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評壇

▲思想は流れる▼

 人は重大な事件を案外平気で見逃して居るように、重大な言葉をもまた案外暢気のんきに使用して居る。例えば、『思想は流れる』とう言葉の如きは、その適例の一つである。

 人は得手勝手なものだ。例えば、常識とか、経験とか、五感の作用とかいう言葉を直ぐかつぎ出す。がしかし、それらに反したことや、それらを超越したものに対して、不思議にも寛大なことが屡々 しばしばある。

 笹の葉が流れる――ということは、五感の作用で確かに見とめられる。が、思想が流れる――ということは、五感の作用ではたして見とめられるかどうか? 更にこれを緻密に考察すると、一体思想とは何物か?、何処 どこ如何どうして何故なにゆえ流れるか

 ここに至って、われわれ人間の頓間とんまさが痛感せられる。理智に眼覚めた人士は、如何どうかしてこの頓間とんまから脱却しようと努める。その結果は、如何 どうしても『心霊の力』とか『第六感』とかへ眼を注ぐに至るのである。心霊研究者と科学者の誇りは即ちそこにあるのだ。

 思想は流れる――この実験は、即ち最近問題となったマレー教授の『伝心実験』、換言すれば『思想伝逹実験ソートトランスフェレンス』に依って見てもあきらかである。一つの放送機から放電された無形電波は、空間に波打って四方に拡がり、受電機に響くと同様に、一人の心中に生じた無形の思想は、空間を伝って、他人の心中に達する。此等これらの原理は無電と伝心の実験に依り、あきらかに説明せられて来た。


底本: 雑誌 「心霊界第二巻第五号」 

発行: 1924(大正14)年5月1日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を下線表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2007年 月 日

※ 公開:新かな版     2007年5月10日


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