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ゼーゲル夫妻の霊交術

――説明と批判――

(一)

 露国人ゼーゲル夫妻の所謂霊交術の興行的実験はなかなか大人気で相当世間の視聴を惹いたらしい。ず大阪を振り出しに、京都、名古屋等と順次に打ちまわりて七月中旬東京に乗り込み、同十九日午後帝国ホテルで都下新聞記者団五十名を集めてその実験を公開したのを皮切りとし、同夜は引きつづき華族会館で都下の名流百人除りを前にして実験を行いました。本誌の前身『心霊界』の編輯主任であった瀧川辰郎氏が大阪以来同夫妻の紹介講演を引受け、同行して来て居る関係から、私は招かれて帝国ホテルに同夫妻を訪問して面会を遂げ、更にその夜華族会館に赴きて親しく実験を見物しました。その後は私も多忙、先方も浅草の帝国館で昼夜三回づつも興行するので尚更多忙、従って面会もそれッきりで、まだ充分落付いて調査して見る機会を捕え得すに居ります。興行はその妙技を成るべく手際よく人に見せるのが第一の目的、研究は情実ヌキできない点をもはっきりしらべ上げるのが何より肝要、なかなか両方がピタリと一致しないのは当然でありますが、しかしはなはだ残念な次第であります。

 んな実状でありますから私のこれに対する現在の言説は決して充分の自信のあるものではなく、ホンの見物人としての当座観に過ぎませんから、何卒そのつもりで御一覧を願う次第であります。後日訂正すべき個所を発見せば直ちにこれを実行するにやぶさかならざるものであります。

 ゼーゲル夫妻の霊交術実験はそれが興行と結び附いている必然の結果として先方のもっとも有利とする条件の下にすべてを実行しつつあります。即ちその目かくしにしろ、観客の所持品指摘にしろ、姓名年齢の指示にしろ、ひねった紙玉まわしにしろ、ことごとく術者の選べる方法であって、一つも観客の注文したものでありません。これは実験としての価値の大半を減殺するもので、事によったら何等か巧妙な詐術でないかという疑問をただちに観客の胸に起させ勝ちであります。現に私の知人たる関西の某心霊学者からもそんな疑問が私の許まで申し送られて居ります。

 先方の選んだ方法を以てする実験ははなはだ実験としての価値、すくなくともその権威を失墜せしむるものではありますが、しかしそれだから詐術であると推定する理由には少しもなりません。その種の実験には兎角詐術が多いという丈のもので、むろん詐術でないのもまじっているのであります。私はゼーゲル夫妻の霊交術は決して詐術ではなく、むしろこの種のものとしてはなはだ手際の鮮かな心霊実験であると認むるのであります。

 一体ゼーゲル夫妻の場合に限らず、他のいかなる心霊現象に対しても軽々しく迷信呼ばわり、又はトリック呼ばわりをすることは大に慎むべきだと愚考します。資産家をつかまえて直ちにこれを泥棒呼ばわりをするがごときもので、随分見当外れの場合が多いのです。過信もけないが、過疑は一層可けない。自分の貧弱な、歪んだ、不完全なモノサシにかからぬ現象にぶッつかると、ある種の人達は兎角一言下に何とかケチをつけたがる傾向を有っていますが、それはたまたまその人の陋劣な品性を暴露することになります。私は心霊現象に対して特にこの弊害に陥るものが多数であることを痛惜するものであります。

(二)

(三)

(四)

△東京日々の記事(八月二十日)

△報知新聞の記事(八月二十四日)


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第二巻第十号

発行: 1924(大正14)年10月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ 入力:いさお      2007年7月12日

※ 公開:新かな版    2007年9月5日


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