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評壇

▲危険思想防止▼

 更に転じて、危険思想防止とう問題に就て考察して見てもまた、思想伝逹現象をヌキにしては所詮しょせん百年河清を待つの愚に等しい。

 思想は流れる。そして、それは国境を越して流れる。思想に国境なしとは此謂である。無形のものが無形に流れる現象――思想伝逹という心霊現象に対して、過激思想取締法とか治安維持法とか云ったようなものの力だけで対抗するとは烏滸おこの沙汰だ。

 思想には思想をもって対せよ。法令やサーベルでは弱い、弱い。芝居『勧進帳』の問答にう一節がある。

富樫『眼にさえぎり形あるものは切りたまきが、若し無形の陰鬼妖魔仏法王法に障害をなさば何をもって切り給うや。』

弁慶『無形の陰鬼妖霊は九字の真言をもって切断せんに何の難き事やあらん。』

 我為政者が危険思想と断定する或思想は、確かに陰鬼妖霊かも知れない。がしかし、それは無形なものだ。その無形なものに対しては、矢張り無形なもので防止するのが当然だ。九字の真言を首相に切れとは要求しない。が、首相は自身のもつ強き正しき思想でそれを防止すき義務がある。それが出来ぬとならば、我国の首相は一介の山伏にも劣ることになる。

 も一つ適例を掲げて為政家の一考をわずらわいと思う。危険思想が露西亜ロシアから来ようが、国内で湧こうが、それは不正な電波だ。その不正な電波を打ち消し、断ち切るけの電波を為政家自身が放電しては如何だ? 恰度ちょうどそれは、放電監督局が設置せられて、不正電波の中断を計る為に強力な電波が放電せられるように……。

 要するに、国民思想の善導も危険思想防止も皆な思想伝逹と云う心霊現象の理解と実地応用に拠ってその目的が完全に達せられるのであってその為には先ず為政家自身が心霊に眼覚め思想の奥に心霊の力の潜む事を真に悟り自から真に正しく強き思想の涵養を計ることが先決問題である


底本: 雑誌 「心霊界第二巻第五号」 

発行: 1924(大正14)年5月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を下線表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2007年 月 日

※ 公開:新かな版     2007年5月12日


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