心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第二巻

心霊問答

□ 箒式では駄目

乙。 心霊研究が最高の道徳的標準の上に立たねばならぬこと、又その取扱う問題が成るべく人生の向上進展に有用なものであらねばならぬことは御説でよく判りました。心霊問題を研究した結果一つでも立派な文芸作品が現われたり、又立派な大発明品が作られたりするようになれば全くしめたものです。西洋の心霊学者が人間の実際生活に縁の遠い、ただ単に純学術研究の見地から見て興味ある簡単な心霊現象の研究に没頭している間にこっちでは一つウンと馬力を出して大々的の収穫を挙げ世界中を唸らしてやりたいものですね。さしづめ日本が欧米各国に比較してはなはだしく見劣りする点はろくな発明品のないことです。汽車、汽船、電信、電話、活動写真、蓄音器、エックス光線、ラジオ……数えて見ると気のきいたものは全部先方むこうの発明品ばかりです。早速後藤道明さんにでもたのんで霊界の発明品の中で特別優秀なやつを輸入して来て貰おうじゃありませんか。

甲。 イヤそうおやすく考えると飛んだ見当違いを生じて後悔することになります。大きな註文を霊界に持ちかけるに就きてはほかにも又一つの肝要な条件がります。

乙。 まだほかにも条件がある……ドーもなかなか面倒ですナ。モとお手軽には行きませんかナ? 某々式だの、某々道だの、某々居だの、某々会だのというものを経営している有名な日本の霊術家達の宣言を拝見すると、金子かねの五十円が百円も出して十日間もみッちり修行すれば釈迦弘法そツちのけの大通力者になれそうじゃありませんか。これに反してあなたはあんまり六ヶ敷むずかしい註文を並べ過ぎる。道徳を堅固にせいだの、人生の向上進展に資するよう真面目な目標を立てよだのと散々難題を吹っかけた後で、外にまだあるではやりきれはしません。一体全体あなたの肝要な条件とはそりャ何なのです?

甲。 ナニそれははなはだ月並な、しかしはなはだ肝要な条件なのです。外でもない、自分の全生命を傾注せる専門の事物に就きてのみ霊界の援助を求めるにとどまり、決して気まぐれなかんがえの奴隷になってはならぬということです。んでも構わずにこちらから求めさえすれば霊界は唯々諾々としてこれに応ずるものだと思うのはあまりに虫が善過ぎます。九分九厘までは自己の努力でドーやら見当がついたが、残る一分が判らないといった場合に限り初めて天来の援助が降るので、それは一のインスピレーションとして直接当人に降るか、又は助言忠告の形式において、間接に霊媒の口から漏れるか二つの中のどれかです。一たい霊媒は霊界と物質界との単なる交通係に過ぎませんから、一切の問題に就きて細大漏らさず詳密な説明を下すことなどはとてもできません。せいぜい一の簡単なる暗示ヒントを伝える位のところです。ですから、素人しろうとがそれをきいたところで何の手がかりにも手助けにもなりはしません。私がんなことを申上げるのは実は幾多のにがき失敗の経験があるからです。例の後藤道明さん――あの方がよく霊界へ行って種々雑多な問題につきてあちらの知識をもたらして帰ることは事実です。そしてその理会りかい力といい、又その記憶力といい、たしかに異数と言ってよい位ですが、しかしその説明は、結局後藤氏自身の脳力の程度以上には出でません。当人の頭脳以上のことは、縦令たとえきかされたところで当人の頭脳あたまに残っていませんから致し方がありません。故に後藤氏の説明の単なる受売りをしたものは従来ことごとく失敗しているようです。あの人の説明を手がかりとし、一をきいて十をさとり、大部分自分の力で仕上げをするのでなければ、とても見るべき発明なり、製作なりを完成することは不可能であるらしいです。ところで、そんな芸当は各自の専攻の仕事に限ってドーやらきるのみです。私などはいくらか文学の畑に育ったばかりに、後藤氏の霊界消息を手がかりに少しは見るべき作品を出し得る見込がありそうに感ずる丈です。他の方面のことはとんと要領を得ません。せいぜい好奇心を満足させるくらいのところで、聴くはきいても何のタシにもなりません。それは恐らく私が後藤氏の言葉の奥にチラチラする暗示を捕える能力がないのが主なる原因でありましょう。要するに心霊研究によりて立派な収穫を挙げるには、自分の専攻の狭い方面丈を選びこれと心中する気で努力するのでなければかぬようです。あっちにもこっちにも秋波を送る、多情なほうき式研究は霊界のすべての人達から肱鉄砲を喰う所以ゆえんであると思えば大過なさそうですナ……。

乙。 イヤほうき式研究は恐れ入ります。人間と霊界との関係も結局両性間の関係と大同小異ですかナ……。


心霊研究と実用問題

目  次

何もかも心の不思議な働き


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第二巻第八号

発行: 1924(大正14)年8月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2007年6月15日

※ 公開:新かな版     2007年8月12日


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