心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第三巻

心霊問答

◇霊媒の自覚

乙。お正月は毎年めぐって来ますが大正十五年は二度とはめぐって来ませんネ。

甲。全くですよ。それで……

乙。それで日本の心霊界も何か一つこの辺で後の目標になりそうな仕事を築き上げたいと思いますネ。

甲。それは私も至極御同感ですが、何をいうにも新世帯でやりいことばかり沢山あって手がまわり兼ね、いささか戸惑いの気味もないではありません。何から着手したらいいでしょうナ?

乙。矢張り建築物と同様イの一番の基礎工事かも確立すべきでしょうナ。私の考では霊媒の自覚ということが先決問題かと存じます自覚せる霊媒あっての心霊現象であり心霊現象あっての心霊研究であり心霊研究あっての真信仰の樹立であり真信仰の樹立あっての思想の改善人生の福祉世界の平和であります。これは首尾連関した時に初めて生きて行く事柄で、もっとも厳密な因果関係で縛られて居ますから、その中のれかを省きますと結局土崩瓦解を免れまいかと愚考されます。――あなたの御意見はいかがですか?

甲。至極御尤ごもっともな御意見と存じます。――ところで問題はソノ霊媒の自覚ですが、これに関するあなたの御意見を伺いましょう。

乙。それには霊媒の資格からはっきりめてかからねばならぬと存じます。霊媒の使命はいう迄もなく他界の存在者の使徒として交通連絡の任務に当ることで、一と口に言えば霊的受信係であります。他日何等かの器械的装置で霊界からのいろいろの思想の波を受取れる時代が到着するかも知れませんが、現在においその役目を果すものは霊媒以外には絶無であります。――すでに霊媒が受信係である以上、第一の要件は自己の意識慾求等を可及的混入せぬことであります。生きた人間である以上、いかに無意識状態に導いても多少のマゼモノは免れないでしょうが、それが余計加味して居れば居るほど不純霊媒と言われても致方いたしかたがないことになります。第二の要件は自己の手口等から現われた産物に対して他の厳正批判に任せることです。兎角自分の肉体を通過して現われたものは誰しもよく贔屓目ひいきめで観たがります。人情としては幾分無理のないところもありますが、学術研究に人情は禁物です。我田引水、自家広告は売薬屋の仕事であって断じて心霊研究者の仕事ではありません。是非とも霊媒は自己の霊的産物に対して局外中立を守り、その取捨選択を有力なる機関に托するの雅量を発揮せねばならぬと思います。第三の要件は霊媒が自己の与えられたる範囲内の仕事に満足し決して排他的傾向があってはならぬことです。死後の世界は巾さにおいても深さにおいてもほとんど無限大であります。釈迦キリストの霊魂もあれば熊公八公の霊魂もあります。学術的に言ったら詰まり大変な等差のある思想の波が伝わって来る訳で、それを一つの受信機で受取ることは到底不可能であります。で、霊媒はあくまで分業的であることが必要で、高い思想を受取る霊媒も低い思想を受取る霊媒も学術的には全然同等であります。西洋の霊媒達は近年この点において余程自覚ができたようですが、あれははなはだ学ぶべきことと存じます。第四の要件は霊媒ができるだけ他の仕事に関係せずこの仕事丈を専門にやることです。普通の仕事は頭脳を使うのが肝要であり、この仕事は頭脳を使わぬのが秘訣であって到底しっくりと一致しません。昔の大ざッぱな時代には、ある程度の融通はきいたか知れませんが、コー物事が緻密になった現代において双方を兼ねる事は随分無理であります。その当然の帰結として霊媒の衣食住問題の解決をせねばなりませんが、これは霊媒の払う犠牲に対し当然社会又は団体が受持つべきであります。少数の霊媒の生活を支持する位は、いかに日本が貧乏でも大した問題ではないと考えます。それからモ一つ………。

甲。まだありますか。なかなか沢山ですナ。

乙。イヤ、モ一つきりです。詰まり第五の要件としては霊媒が簡易清浄な生活をもって満足して貰いたい事です。道楽や贅沢をしたいものは初めからんな職業を択ばないのがいいのでで、先天的に物質慾の少ないもの、名利に恬淡なものに限りこの神聖な仕事をする資格があるのだといいたいのです。以上私が列挙した五つの要件は余り無理のないところと愚考しますが、いかがなものでしょう?

甲。大体至極御尤ごもっともと考えます………。

乙。で、私は日本の霊媒的素質のある貴重な方々にすくなくともこれ等五つの条件位は充分自覚して戴きたいのです。その覚悟のできた方が私の所謂いわゆる自覚せる霊媒で、大正十五年度としてはそんな方がすくなくも三五人は出て欲しいものですネ。

甲。私も御意見に大賛成です。イヤそんな時代がそろそろ接近したようにも感じます……。


憑霊現象

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底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第一号

発行: 1925(大正15)年1月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ 入力:いさお      2007年8月6日

※ 公開:新かな版    2007年11月26日


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