心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第二巻

ひとり言

いずれの国にも所謂お国自慢はあるものだが、日本人も決して御多分には漏れない方である。日本は神国である。物質科学にかけては欧米人には一歩を譲るが、心霊上の事にかけてはこちらが本場だ。まさかの場合には神様が助けてくださる。――んなことを言って威張っているものが我国民中の何割を占めていることであろう。口には出さなくても心の中でひそかにそう考えているものはなかなか多いようだ。

□これには多少の真理が籠っていぬではない。精神の正しいものには神霊の加護が下ることは確かである。所謂正直の頭に神が宿るのである。日本という国は東海に孤立せる島国である地勢の関係上、智能の上では通例一歩も二歩も大陸の苦労人よりは劣っていたかわりに、ただ比較的正直であること丈は常に他国民に比して一頭地を抜いて居たことは事実である。その点が従来日本人の唯一の強味であった。

□が、これはモー過去の時代の一場の夢となってしまった。運輸交通の途が開けるに連れて日本は決して東海のウブな田舎ではなくなった。こちらからさかんに出稼ぎもすれば、又自分のところに世界のお客さんを引き受けもする。同時に人気も急速度でるくなり、すれッからしの点において決して人後に落ちなくなった。頭脳がわるくてお負けに自堕落――これではその唯一の特点はとッくに取り消しになってしまっている訳だ。

□果せる哉、今日の日本国の心霊上の不振のていたらくはそも何の状だ! 神道や仏教の形骸はある。功利主義の似而非えせひ霊術はある。愚民を惑わす碌でなしの活神様はある。――が、在来の有り触れたものの中に科学的実験に堪える真の正確なる心霊現象がただの一つでもあるか? 全然因襲と伝統との埓外たちがいに超脱せる真面目なる少数の新人以外にこの間の消息の判るものがただの一人でもあるか? 正確味のある心霊現象が昨今欧米の天地に頻出し、かの悲惨なる大戦後の緊張せる人心に多大の好感化を及ぼしつつあるに反し、日本の今日はそも何の状だ! 熱もなければ力もなく、物質的にも精神的にも共に行詰りで青息溜息といきの態ではないか!

□お国自慢も、強ち排斥すべきではない。人間はそんなツマラぬ所から克己心を奮 い起して、痩我慢からでも一と奮発するものである。英国人の紳士面、仏国人の義侠振り、他から見て少々癪にさわるが、しかし彼等の強みも其所そこにある。物質科学で欧米人士の後塵を拝すべく余儀なくされた日本人は、せめて心霊上の研究においてなりと世界に向って気焔を吐き、ドーだ神国は矢張り異ったものだろうと言ってやりたいではないか?

□労資問題も大に討議すべしだ。思想や言論の取締りも結構だ。輸出貿易も大に奨励すべしだ。普選問題もはなはい。ラジオもベースボールも至極面白い。――が、吾輩から云えばそれ等の問題はいずれも皆末だ。日本神国の土台を何で築くつもりだ? 切に識者の反省を煩わしたい!!!


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第二巻第十二号

発行: 1924(大正14)年12月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ 入力:いさお      2007年7月19日

※ 公開:新かな版    2007年11月2日


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