心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第三巻

新刊紹介

運命信者たらん

大野黙之助氏著

 著者は所謂いわゆる文士ではない。又所謂いわゆる学者でもない。ただ真面目に、健実に、天真爛熳てんしんらんまんに、家庭の主人公として、又科学の専門家として人生の真味を味わいつつ四十年の歳月を閲した時に止むに止まれぬ胸底の感想が溢れ出でて出来上ったのが本書である。自費で出版して自費で広告、全然利害を度外視してひたすら共鳴者に訴えんとして居るところが第一に敬意を惹く。

 中身を一読した時に私はずその材料の取扱い方の清新巧妙なるに驚いた。世の中に起った実際の事実、ヘタに取扱 えば下らない三面記事にでもなりそうな材料の中に人生の奥を流るる『運命』の姿を認め、『魂』のささやきを聴き、それを率直に、歯ぎれのいい筆で縦横に描き出している。時々ホーソルンを心読した人ではないかと思われる節もあるが、御当人に訊いて見ればソーでもないらしく、全く天稟の感想文家であるようた。心霊問題には多大の興味と理解とを有しながら、すっかりその臭みからけ切っているところも誠に奥床しい。収むる数十の短篇の中で『彼の時ああであったら』『月島丸の行方』『初めて知った人間の味』『一少女が再生の悦び』『富士山上の大暴風雨と科学者の一群』『運命を憶ふ』『相場道と運命』『投機界怪傑の生涯』等いずれも三唱に値いする。中にはいつか聞いたことのある事実もあるが、それを読んで少しも倦きないばかりか、却ってその中にある新らしい興味と教訓とを見出すところがこの人の凡庸でない証拠だ 。

 近来の意義ある好著述である。(定価 金二円三十銭。発行所、東京市神田区淡路町一ノ一、振替東京七参五五六番 天人堂)

 

松の精

 適宜な方法で松葉又は松実を食えば体質を浄化して健康を助けるとの説が近来有力だが、本会員のO氏は多年この方面の研究者で、その主張する所によれば、松葉の効能は人によって相違し、甲は胃病が治り、乙は痔が治り、丙は脚気が治る等、大体その人の弱点を治するのである。O氏自身はそれを服用の結果純白の口髭が近頃半分黒くなったと言っていられる 。これを食用化して売っている所は諸方にあるが、信州下諏訪にある味沢化学研究所というのは会員組織で、一ヶ月三回づつ新製品を配布するから便利であるとの事である。松葉食はそれが実験時代に属する丈それ丈研究者には興味が深い。兎に角松の国たる日本で当然完成せねばならぬ研究問題であろう。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第一号

発行: 1925(大正15)年1月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ 入力:いさお      2007年8月6日

※ 公開:新かな版    2007年12月6日


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