心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第二巻

体験か実験か(巻頭言)

 心霊研究者に入るにはあきらかに二つの途がある。一は体験から入り、他は実験から入るのである。

 体験から入る人は大てい信仰と縁の近い人である。観世音菩薩のお姿を拝んだとか、阿弥陀様の来迎に接したとか、天使の姿を見たとか、仙人に逢ったとかいうのがそもそもの始まりで、理窟は後からくッつける。自分で食って見て美かったからこの料理はうまいに相違ないとったような筆法で、自信の強いのは気持がよいが、ドーかするとこの種の人は偏狭で、排他的で、融通がきかない。

 実験から入るのは多くは学者肌の人で、ここに一人の霊媒があると、横から観たり、縦から観たり、疑える丈疑ってかかる。一回や二回の実験では要領を得ない顔をして批判的の眼光を光らしているが、五度、十度、二十度としッかりした現象にブッつかると相当の熱が出て来て、最後にはほぼ確信の域に達することもある。このやり方に間違いははなはだ少ないが、グズグズして煮え切れないのが欠点で、三十年もコツコツ行った後でまだ判らないとコボすような先生もないではない。

 一番理想的なのは体験によりてず手がかりを得、更に実験を重ねて後の仕上げをすることであるが、二者の中その何ちらかを選ばねばならぬ場合には、各自の性情と境遇とを斟酌して適宜の処置を執るより外に途がないようである。ちらに限ると言い切ってしまうことはとてもきない。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第二巻第九号

発行: 1924(大正14)年9月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ 入力:いさお      2007年7月05日

※ 公開:新かな版     2007年8月27日


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