心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第二巻

心霊と人生 (巻頭言)

 人生の諸問題を浅く取扱うには心霊問題に触れずとも済むが、一歩も二歩も事物の根柢こんていに突き入り、人生解剖と人生創造との意義深き仕事を成し遂げようとするには断じて心霊問題を閑却することはできぬ。単なる細菌の研究によって今日の医学はれ丈理論に、実際に、深みと鋭みとを加えたか知れぬ。人生問題に於ける心霊研究の価値は医学に於ける細菌学のそれに似て更に深刻である。

 御承知のとおり二十世紀の心霊研究は理窟や御都合主義の上から出発せずして活きた事実の調査と科学的の実験とから出発している。無論心霊研究は目下発達の途中にある。動かすことのきぬ事実と理論とが部分的に確立されただけで、その大成は今後の惨澹さんたんたる研究に待たねばならぬ。ことに東洋方面の心霊現象の探査にいたっては只今のところ不完全極まる。これを整理して人生指導の大鉄案を築きあげるのは主としてわれわれ日本国民の任務であろうと思われるが、それにはできる丈早く『心霊研究所』の設立が急務である。純学問としての心霊研究は其所そこで遂行せねばならぬ。幸に日本にも少壮有為の学者でこの道の真摯な研究に志す者がポツポツ現われかけたのは学界のめに慶ぶべきである。日本の社会は一時も早くこれに目覚めて声援を与うべき実務がある。

 本誌としてはできるだけ東西の心霊研究の貴重なる結果を取り入れると同時に、心霊の研究が人生に対してんな影響を及ぼすか。換言すれば心霊問題と思想、文芸、哲学、倫理、社会その他との関係交渉は如何――これ等の諸点を解決して真に一般人類の踏むべき堅実 なるまことの道の建設に資せんとするものである。型にはまった受売的の考え方に満足し得ない者、唯物的の宇宙観人生観を飽き足りなく感ずる者、めにするところある御都合主義の宣伝を蛇蝎視するもの、虚偽、模倣、流行、上滑りの嫌いなもの、迷信を利用し、霊術を看板にして野心と慾望とを遂げんとするヤマ師的行者輩の発生を憤るもの、キザな独りよがり、薄っぺらな悟り方を片腹痛く思う者――これを要するに心の奥に何等かの不安と不満とのささやきを感じ、この際是非とも人類として何所かに光りある新局面の大打開に接せねばならぬ筈だと痛感さるる方々は本誌に結びついて戴きたい。御互に研鑽けんさん討究を重ねようではありませんか。


底本: 雑誌 「心霊と人生」 第二巻第七号

発行: 1924(大正14)年7月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2007年7月17日

※ 公開:新かな版     2007年7月19日


心霊図書館雑誌総合案内> 「心霊と人生・第二巻

心霊図書館: 連絡先