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主張と告白(その六)

――信仰問題心霊問題を中心として――

浅野和三郎

大本教から心霊研究へ

(一)

 私はできる丈虚心になって主張すべきところは忌憚きたんなく主張し、告白すべきところは淡白に告白し、ことに大本教の中心人物たる出口直子の人物性行、又その手に成れる筆先の内容につきてほぼ言はんと欲する所を言うたつもりですが、そのせいか急に肩が軽くなったような、又いささか気のけたような感がして、この上くどくどしく筆を執る気分がなくなりました。あとは成るべく簡単に、一とずこの稿をまとめたいと存じます。

 大方の諸氏は恐らく出口王仁三郎氏並に同氏を中心とする現在の大本教にきて私の告白を求めらるることかと存じますが、今の所ではすッかりその幕が降りた訳でもなく微弱ながらまだ余喘よぜんを保って居る場合ですからしばらく最後の結論を下すことを避けできるだけ内輪に申上げて置くことに致します。私の観る所にしてあやまらずんば、出口氏の生涯は直子の死歿しぼつを境界としてこれ前期後期とに二分し得るかと存じます。前期の出口氏は大体において直子の忠実なる内助者であり、女房役であり、言わば直子の蔭にかくれて犬馬の労に服したのでありました。私は当時の出口氏の行動に対しては相当敬意を表しその功労を認むるにやぶさかならざるものであります挙世きょせい滔々とうとうとして唯物的迷信に陥り、神を説き霊を説くをもっほとんど一の恥辱と考えたような時代に、兎も角も心霊に目覚め、曲りなりにも日本古伝の霊学の実修に没頭し、出口直子の神懸り現象を認めてこれを世に紹介したということは、たしかに一の見識とわねばなりますまい。瑕疵かしを拾えば当時の出口氏にもなり沢山のいかがわしい点はあったでしょう。就中なかんずく他人の著書を勝手に剽窃ひょうせつしてあたかも自己の著述のごとく言いふらしたなどはドー見ても感服きかぬる点であります。が、当時の境涯なり、その他いろいろの事情なりを斟酌しんしゃくして差引勘定すれば、同氏の功罪は大てい相半ばするものと見て余り多大の見当違いではないように感ぜられます。

 後期の出口氏の行動に至りては何等私の関知せざる所であると同時に又全然私の感服し兼ねる所であります。直子の死は出口氏を駆りて俄然がぜん以前と打ってかわった自己中心者たらしめたようであります。直子の筆先きには大本教の後継者を肉身の女性に決めてあります。若しこの規定に従えば出口氏は自分の妻、自分の娘などの下風に立ち終生頭の上る望みがないことになります。出口氏がこの勝手きわまる神示(?)に服従しなかったのはまことに正当であったと謂わねばなりませぬがおしかな出口氏は正々堂々とそのしか所以ゆえんを声明して一般の理解と同情とを博すべく努力するかわりに自分もまたそれにもまして一層勝手極まる神示(?)を発表して天下を愚にせんとしました。直子の筆先の中には、艮の金神元の国常立尊が天の御先祖さまたるミロク様から御命令を戴いて立替え立直しの衝に当ると書いてあります。其所そこに幾分の殊勝味があり其所そこに大本教をして教権至上主義の非難から脱出せしむる立派な活路が開けて居るのでありますがあくまで血迷った出口氏は無謀至極にも自分がその所謂いわゆるミロク様であると言い出しました。すくなくとも自分がミロク様のお血筋を引いた天の使であると称して口に筆にさかんに自家推薦を試みました。

 間のるい時は致方いたしかたのないもので、その頃大本教の信者の中でしきりにキリスト再臨説を唱えるものが輩出しました。気の多い出口氏はいつの間にか、その再臨のキリストにもなり済ましました。ミロクさまと再臨のキリスト――随分慾の深い勝手な神示もあればあったものでその点に於て直子の神示などはとても足元へも寄りつけないのであります。こんな事はかたわらから冷静に観察すればほとんど児戯に類する一場の茶番としか思われませんが、一部の人士が今尚いまなおそれを真面目に信仰し、肝腎の本人もまたいつしか本気でそう自任するようになったらしいのは誠にもって言語同断の沙汰と言わねばなりませぬ。今後これがう進展するかは心霊問題としてよりも寧ろ一の社会問題として興味があると存じます


出口直子の自動書記

の長所(4)

目  次

大本教から心霊研究へ

(二)


底本: 雑誌 「心霊界第二巻第二・三号合併」 

発行: 1924(大正14)年2月11日 心霊科学研究会

※ 青空文庫の「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に準拠して、底本の旧字表記をあらためました。

※ 底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。

※ また、HTML化に際して、底本中の傍点表記を、下線表記に、白丸傍点表記を、強調表記に、置き換えました。

※ 入力:いさお      2007年2月13日

※ 公開:新かな版     2007年4月5日


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