒の輩出することは何よりも望ましい次第であります。純学術研究の立場からも、人生問題解決の立場からも共に望ましい。日本国の興廃、引いては世界人類の興廃の鍵はあるいはこんな所にありはせぬか?! わたしはそうさえも考えたくなります。

 それやこれやでツイうッかりここに心霊研究所の設立問題まで持ち出してしまいましたが、私の執筆の当面の目的はそんな事ではありません。余りすべてを握りつぶして会員諸君への報道を怠り過ぎていたから、日本の霊媒並に私の試みつつあった実験の中で、ずあぶなげのない所を少々発表して置こうというのです。

△品川氏の物品引寄

△好田青年の治病能力


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第三号

発行: 1925(大正15)年3月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、黒丸傍点表記を、下線付強調表記に置き換えました。

※ 入力:いさお      2007年12月20日

※ 公開:新かな版    2008年1月7日


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