心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第二巻

独語

□一葉落ちて天下の秋を知る。――気運の転換は何事にもあらわれる。従来心霊問題に対して鎖国主義を執った日本の社会もゼーゲル夫妻という二隻の黒船のめにそろそろ開国主義に傾きかけたようだ。歴史的伝統から考えるとこのぎにはアメリカ辺から二三隻の黒船が……イヤ二三人の霊媒がやってくるかも知れない。

□兎に角詐らざる社会のバロメタアは新聞紙だ。開国主義……否心霊問題に対する新聞紙の最近の態度はドーダ! 熱のあるところでは真面目な報道、熱のないところではばいをふくんで沈黙、其中そのうち間に冷罵嘲笑の筆を振うものが全然なくなってしまっている。吾輩心霊問題に関係してからここに十年、未だかつてこんな奇蹟に接したためしがない。恐ろしい現象だ。

□今から数年乃至十数年のところが恐らく日本の危険時代だ。時こそ来れ! そんな事を感知して手に唾して霊術だの霊覚だのと騒ぎ立てる連中がキッと続出するに相違ない。善霊も悪霊も、真面目な研究者も不真面目な山師も見さかひなしに共に大持ての時代がかならず現出する。王政復古の際から明治初年にかけての混沌たる世相が全然形をかえてきッと大正の現代にも繰返されるに相違ない。しかも今度は思想が進歩しているだけそれ丈動揺もきッと一層大きいであろう。

□暴力に対する鎮圧機関は優勢なる暴力で済むが、悪思想に対する鎮圧機関は是非とも優秀なる善思想でなければ駄目である。丁度敵の飛行機を圧倒するがめには味方にもこれに対抗すべき飛行機を必要とし、敵の無線電信装置を撲滅するには味方にもこれを凌駕すべき無線電信装置を必要とするごときものである。私はここに断言する。未来の世界戦争の中堅は心霊戦である。故に今からその覚悟がる。

□古来何事にも道徳的基礎と学術的基礎との薄弱なるものは一度も成立したためしがない。小悧巧や小細工は一時の喝采を博し得るとしても最後にはキッと破れる。心霊問題において就中それが顕著でなければならぬ幾多の理由がある。見渡すところ、一時の流行に乗じ、気楽に時の流れに悼さんとする軽薄者流は実に多い。しかしながら十年、二十年、前途に唯一の目標を睨みつめ、いかなる不幸迫害にもビクともせずして勇往邁進する真剣者流ははなはだとぼしい。ここにおいてか吾輩はわが心霊科学研究会員諸君の前途に多大の期待をかけざるを得ない。穴賢。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第二巻第十号

発行: 1924(大正14)年10月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ 入力:いさお      2007年7月11日

※ 公開:新かな版    2007年9月18日


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