心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第三巻

巻頭言「循環」

◇陰の極は陽、陽の極は陰、機運はぐるぐる転換するので妙だ。その中で四季の循環はもっとも正確である丈それ丈又平凡で、お正月なども人間社会の年中行事となってしまい、あまり痛切な刺戟は与えない。従って雑誌の正月号などを出しても自他ともにそれほどには感じなくなっている。

◇四季の循環以外にもたしかにいろいろの循環は行われているらしいが、その発展が隠微で大仕掛で容易に捕捉する事ができないので困る。株式高低の循環、国際和戦の循環、国運消長の循環……人肌は相当これ等の問題に心を苦しめているが、科学的正確味のある公式はまだ出て来ないようだ。事によるとそんなものは永久にできないことかも知れない。

◇中でも一ばん大仕掛な循環は霊と肉、精神主義と物質主義との消長であろう。双方の融合調和がもちろん理想であるのだが、個人としてそれが至難であるが如く、人類全体としてもそれが至難の業で、実際は兎角かならず何ちらかに偏する。近代の物質偏重も随分久しいものだ。人間の頭脳が金銭と規則とで化石しそうになっている『モーこの辺で転換してもよかろう……。』――気の早いものは余程以前から首を長くしているが、今日までの所ではまだなかなか駄目のようだ。

◇が、斯く転換が容易でなく、一方が一歩退くと同時に他方が一歩進むと云ったような行き方は結局むしろ慶賀すべき現象で、ここに人類の一大進歩が認められると言えば言い得ると思う。両者の調和が人生終局の目標であって一方が他方を圧倒することでは断じてないのであるから、勝つも負けるも余り水際立つことは望ましいことではない。心霊党の任務は土俵際から実力を以てジリジリと物質党を押し戻すことでよい。不取敢とりあえず大正十五年度には何所までその押し戻しに成功するかが問題だ。これは永久の努力であって、たッた一年や二年の問題ではない。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第三巻第一号

発行: 1925(大正15)年1月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ 入力:いさお      2007年8月6日

※ 公開:新かな版    2007年11月26日


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