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心霊講座

最近の心霊問題

(大正十四年三月廿三日大阪鉄工業会館新交会に於ける浅野氏の講演)

 

(一)

 本日当会に御招待を受付ましてはなはだ光栄とする次第であります。諸君の私に対して求めらるる所が何であるか?――大体私には諒察りょうさつできると思います。私という人間は御承知の通り、最初外国文学の畠に育ち、又官途にも就き、極めて平々凡々の生活を送ったのであります。それが今から十年前四十二三歳の頃に至り俄然がぜんとして一の驚異に接したのであります。他でもない、現象世界の奥にモ一つ別な世界――所謂いわゆる霊界なるものが存在する事を、他人の口から聴いたのではない、自分自身で体験したのであります。宛然えんぜん徳川時代の人間が黒船の来着を見て、日本国以外、韓、天竺以外に強大なる国家が存在することに気がついて驚いたと同様であります。その前にも霊魂とか霊界とかいう話しは耳にはして居ますが、何やら抽象的で実体がない。言葉では理会りかいするが、シッくりと身にしみない。霊界というのは単に主観的に頭脳の中で考える丈の世界か、それとも客観的に実在するものであるのかは判然と分らない。現在の皆様も多分当年の私と同様の感を抱かれて居らるるものが沢山ではないかと察せられます。所が、いよいよ一皮剥いて見ると霊界だの、霊魂だのは確かにチャンと実在する。それならドーしたらその一皮が剥けるか。後から追々話しをしたいと存じます。そんな点が多分諸君の私に求めらるる要点の一つかと存じます。

 御承知の通り私は大正五年から大正十年頃まで綾部の大本教に参って居りました。何故なにゆえ私が大本教に行ったか? 当時の大本教には霊界と交通をするめの実地修行が不完全ながらも存在して居ためであります。当時の私はその事ばかりに全力を挙げました。出口直子という婦人は無学ではあったが、しかし品性は高潔で度胸がよく、明治廿五年から大正七年迄しきりに神懸り状態において自働書記を試みました。今日から冷静に考察しますと直子の自働書記には多量の不純分子がまじって居る。言わば有意識と無意識との中間を縫ったような自働書記で、真の純粋な無意識的自働書記でありません。従って本人の慾望、自我性等が余程混入して居りまして、それが今日大本の堕落を促すべき伏線を為して居ります。しかその不純分子を除去すれば、真面目なる研究者が承認するに躊躇ちゅうちょせざる結構なところもすくなくはありません。その長所を挙ぐれば

 一、未来に対する予言警告がある程度迄要領を得て居ること、

 二、霊魂問題に関して心霊科学上否定すべからざる幾多の真理を包蔵して居る事。

 三、ある程度神の実体に触れて居る事。従って敬神崇祖の観念が普通の説教者流若くは道学者流の説くところよりも深刻である事。

 その短所を挙ぐれば、

 一、肉親慾と愚痴とが伏在し、自己の肉親の子女を教の後継者と規定する事。

 二、陰険性と不平怨嗟の念に充ちて居る事。

 三、神を尊重する代りに人間の努力を軽視する事。

 四、偏狭にして排他的なる事。

 五、威嚇的強圧的で信仰を無理強いする事。

 詳しい事は『主張と告白』と題せる一文を『心霊界』(大正十三年九月号から十四年二月号迄)に発表してありますから御一覧を願えば幸福と存じます。

 兎に角大本教は直子在世中は相当に緊張して居り、神人交通法の実修も相当真面目に行われましたが、不幸にしてそのがつづきません。出口王仁三郎という人はる程度の霊媒的素質を有っては居ますが、野心、欲望、茶目気分等が勝って居り、その周囲には彼を善用するよりはむしろ悪用せんとする野心家、若くは研究心のない盲目的迷信家等が附着して居りますから駄目であります。大本教は出口直子一代丈が生命があり、後は単にその残骸で現在では一般の教会以下に堕落して居ると見るのが正当でありましょう。近来出口氏は『霊界物語』と称するものを発表して居ります。部数は誠に大部のもので既刊のものが既に数十冊に上りますが、内容はほとんど全く空虚で、何等の価値を認められません。当人はあれで一と花咲かせる気であったでしょうが、実はあの書物ですっかり化の皮を表わし、言わば自分で自分の入るべき墓穴を掘ったも同様であります。

 これを要するに丹波の大本教は霊界並に霊魂の実地問題を天下に紹介し、言わば霊界の門を開いたとう点に就て意義がある丈です。門をくぐってからきの霊界の問題は今後の真剣なる心霊研究にたねばなりません。それにしては単にあれ丈の内容として大本教の騒ぎは大なるに過ぎた観があります。そしてその罪の一半は私自身も負ねばなりませんが、しかし時代が何等かのある生きたる真信仰を求めつつある事はこれによりても察せられると考えられます。


 

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底本: 雑誌 「心霊界第二巻第六号」 

発行: 1924(大正14)年6月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2007年 月 日

※ 公開:新かな版     2007年7月5日


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